ドラマの撮影が終わったとマネージャーに告げれば車を出しましょうか?と返事が来る。女の子にこんな時間に来て貰うのは悪いし、今日は十さんに飲みに誘われてるから、と断る事にする。飲みに誘われているなんて嘘だ。今日は会う約束すらしていない。
 コートをさぐれば、趣味の悪いシーサーのキーホルダーのついた鍵が出てくる。

「使うことになるとはねえ」

 それは数週前に十さんわたされたもので、最後までアンタがいる時しかいかねえから。と断り続けていたのにこんなにすぐ使うことになるとは……大和は苦笑する。

「酒でも買っていきますか」

 マスクをつけ帽子をかぶり、すこし浮き足立つのを必死に隠しながらひょこひょことコンビニにはいる。深夜のコンビニは静かでけだるげな店員はこちらに一別をくれただけでつまらなそうに店内の天井を見つめている。ビールを三本かごに入れ、そういえばと思い返す。今日は十さん遅いって言ってたな。とビールしか入っていないカゴを見つめ、うーんと唸る。
 まあ、おにーさんもお腹すいてないわけじゃないし。とカット野菜と適当なつまみをカゴへ追加して、さて買い忘れはないかとゆっくり店内を回っていく。そして大和の足が生活用品コーナーで止まった。
 コンドーム。もう無かったよな。前のオフの時に朝から晩まで馬鹿みたいにまぐわって使い切ってしまったはずだ。
 これも買っとかなきゃだよな。と手をのばしかけてやめる。これ、買っていったら期待してるみたいになっちまうよな。龍之介のにやーっというだらしない笑みが頭にちらつく。
 正直言って朝から通しの収録で大和は疲れ切っていて、今日龍之介といたして次の日を乗り切れる自信は全くなかった。十さんだって疲れてるだろうし……今日はやめときますか。そう頷いて、コンドーム以外を入れたかごをレジに置く。店員は大和と目も合わせずに不機嫌に商品を通し乱雑に袋に詰めていく。深夜のスタッフというのはこういうものだと自分のアルバイト時代を思い出して少し笑みがこぼれた。

***
 龍之介
の部屋は電気こそついていたものの静かで人の気配はしなかった。そこで大和は思わず深く呼吸してしまう。十さんのにおいだ。二、三回深呼吸を繰り返した後恥ずかしくなってくる。

「俺は変態かっつーの」

 恥ずかしさを紛らわせるように鍵を鍵入れに投げ入れ、リビングへと入り、どかっとソファーに腰をおろし、先ほど買ったビールを空け、一気にあおった後、残りを無駄に大きな冷蔵庫に入れる。
 寒さのピークは過ぎたとはいえ、深夜はまだ冷える。しかしこのマンション内は空調が完備されているのだろう。うっすらと暖かかった。
 缶ビールをすするうちにゆるゆると意識は遠のきはじめてきた。ビールをこぼしたらまずいな……このソファー高そうだし。と床に缶を置きまどろみに身を任せる。深くソファに身を沈めると空気よりも濃い龍之介のにおいに包まれる。これまずいなすげえ気持ちいい。ふっと息をすうと意識はからめ取られた。


 バタバタという音とそろりそろりと近づく人の気配に大和の意識はゆっくりと浮上し始めた。しかし瞼は重く、なかなか開かない。
 十さんかな?今何時だ……?起きないと。と自分を叱咤して目を開こうとした瞬間、カラーンという缶が転がる音と、いてっ、うわっこれ中入って……わーっ!と言う叫び声に大和の意識は一気に覚醒した。
 目をぱっと開けば、自分に覆い被さるようにして手を突きながら、視線は足下に向けあわてている美丈夫の顔がそこにあった。

「……十さん」
「あ、え、大和くん起きちゃったの!?」

 そりゃ起きるだろう。と言う言葉は飲みながら足下をみれば、自分が先ほどまでのんでいたビールの缶が蹴飛ばされたのであろう記憶よりも遠くで倒れていた。

「あー……すみませんあんなとこ置いてて、片づけるんでどいてもらえますか? 」
「だっ、だめ! 」

 思ってもなかった拒否の言葉に目をひらく。目の前の男は顔を真っ赤にして自分のことを見つめている。そして、困ったようにあーだとかうーだとうーだとか呻いていた。

「大和くん……もう一度目を閉じていただけないでしょうか……」

 なんだ?と思いながら目を閉じれば唇をちゅっと吸われる。目を開くとさっきまでも赤かった顔をいっそう赤くして、照れ笑いしている龍之介。つられてこっちまで顔が熱くなってきた。こんな子供みたいなキス今まで何回もしてきたはずなのに、心臓がうるさいくらいに高鳴っていく。

「お姫様を起こすのは王子様のキス……っていうやつやってみたかったんだよな」
「ソウデスカ」

 照れ隠しにずりずりと距離をとろうとするが、がしっと腰を捕まれ、先ほどよりも近くに引き寄せられる。はぁっと龍之介からもらされた息は濡れていて、なによりも引き寄せられたことで密着した部分が固く主張しており、危険信号が脳内で点滅する。

「ねえ、大和くん……」
「嫌です」
「なんで!?そういう雰囲気だっただろ!?」
「俺疲れてるんですって……」

 大和に拒否されるとは思っていなかったのだろう、龍之介は大和にぐいぐいと抱きついてくる。それはつまり剛直を大和に押しつけると言うことで、こっちまで変な気分になるだろと大和は龍之介の胸を押し返す。

「大和くん〜お願い〜」
「ほんと勘弁してください。明日も早いんだって!」
「わかった。入れないから!ねっ?入れなかったら辛くないよね? 」

 それがいいとばかりに大和のパンツを脱がせようとする龍之介。大和は訳が分からずされるがままになってしまう。入れないからというから、フェラでもねだってくるのだろうと思っていたのに、一目散に大和の下肢にに伸びた手に思考が追いつかない。もしかしたら俺はまだ寝ぼけているのかも……なんて考えていると、ふわりと体が浮く。
 下肢を露出した状態で龍之介に抱き上げられるという訳の分からない状況につい龍之介にすがりついてしまい、しまったと心の中で舌打ちする。

「やっぱりソファー狭いからベッドにいこう」
「はぁ」

 龍之介の声はどこかうれしそうで、軽くないはずの大和をひょいひょいと運んでいく。足取りは軽くしかしベッドに下ろす時はどこまでも優しく。このまま寝かせてくれねえかな……なんて言えるわけもなく、眼鏡をはずしサイドボードに置く。
 龍之介はふんふんと鼻歌を歌いながらローションを手の中で暖めている。

「入れたら怒りますからね」
「わかってるって。あ、四つ這いになってもらってもいい?あ、もうゴム無いのか……まあいいか」

 よくねえよ。大和は龍之介の言葉に心の中で毒づく。いつになく乗り気な恋人にケツをむけるのはあまり気乗りしなかったのだが、睡眠欲は脳を鈍らせ膝をたてたままやわらかな枕に顔をうずめる。
 あーさいこー柔らけー
 大和が再び意識をとばしそうになっていた頃、べちゃっと大和の尻にローションが垂らされる。そして双丘、陰嚢、ふとももと塗り込められていく。

「んっ、んんぅ……」

 枕に押しつけられた口から漏れた喘ぎはくぐもる。ソウイウ意図でさわられればどんなに眠くても気持ちいい。大和の息子もだんだんと質量を増し、直接撫でられる時にはだらだらと涎をこぼしていた。

「大和くんの……気持ちいいって泣いてるよ」
「っばかっ!んっ……へ、へんたいかよっ……ぁあっ!」

 鈴口にぐっと指を押し込まれて高い声が漏れる。先走りはこぷこぷとあふれ出しており、ローションと混じり合って淫靡にぬれている。高まり張りつめる陰嚢をなでられれば、いっそう大きな嬌声が漏れる。
 恥ずかしくてどうにかなりそうだった。龍之介の考えはわからないし、先ほどから自分ばかり高められて……
 おそるおそる枕から顔を上げて龍之介を伺うと、ぱちりと目があって、ほほえまれる。
 いつもの柔らかい人のいい笑みとはほど遠い雄の笑いに後ろの穴がきゅんっとうずいた。

「大和くん、顔とろとろ……気持ちよさそうだね」
「っふ……お、おかげさまで……で、十さんはいいわけ? 」
「んー俺はこれからいっぱい楽しむから……もういいよな」

 陰茎から後ろの穴までするっとなであげられてひゅっと力が抜ける。
 龍之介がカチャカチャとバックルをはずす音がする。そして乱暴にファスナーが開けられ足からパンツが抜かれる音。はぁっと息を吐いたかと思うと、大和の足の間に熱く高ぶったものがあてがわれる。

「い、いれないって……」
「入れないよ。がんばって足締めてね」

 太股を両方から押さえられ、怒張の存在を嫌でも意識させられる。
 こいつまさか……

「どこでこんなの覚えてくんのよ……」
「秘密」

 ゆっくりと腰を動かしはじめる龍之介。前後に動かれる度に張りつめた陰嚢が雁首にひっかけられぶるぶると震え、押しつぶされる。

「あっ、や、やだこれ……あつぃ……」
「っう……やっぱり大和くんの……ふともも気持ちいい……」
「っこのへんたっあぁぁっ」

 限界が近いのか、早くなるストロークに大和も声を抑えることを忘れて喘ぐ。
 入れられていないからか後ろの穴がきゅうきゅうと収縮して存在を主張してくる。後ろの快感を覚えさせられた今、気持ちよくなりたいと言っているようなそれに、大和は無意識のうちに龍之介のモノが当たるように腰を振ってしまう。

「くっぅ……えっちな動きして……悪い子」
「っひっあぁっ……も、もういれて……」
「もー……大和くん怒るんだからだめだよ。今日はこれで我慢してっ」
「あっ、あぁあぁぁああ〜〜〜〜!!」

 きゅっと陰茎をつかまれて大和は勢いよく達した。ちかちかと目の奥に散る星と龍之介も共に達したのか太股にかかる暖かい液体が滴るのを感じながら、大和はそのまま意識を失いへたんっとつぶれてしまった。
 龍之介は、浅く息を吐き出しながら。サイドボードからティッシュをとり乱雑に大和を汚した精液をふき取り、隣にごろっと横になる。本当に疲れていたのだろう、すぅすぅと寝息をたてる大和の前髪を梳く。
 
「おやすみ大和くん」

 そうつぶやいて自分も目を閉じた。



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