お互いの仕事の都合上、デートと言えばお家デートで、しかも、彼は寮暮らしであるため必然的に龍之介の家でうだうだと過ごすのがお決まりだった。
 今日も大和はどこからか持ってきたマンガを、龍之介の太股を枕に読んでいる。龍之介のソファーは誰かが泊まる事も考えて買ったため大和が横になってもまだ少し余るくらいの大きさだ。
 男の太股など堅くて枕には向かないだろうと寝返りを打った隙に頭と足の間にクッションを挟み込んだりしてみたが、すぐに引き抜かれて今は遠くに放られている。

「あのー大和さん。」
「何ですか龍之介さん。」
「足がね、痺れてきたんですが……。」
「そうですか、頑張れ。あと三巻で終わりです。」

 龍之介の文句など素知らぬ顔で大和は黙々とマンガを読んでいる。きらきらとした絵柄から見るに少女マンガだろう。珍しいな。と十は漫画に視線を向ける。少女と少年がくっついたり離れたり……細かい文字が多く内容はわからないが、見開きの大きなページでキスシーンがあったのはよくわかった。
 盗み見ていたこともあり、なんとなく見てはいけないものを見てしまったような気持ちになってあわてて目をそらす。
 子供の時にロマンス映画のキスシーンを見てしまったような心地で、どうも落ち着かず、もじもじとしてしまう。
 視線のやり場にこまりうつむけば自分の足の上にある大和の小さな頭と白いうなじが目にはいった。
 痕を付けるのは厳禁。そうお互いに決めてはいるが龍之介だって健全な男だ。こんなに無防備に晒されていては、いますぐに自分のものだと主張したくなってしまう。頭を振って雑念を払おうとするものの、それはとめどなくあふれ出していく。
 キスしたい。あの髪に顔を埋めて好きだと囁いて、それから……それからあの口に自分のものを……。

 「龍之介さん。」

 うーんうーんと唸っていた龍之介を現実に引き戻したのは大和だった。彼は仰向けになり龍之介を見上げると淡々と

「あたってますよ。」
「ん? 」
「ん?じゃなくてさ。十のちんちん、俺の頭に当たってんだけど。」

 かっと顔が熱くなる。意識してしまうともうだめでどくどくと血液が下半身に集まっていくのを感じる。

「あ、また大きくなった。」

 勘弁してくれ!と叫び出しそうだった。こんな状況にもかかわらず大和はなおも漫画のページをめくろうとしているし、収まりが悪いのか、頭の位置をちょいちょいと変えては、龍之介の息子を刺激してくる。

「あ、あの大和君……すこし、お手洗いに行きたいんだけど……どいてくれないかな? 」

 龍之介がふぅふぅと息を乱しながらなんとか言うと、大和はきょとんと龍之介を仰ぎみる。

「嫌だよ。俺がいるのにアンタ一人でオナニーするつもりなの。」
「お、おっ……そ、そういうのは、す、少しぼかした方がいいんじゃないかな!?」
「二人っきりなのに? 」
「そ、そういうのは関係ないんっていうか……やっぱり、え、えっちなのは、さ。あんまり……。」
「ふーん……十は、漫画読んでる俺見てえっちな気分になっちゃう変態なのにそういうのは嫌なんだ。」

 大和の視線が、眼鏡ごしにきらりと輝く。ああ、大和君スイッチ入っちゃった。
 大和は龍之介をからかうことを好んでいると思う。小学生男子のように性的な言葉に過剰反応してしまう様子を面白がって、いつも直接的な表現を選んできているように思える。

「う、ううっ……。」
「おにーさんとしては、マネージャーから借りたこの漫画、読んじゃいたかったんだけどなー……でも十がどうしてもっていうなら、シてあげてもいいよ? 」

 ねえ、どうする?と漫画で口元を隠して問いかけてくる。
 大和は卑怯だ。龍之介がどういうかわかっていて問いかけてくるのだから。あの隠れた口元はきっと弧を描いていることだろう。
 ぐぬぬと声を漏らしても、龍之介には大和をやりこめる言葉など思いつくはずもなく、素直に言葉にするしかない。

「ヤりたいです……。」
「はい、いいですよ。」

 漫画をテーブルの置いて、大和が首に手を回してくる。ぺろりと唇を舐められて口を開けば、うねうねとした舌が巻き付いてくる。角度を変えて何回も繰り返される深いキスは頭が痺れるほど気持ちがいい。
 キスを繰り返している間に、大和の手が下に下にと這っていき、片手で器用にバックルをはずし、ベルトを引き抜く。下着越しに軽く撫でられて思わず腰が浮く。

「うわー……もうこんなにして、ほら糸引いてる。」
「い、いわないで……うっ……あぁ……。」

 下着のゴムを指で引かれると、ぬちゃっという粘着質な音が鼓膜を犯す。大和がぬちぬちと、わざと音を立てながら時折ふぅっと息をかけてくるものだから、うめき声のようなあえぎが漏れてしまう。

「で、このまま手でイくのと、口ですんの、どっちがいい? 」

 大和の視線は龍之介の股間に釘付けで、またドクンと血液が集まったのがわかった。今日はそういう趣向なのだろうか、なにからなにまで言わせてくる。
 正直たまらなく恥ずかしいけど、耳が焼け切れちゃうんじゃないかってくらいあついけど、下半身の熱はずいぶん前から限界を主張していて、これを発散させなくては頭がおかしくなってしまいそうだ。
 どうせ言うんだ、思いっきり気持ちよくなりたい。

「く、口で……。」
「ふぁい。」

 大和はぱくりとくわえ込んだかと思うと。舌で裏筋をなで上げていく、ちゅくちゅくと音を立てながら、起用に頭を前後に動かしていく。

「んっ……ぃ……気持ちいいよっ……。」
「ふぉう?ほれはほかっは。」
「っんぅっぐ……お、お願いだから喋らないで……っ! 」

 大和が笑ったのだろう、喉が震えてすごく気持ちいい。どんどんと早くなっていく動きに、はふはふと息をするのに必死でだらしない声を上げる。
 龍之介は必死に大和の頭を掴み動かす。

「ふぁあああんっ!」

 そしてとうとう情けない声を上げて果ててしまう。
 ああ、気持ちよかった、すごく……すごく……。
 そうやって余韻に浸っていると、大和の喉がぐるっと大きな音を立てた。
 あれ、俺、もしかして大和君の口に出しちゃった……?

「うわぁあああああ!?ご、ご、ごめん!早く出して!」
「もー飲んじゃいました。まじいー。」
「あ、あたり前でしょ!こんなもの……。」
「んー……でも、悪い感じじゃなかったっていうか、アンタのだったから飲めたっつーか……。」

 にへっと笑う大和君の顔を、見つめる。上気した肌に、口の端についた白濁。
 あぁ、ダメだ……また……。

「うっわ!また大きくなってる! 」
「しょ、しょうがないだろ!大和くんが可愛いこと言うんだから! 」
「人のせいにしないでください〜このエロエロドラゴン! 」
「うっ……えっちなのは大和君だろ! 」
「知りません〜あーもうおにーさんはもう知りません。寝ますー。」
「ま、待ってよ……これどうすれば……。」
「一人でヤれば? 」
「や、大和君〜。」

 大和はひょいっとソファーから降りると風呂場へと入って行ってしまった。
 しばらくすると、シャワーの音が聞こえはじめる。
 大和は気づいているだろうか、きっと気づいているだろう。龍之介の家はユニットバスだという事を……。

「覚えてろよ……。」

 のっしのっしと風呂場へと歩く龍之介が、シャワーカーテンを開くまであと少し。


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