燃え盛る炎の中、一つの村が壊滅し、一つの戦いに決着が着こうとしていた。

「力を本来の5分の1にしていたとはいえ・・・・私がここまで追い込まれるとは・・・」

全身を炎に包んだ整った顔立ちの妖が目前の銀髪の青年に言う。その妖も青年も、激しい戦闘の為に体のあちこちから血が流れていた。家だった木材が目の前で焼け落ちても、お互いに構えを崩さずに向き合う。

「お前だけは・・・絶対に許さない・・・」

青年は傍らに倒れている少女を一瞬視界に入れ、刀を握り直して男を睨む。しかしもう歩くどころか立っているのがやっとの状態だった。それを分かっているのか、男は面白がっているような、何か新しい娯楽でも見つけたかのような笑みを浮かべた。

「お前程の男をここで殺してしまうのは惜しいな・・・・私を追い詰めた褒美でも与えようか」

妖は血に染まった右腕を己の顔の前にかざした。そして瞬時に火の鳥へと姿を変えると、目にも止まらぬ速さで舞い上がり、その身で青年の右目を貫いた。

「ぐあぁ・・・っう・・・!!」

灼熱の炎に焼かれ、目を押さえて地に膝をついた。例えようも無い痛みの中、自分を見下ろして笑っている男がぼやけた視界に入る。人型に姿を戻した男は愉快そうに、涼しげな笑みを浮かべていた。

「それは私からの呪いだ・・・・精々、足掻くのだな」

男は青年に斬られ使い物にならなくなった左腕を布で縛り上げ、青年に背を向けた。この村のように燃え盛る炎を思わせる赤い髪を見た時、それが自分の負けを意味すると察した青年は刀を支えに立ち上がろうとする。

「・・・・くっ・・待て・・・!!」

「目的の物は手に入れた・・・・・私が憎ければ、追ってくるがいい。中つ国を支配するこの覇王を求めてな・・・」

男は最後に青年を呪った右目を見、そして姿を消した。

「・・・呪いに耐え切れず私の駒になるも良し、耐え切って私を殺しに来るも良し・・・」

覇王の残した最後の言葉が、深く記憶に刻まれた。




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