今日こそは一線を越えるのだと龍之介は決意した。
 龍之介に男の恋人ができたのは初めてである。そもそも龍之介は所謂オツキアイの経験が豊富な方ではなく、いつも告白されたから付き合い、そういう雰囲気になったからキスやセックスをこなしてきた。流されるまま二十三歳まで生きてきて、そして大和と出会った。
 第一印象は、正直なところよく覚えていない。多分、楽しそうなグループのリーダーの子。といった感じだと思う。彼を意識し始めたのは楽が、大和の話をするようになってからで――なんていう馴れ初めは置いておこう。
 大和と龍之介は出会い。そして龍之介からの猛アプローチの末おつき合いする事となったのだ。キスまでは良かった。ちょっとした隙間時間にもできるし、その度大和が恥ずかしそうに顔を赤らめるのを見て龍之介は心と、それと夜のリフレッシュ時間を満たした。
 大和とつきあい始めて、そっちの動画もいくつか見た。映像自体では対して興奮しなかったが、それを自分と大和に置き換えて想像した途端、愚息は起き上がり、主張を始める。龍之介は大和を抱く妄想も大和に抱かれる妄想も映像から少しずつ派生されて両手では足りないくらいしてきた。
 そう、この日のための準備はばっちりだったのだ。

「今日は帰らなくて大丈夫なんだよね」
「はい、ミツに伝えてきましたし、明日は仕事もない。俺たち全員オフだから何かがおきて呼び出されることもない」

 そういって、ベッドに座る大和の投げ出された足に龍之介は生唾を飲んだ。大和が、大和が龍之介のベッドの上にいる。この何度も妄想の導入に使ったシチュエーションに龍之介の心拍数は上がりっぱなしだった。
 次はどうする? シャワーは実は大和が来る前に一度浴びている。今日を確実にするために、一回ヌくついでに浴びておいたのだ。
(三擦り半なんてことが起きないように……って思ってやったけど、よかった。正直余り持ちそうにないから)
 大和の足が悩ましく組み替えられる度に、龍之介の龍之介くんはどんどんと質量を増していっており、ゆったりとしたズボンにもあと少しの刺激でテントを張ってしまうだろう。
(どうしよう、押し倒して、いいのかな……大和くん、俺のことダーリンとか呼ぶし、女役して、くれるんだよな? 俺も一応後ろの用意してあるけど……でもやっぱり大和くんに挿れたい!入れてもらうのはまた今度にして……今日は俺が……)
 龍之介がぐるぐると悩んでいると大和はふぅっとため息をついて、龍之介の腕をひいて、ベッドに引きずり込んだ。突然腕を引かれた龍之介はバランスを崩して大和に覆いかぶさっしまう。キスしてしまいそうな距離にある大和の顔に龍之介は顔から火が出そうなほど動揺した。これは今まで妄想してきたどのパターンにもないぞと、思考が麻痺する。
 はふはふと呼吸をすれば大和からふわっと石鹸の香りがして、彼がすでにシャワーを浴び終わっていることがわかる。ああ、彼も期待してくれていたのだと嬉しく思う反面、見逃せない物があった。
 龍之介の腕を引いたその腕が腰に回り、そのまま下へ下がったかと思うと、ズボンの上から龍之介の筋肉質な双丘を揉みしだき始めたのだ。
(もしかして、大和くんも俺のこと抱こうとしてないか!? )
 その疑惑はすぐに確信に変わった。ズボンを下着と共に下げたかと思うと、龍之介の尻たぶを開き、まだ龍之介の指以外を受け入れたことのない奥をとんとんと指でノックし始めたからだ。

「っちょっと! 」
「あれ、もしかして準備してます? 」

 指を休めて大和は龍之介の顔を伺い見てきた。驚いたように見開かれた瞳や、興奮で少し上気した頬がかわいい……と龍之介の頬がゆるむと、大和はふぅんっとおもしろくなさそうに龍之介の尻をもにもにと揉む。

「初めてかと思ったのに、もしかして慣れてますか? 」
「え? 」
「男のひととソウイウことしたことなさそうなのに、用意してるし……」
「や、それは! 初めてだけど……じゃなくて! 俺が抱かれる側なの? 」
「え? だってあんた手ぇだしてこねーし。俺てっきりネコなんだと思って……」
「違うよ! 」
「受け入れる準備もしてるのに? 」

 またとんとんっとノックされて、筋肉がきゅうっと収縮する。それに気づいた大和は「ほら、期待してる」と笑うが、今度はその表情のかわいさに惑わされることなく、確固とした態度で、もう一度「違う」と言った。

「それは、大和くんがどうしてもヤだっていった時にできないのはイヤだから準備しただけで、俺は大和くんを抱くつもりでずっと……」

 イメージトレーニングしてきたんだ! とは言えず尻すぼみになった言葉に大和は龍之介の尻から手を離した。

「ふぅん……十さんは俺に挿れるつもりだったんだ」
「う、うん……だめ、かな? 」
「や、だめじゃないですけど……俺も、準備してきたし……」
「え? 」

 大和が真っ赤になりながら「そもそも俺、龍之介さんに挿れてもらうつもりでしたし……」と言うものだから龍之介の息子は、大興奮で、思春期の時だってこんなに大きくならなかっただろう、と自分でも恥ずかしくなるくらい膨らんでしまい、慌てて手で隠す。

「じゃ、じゃあその、俺が大和くんに入れていいってこと? 」
「ああああっ! もう! 早くしないと俺があんたに入れますよ! 」
「そ、それはダメ! 」

 龍之介は愚息を隠すのやめ、丁寧に、プレゼントの包み紙を開けるように大和のズボンをおろし、深緑色のパンツのゴムに手をかける。
(大和くん……興奮してるんだ……)
 深緑色のパンツの一部分は他の部分よりも深い色になっており、そのぶぶんをやわやわと揉むと、大和が「んっ」と悩ましい声を上げる。色を塗り広げるように手のひらで押せば、大和の息がどんどんと湿気を帯び、下着からも恥ずかしい音が聞こえはじめる。
 ぐちゅ、にちゅっという音を楽しみながら、ゴムを指で下ろすと大和の龍之介よりは慎ましやかなモノがぶるんっと飛び出した。

「っぁ」

 大和の口から漏れる声に急かされるように、龍之介はまだすこし柔らかいそこに口づけ、愛撫する。はくはくと苦しそうな頂や、ゆるゆると重量を増していく袋をなでると、大和はわかりやすく体をはねさせる。
 大和の反応に気をよくした龍之介は、はぁっと竿に息を吹きかけ、大和に尋ねた。

「気持ちいい? 」
「ひぃっ……ぁんった、後で覚えてろよ……」

 龍之介を蹴ろうと暴れる足をつかみ開かせると、大和が少し腰を浮かせたので、枕を押し込む。

「っばっか! そのままやったら汚れ……ぃっ」
「大丈夫だから。……ほんとに用意してきてくれたんだね……すごい。柔らかくて……ひくひくしてる」

 大和が声にならない悲鳴を上げているが、龍之介はそれを無視して、大和の奥をまじまじとみた。動画ではモザイクがかかっていたため、よくわからなかったが、このようになっているのか。と思わず感心してしまう。大和のそこは慎ましやかに口を閉じているが、期待しているのか呼吸にあわせてひくひくと小さくうごめいており、人差し指を添えると、歓迎するように龍之介の指をすぐに飲み込んだ。

「くぅ……ん」
「大和くん、ゆっくり息して、大丈夫、大丈夫だよ」

 指を押し進めながら涙を流す大和の前をいじる。人差し指をすべて飲み込んだと思うと突然大和の中がきゅうっと収縮し、指を動かせなくなる。どうしたのだろうと、後口から視線をあげると、しっかりと芯を持っていたソコが柔らかくなっていたのが心配で、大和の顔を見れば、大和が肩で息をしながら龍之介を受け入れようとふぅふぅと呼吸をしているのが見え、龍之介は胸がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥る。
(大和くんが……俺のために……)
 たまらなくなって、すぐにでも指を動かし、大和のイイところを探したい衝動に駆られるが、ここは我慢だ。と自分に言い聞かせ、大和の前の興奮を高めることに集中する。
 大和のそこが硬さを取り戻したとき、龍之介の指もスムーズに動くようになり、大和の中をゆっくりとまさぐっていく。自分の経験から、服側を重点的にまさぐっていると、他とは違うさわり心地の場所を見つけ、龍之介はほっと息をつく。押し込めるようにソコを押すと大和が大げさに声を上げた。

「んあぁああっ! っふ……そ、それ……」
「ん? あれ、大和くん知らないの? 前立腺」

 「男の子も気持ちよくなれるんだよ」と指をもう一本足し、ソコを押し込んだり、挟んだり、さっき龍之介がされたようにとんとんとリズムをつけてノックすると大和は、前髪をはらはらとゆらして、首をふる。

「ぁ、ああっ……しら、しらない……こんなの……」
「自分で慣らした時にみつけなかった? 」
「わか、わからなかった、からっ……洗って……広げて、それだけ……」
「そっか、これからは俺がやってあげるからね」

 自分で見つけておいてよかった。あの経験がなければ大和の前立腺をすぐに見つけることはできなかっただろう。と試行錯誤と妄想の日々に感謝しながらローションをつぎ足し、ひきつるところがないように慎重に押し広げていく。緊張のとけたソコは、龍之介の指に甘えるように吸いついてきて、龍之介の理性をむしばんでいく。
(落ち着け……落ち着け龍之介……ここで先走ったら一生後悔するぞ)
 そう言い聞かせる。
 三本目を入れ、それをなんなく受け入れたソコがどのくらい広がったか確認するために開くと、注いだローションがたらっと重力に引かれて流れ出てきた。

「ひっ……つめたっ……」

 空気が入るのがつめたかったのだろう、大和は押し広げた指を押し返すように内壁が収縮しようとするがそれがかなわず、その運動に押し出されるようにして更にローションがあふれ出るだけだった。
 十龍之介はその時、自分の理性が焼ききれる音を初めて聞いた。

「大和くん……ごめん」
「え? んぁっぐ……」

 どんなに慣らしても、龍之介の大きな息子を納めるのは辛いらしく、大和の顔に焦りが浮かぶ。

「む、無理……」
「無理じゃない」

 ゆっくりとしたストロークでならしながら、押し入っていく。大和のナカは熱く、健気に龍之介のソレを締め付ける。一番太いところを飲み込めばその後はもう誘われるがままに任せるだけで、こつっと奥に当たると、龍之介は、はぁっと甘い息を吐き出した。
 なじむまではこうしていようと大和の顔を見て、龍之介は青ざめた。大和がはらはらと涙を流していたからだ。

「ご、ご、ごめん、痛かった!? ぬ、抜こうか」
「っぅ……ぬ、抜かないで。そのまま……」
「でも、大和くん苦しそうだし……やっぱり」
「ぬくなっつっえんでしょうが! ばか! 」
「ばっ……」

 大和は目元を真っ赤に染めて泣きながら怒っている。龍之介はどうすればいいのかわからず、さまよっていた手で、大和の涙を拭った。

「ちんこ触った手で顔触るとか」
「え、ああっ! そうだよねごめんね……」

 確かにイヤかもしれない。どうしよう、と手近なシーツで慌てて手を拭うと、大和が吹き出した。

「あー……さっきまであんなにオラオラだったのに。ずるいなあ……」
「ごめん……」

 「ムードもなにもないよね」と龍之介が首をたれれば、大和がちょいちょいと手招きをして、何事か小さな声でささやく、その声を聞き取ろうと、口元に耳を寄せれば、ちゅっというかわいい音がして頬にキスされる。ふれるだけの軽いものだったが、龍之介を動揺させるには十分で、あっというまに茹で蛸のように真っ赤になってしまった。

「十さんかーわい」
「……君の方がかわいいよ」

 しししっと笑う大和の鼻の頭にキスをすると、その軽いキスでの反応ではない艶やかな声が龍之介の理性にまた襲いかかった。
(そっか、俺たちつながったままだった)

「動いていいですよ」

 「今のすげーよかった」そういって大和が笑うので、龍之介はせっかくつないだ理性の糸を離さないようにするのに苦労した。そして、大和の反応を見ながら腰を動かし始める。前立腺をえぐるように動かせば、大和が快楽に耐えるように背を丸めるので安心して、徐々にスピードを早める。

「っは、あっ、ああっ」
「大和くんっ……大和くんっ……」
「っつなし……さ……ぁあっ! 」

 お互いに名前を呼び合うと更に高まって、あっけなく達してしまった。一回ヌいておいた龍之介の息子は満足したのかぐったりとしていて、すこし残念に思いながら、大和のナカから引き抜き、ゴムの口を縛る。

「つなしさん」
「んー」

 ベッドサイドにおいておいたくずかごにゴムを投げ入れると、大和が龍之介にしなだれかかってきた。べたべたと汗をかいた体で触れ合うことを嫌がる大和にはめずらしい行為で、龍之介は驚きながら大和を受け止める。

「どうしたの? 大和くん」
「俺、すっげーよかったんで、次は十さんも気持ち良くしてあげますね」
「え? 」
「お尻、好きですよね」

 「いや、それは君を気持ちよくするために調べたことで……」と返そうとするも、その言葉は大和から与えられた熱烈なキスにかき消されてしまった。


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