大和に怒りを示すときに一番有効な方法が、どこまでも優しいセックスだと気付いた時、龍之介は大和の心の一端に触れたような心地になりひどく不安定になった。指先まで溶かさすように優しく抱いたあの日は、大和がいとおしくてしかたがなく、いじっぱりな彼に少しでも自分の心を見せようと丁寧に丁寧に抱いたのだ。するとどうだろう、最初は前戯が長い、しつこい、ねちっこいと文句をはいていた口が、だんだんと言葉をなくし、あえぎ声ではなく嗚咽を漏らしはじめたのだ。そこで驚いて彼を見ると、顔を余裕なくぐしゃぐしゃにして怖いと一言漏らしたのだ。
 以前から彼が大切に扱われることを苦手としていることは知っていたが、それはきっと照れからくるものだろうと思っていた龍之介はそんな大和をみて言葉をなくしてしまい、その日は泣きじゃくる大和を寝かしつけた後、一人寂しくトイレで欲望を吐き出した。
 それ以降、性行為の際の主導権は大和に握られており、もちろんそれ自体にはなんの不満もない。自分よりも知識が多いらしい彼には、少し、いやかなり、いい思いをさせて貰っている。
 それでも龍之介とて男である。お膳立てされたものだけでなく、自分で愛の営みを作り上げたいというクリエイティブな精神も持ち合わせていた。しかし、そこは技量の差だろうか? どんなに今日こそはと意気込んでも、あれよあれよという間に剥かれて、ベッドの上で大和の肉壷の轟きにあえがされている。
 そんな日々がしばらく続き、ついにその時がやってきた。その日龍之介は少しだけ腹をたてていた。大和がメンバーと喧嘩してそのまま飛び出してきたのだと聞き、謝るようにと、どんなにいっても彼は聞く耳をもたず、「そんなことより早くシましょうよ」なんて言い出したからである。このまま放り出して帰らせることもできたが、それよりも龍之介の頭に一つの案がうかんだ。優しく、どこまでも優しく抱いたあの日、大和は怖いといって涙をながした。――これはお仕置きになるのではないだろうか。っと。
 そうと決まれば、ソファーに腰掛けている大和にぐいっと体重をかけて抱きしめる。

「ちょっ――」

 文句が飛び出そうな唇から息をうばい、言葉を封じる。音をたてて唇を吸うと大和の目がとろりと溶けた。それを横目に、Tシャツの隙間から手を差し込み、胸をまさぐる。

「ま、待って、お兄さんベッドでがいいなーなんて……」
「ン……じゃあ、いこっか」

 吐息を多めに乗せて耳元でささやけば大和の体が小さくふるえる。ひっかかる胸の突起はぴんっと立って主張しており、大和が興奮していることがよくわかった。覆いかぶさるようになっていた体を起こせば、大和が立ち上がろうと少し腰を浮かせる。そこを見逃さずに、膝裏を抱え抱き上げる。

「わっ、ちょっと! なにしてんですか」
「何って……行くんだろ? ベッド。連れて行ってあげる」
「自分で歩けますって! 自分で! 」

 足をバタつかせて手から逃げようとしてくる大和を無視して寝室へと歩みを進める。時折わざと抱え直すように揺らすと、落とされると思ったのか大和は足をバタつかせるのをやめ、おずおずと首に手を回してきた。いつもこういう風に素直だったら、俺だって意地悪しようと思わないのに。と今から彼を泣かせようとしていることに少し心が痛んだが、やめる気にはならなかった。
 おとなしい大和をベッドにゆっくりとおろし、自分もベッドの上に上る。家ですることは睡眠が主だからと、良質な睡眠のため金をかけて買ったベッドは長身の龍之介が寝転がってもまだ余るほど大きな物で、寝室はほぼベッドで埋まっている。
 俺がチェストの引き出しをあけ、ローションを取り出していると、後ろで布がこすれる音がして、大和が豪快に服を脱いでいる事が分かった。今日は脱がせようと思っていたのに。とズボンにかかった手をつかむ。

「待って」
「え? 」
「今日は俺が全部するから。任せて」

 そう告げると大和はあからさまに不満そうな顔をしながら渋々というようにズボンから手を離し、後ろに手をついた。おおかた事が始まったら自分が主導権を奪えばいいとでも思っているのだろう。……いつもはそうなってしまうから、今日はそうならないようにしないと、と決意をして、大和の腰に手を回し、舌を首にはわせる。

「……っあ」

 首筋をなめあげ、薄くあいた唇からのぞく舌を激しく吸う。大和がはいているズボンはスウェットで簡単に中を暴くことはできたが、わざとズボンの上から足の間をさすると、大和の腰がもどかしげに揺れた。下着の中のそれはまだ兆しきっておらず、芯を持っている程度だ。やわやわと握り込むと、大和の舌が逃げるように口腔内を動き回る。

「っんぅ、は……っふ……」

 大和の目尻から涙がこぼれ落ちたのを見て、それを吸う。大和ははっはっと肩で息をしている。口の端からは唾液が垂れており、そんな余裕はないのだろうか? いつもならすぐに拭われるそれもそのままになっている。微笑みかけながら、見せつけるように大和の胸を外側から内側へと撫でる。掌で頂をつぶせば、大和から甘えたような声がもれる。指先でこね、熱をもちだしたそこにちゅっと吸い付いた。

「……っ、ん十さん……そ、そこだけじゃなくて……はやく……」

 大和が身をよじる。十の手を取って後ろへ導こうとしているのだろうが、その手には力が入っておらず、少し力をいれれば抵抗できてしまう。

「ここだけじゃなくて? 」

 胸の先を舌で押しつぶしたり、唇でやわやわとはみ刺激を与えると、そのたびに鼻にかかったような濡れた声があがるが、その声色に少しずつ焦りがにじみだした。

「う、後ろ、早く……い、いれろって! おれ、ばっかり……っぁあ……イッ、イッちゃうから、やめっ」
「だめだよ。悪い子の大和君の言うことは聞けません」
「――あぁっ」

 唾液で滑りがよくなり、ぷっくりと膨らんだそこを指の腹で弾くと大和がいやいやをするように頭を振る。それを無視して胸への愛撫を続けていると、ぷしっと音がして、スウェットに染みが広がる。

「胸でイっちゃったの? 」

 射精後の快感にふるえる大和の耳にふっと息を吹きかけ、やわやわと耳たぶを揉む。すると大和がふるっと大きくふるえ、ずずっという鼻をすする音がした。

「う……」
「大和君? 」
「今日の十さん、やだ、ねちっこいし、俺、はやく入れてほしいっていったのに……」

 キングサイズのべっとの隅へと逃げようとする大和の腰をつかみとどめると、大和は顔から崩れ落ちた。

「うん、でも俺、君のこと大切にしたいんだ」
「いっ……そんなことしなくていいんですよっ! 俺は……俺は……アンタに気持ちよくなってもらえればそれで……アンタにこんな風にされると、俺すげえ不安になって、怖い……」

 ずずっと鼻をすする大和君の顔はぐしゃぐしゃで、アイドルとは思えないくらい崩れているがたまらないくらい愛おしかった。しかし、今日の目的は甘やかすことと、お仕置きだ。すぐに言うことを聞いてしまってはいけないだろう。
 大和君がどんなに可愛くても、我慢、我慢だ俺! ほら、大和君が可愛いっていった時の楽の顔を思い出せ……っはー……落ち着いてきた。

「俺、言ったでしょ? 悪い子の大和君の言うことは聞けないって。ね? ちゃんと三月くんにごめんなさいって言うって約束できるなら、大和君のお願い聞いてあげるよ」
「なんで、アンタにそんなこと……」

 俺の言葉にむっとしたらしい大和は、ぷいっとそっぽを向く。俺はその反応に少しいらだったようなふりをして、大和の乳首を摘んできゅっとひいた。

「ぅひっ!」
「またそういう可愛くないこというと、もう一回するよ? 」

 大和はじわっと目尻を赤くし、もごもごとつぶやいた。

「ぅ……ます」
「え? 」
「謝りますからっ! 早く……早くアンタのをくれっていってんだよ! 」

 またズボンに手をかけて脱ごうとする大和に、俺は思わず笑みを漏らす。勢いよくおろされたズボンは足下で絡まってしまったらしく、大和はそれと格闘している。
 俺が女の子だったら、千年の恋だってさめちゃいそうなくらい情けない姿なのに、龍之介の下半身はみるみる反応して下履きを押し上げていく。

「大和君」
「っなんだよ、俺は今……」
「おいで、甘やかしてあげるから」

 そうささやくと、ズボンがから手がはなされ、すとんと足から抜ける。ぽかんっと口をあけてこっちをみる表情は随分と間抜けだ。ズボンを
ベッドの下に落とし、大和は龍之介にしなだれかかる。

「甘やかさなくていいんですよ。俺、アンタの気持ちよくなってる顔がすげー好きで、それだけでいいんです」
「そっかあ、でも俺が甘やかしたいんだ。いいでしょ」

 大和が小さく、この野郎とつぶやく。

「あんたの甘やかすは、しつこくて怖いんだよ。あんなの嫌がらせだろ」
「うっ、でも好きだろ」
「……っ、当たり前だろ」

 大和の目からぽろっと涙がこぼれ、止めどなくあふれてくる。それをゆびで拭おうとすると、責めるようにそんなことより早く。とせかされてしまう。しかたないな、という表情をしながらズボンを下着とともに取り払うが、すっかりと立ち上がり涙をこぼしているそこを見られてしまえば、格好など付くはずがなかった。

*
「もう、大丈夫? 」

 ねっとりとかき混ぜたそこは、ぐちぐちと音を立て龍之介の指を三本飲み込んではいるが、まだ足りないような気がして大和に訪ねると、責めるような視線がかえされる。

「いいっ、から。これ以上待たせんなっ」

 口は悪いが甘えるような言い方に、口角がゆるむ。背中にキスを落とし、大和の足を少し開かせ、ゆっくりと先端を埋めていく。

「ぁあっ」
「うっ」

 中は熱く、押し返すようにうねっていたが、一番太いところを越えたあたりから、中へ中へ導くかのように龍之介を締め付け始めた。

「や、大和君……も、もう少し力抜いて……ぃう……」
「む、むり……ぁ……アンタのでかすぎだから……」

 ぽたぽたっと大和の額から汗が落ちる。うっといううめき声が大和から漏れたかと思うと、龍之介のそれがずっと中に入り、根本まで埋まった。

「っは……力入れた方がいいって……聞いたことあったんで、アッ、ちょっ、まだ、ひっ……」
「ごめん、俺我慢できない」

 得意げに笑う大和の話の終わりを待つことなく、腰を軽く振る開始する。そろそろと腰を引き、ゆっくりと挿入する。溶けきったそこは、龍之介を拒むことなく、それどころか逃すまいとからみついてくる。

「っああっ」
「大和君、俺、もう……」

 龍之介は大和のナカで達した。あわてて引き抜くと、ひっという喘ぎ声があがり、大和の指がきゅっと丸まっていたからどうやら大和も達したらしい。
 龍之介は重たい体を引きずりながらチェストからティッシュをとり、大和を拭う。その時に思い出したように「謝るんだよ」と念を押すと、大和が鼻にしわをよせて「アンタってムードとか考えないのな」とつぶやいた。

End.

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