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別の女の声が聞こえ、そちらへ目をやると赤茶けた髪の少女が立っていた。それと同時に鬼は大きな一つ目を少女へと向け、標的を変え走り出し、巨大な腕を振り上げた。
「げっ・・・!こっち来た・・!」
少女が背中の帯に装備していた三日月型の武器を手に構えた瞬間、鬼の腕が吹き飛んだ。数メートル離れた位置に鬼の右腕が落ち、鬼の肩からは大量の血が噴出した。少女が唖然としている間に、男は少女を庇うように前に立ちもう片方の腕も切り落とした。
『グォオォオオォオ!!!』
悶え苦しむ鬼に、少女が止めを刺そうと武器を構えるのを男は止めた。
「止めろ、こいつは呪い付きだ。」
「呪い付き・・・!?あっぶなー・・・!」
「呪い付きの妖に止めを刺すと祟られる。・・・・下がってろ。」
男は瞬時にローブを脱ぎ、少女へ投げた。
「んむっ!」
顔面からローブを被せられ、その勢いで尻餅をついた少女はローブを剥がそうとする。
「ちょっと!そいつが呪い付きなら、アンタだって祟られるよ?!」
意外と大きい布だったせいか、中々抜け出せずに中から声を上げる。その間、鬼が吐く消化液が辺りの岩を溶かす音や足音が聞こえる。しばらく男からの返事が無いので、もしや殺されたのではとやっとの事で顔を出した。
「うわっ、もう一匹増えてるし!」
ローブと奮闘している間に同じ鬼がもう一匹現れていた。近くに仲間がいたのだろう。二匹の鬼の攻撃をかわし、銀髪の青年は右目を隠す包帯に手をかけた。
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