「もう少しそのまま被ってろ。火を浴びたくなかったらな。」

「へ?」

返事をする間も無く青年は包帯を外し、刀を一振りした。すると一瞬で辺りを蒼い炎が覆い、その炎は鬼二匹を巻き込んで次の瞬間には跡形も無く消えていた。断末魔の叫びさえ上げさせない、一瞬の出来事だった。鬼達も何が起こったのか理解する間も無かっただろう。少女はしばらくその光景に呆然としていたが、ハッと我に返りローブを持ったまま立ちあがり、青年の背に声をかけた。

「ちょ、ちょっと・・・アンタ祟られたんじゃ・・・!」

「既に呪いを受けている者に、呪いは効かない。」

「え・・・」

振り向いた青年の右目を見て目を見開いた。左目が赤いのに対し右目は金色で、眼球には呪印が刻まれていた。その目に見つめられ、背筋が少し寒くなるのを感じ一歩後ずさった。古くから金色の目の者・・・即ち『祟り眼』は災厄を呼ぶと伝えられていたのだ。

「アンタ・・・祟り眼だったんだ・・・」

青年は頷き、再び包帯で右目を隠した。刀を鞘に戻し、もう一度少女を見つめる。

「怪我は・・・・無いみたいだな。」

青年はそのまま立ち去ろうと一歩踏み出した。が、その前に少女が立ちはだかった。

「ちょ・・・ちょっと待った!一応助けてもらったんだし、礼を言わせてよ。あ、あたしはアカネ。さっきは助けてくれてありがと。」

「・・・・・・」

「ほら、アンタも名乗りなさいよ。」

「サイ」

「サイね、それじゃあサイ、ちょっと力を貸してくれない?」

「・・・・・は?」

アカネの言葉にサイは僅かに眉根に皺を寄せて首を傾げた。アカネの方は良いものを見つけたとばかりに目を輝かせている。祟り眼に怯えたのはほんの一瞬の出来事だったらしい。

「サイ、強いでしょ?ちょっとだけ妖怪退治に付き合って欲しいの。」

「・・・・祟り眼と関わるのは止めた方がいい。」

サイはそう言ってアカネの横を通り過ぎた。

「ちょ、ちょっとー!」

呼びかけてもまるで無視な態度に頬を膨らませ、腕を組んだ。

「このまま大人しく諦めたりしないからね!」

運命を変える風が、街道を駆け抜けた。

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