Re:CREATORS | ナノ



騎士の物語は終わらない


私≠フ激情に、私は揉まれていた。


許せなかった。

奴≠ノとって盟友の想いは傲慢だったのかもしれない、それでもその想いを踏み躙りその命奪ったことを。誰を倒すべきかうっすら気づいていながら、あの探求者に八つ当たりしていた自分の弱さにまみか≠喪った私の脆さに。

あの世界に来るまで【軍服の姫君】に出会うまで、私は本当の世界で生きていた。私にとって、現実だった。だというのに、その世界をから飛び出せば私の世界は作り物の虚構の物語。足掻き倒せない敵に戦う意思も、死にゆく民や仲間たちを護りたくて抱いた信念も、すべて作られた感情に!!

ふざけるな、と…信じられなかった。

それでもその世界で目にした、私の軌跡を記した絵物語を完璧に否定することも出来ず。この世界で得た不安を恐怖を弱さを隠して欺いて、己の気持ちに嘘をつき続けた。変革しようとする気持ちは本当だ。奴らに、吐き出した言葉たちは本当だ。それに縋りついていたとしても。だから、そんな世界でまみか≠ノ出会えたことは、私の救いだった。



其処は知らない世界だった。人工で作られた建造物らしきものにたくさん囲まれて、その中でも小さな木々や花壇、石の道に囲まれている場所。血塗れの夢の中の少女ーー煌樹まみかを、私が抱き起こしその最期の言葉を聞いている場面。

『アリスちゃん…お願い…あの人を…』
『まみか……!』

あの人を救ってくれと願いながらまみかは息をひきとり、青色の光とともに消え去った。それから、後ろにいた女へと向き合えば、そこからぼんやりとしはじめる。その場面が閉じてしまうと、膨大な記憶が私の中へと流れ込んできた。あの男と戦っているまみかは、不利になり怯え危機に直面していた。上空から突然、私が間にはいりまみかを連れ去った。それからは、名前を互いに知って、一緒に夜食をとり、焚き火していれば叱られ、互いの信念のために対立した。最初は純粋すぎると思ったが……まみかの考えは間違っていないと思う。私へ詫びた誠実もーーーそうだ。

いつの間にか、あの子を盟友だと思っていた。考えは違っていても、歩みよろうとするまみかの強さに自身の世界が虚像だとしても受け入れたその心に、盟友として誇りに思っていた。



まみかの死後に、様々な者と言葉を交わし行動した。不幸で悲惨なだけの私の物語を、詭弁ではなく誠意の思いで語った。力と勇気と正義の有りようを教える物語だと言う読者の少年と、その物語を描き続ける極度の照れ屋な創造主の肯定に、知れたというのは事実。

今思えば、不安定だったアリス≠ェあの世界のアリステリア・フェブラリィ≠ニいう主人公≠ノ戻りはじめたのかもしれない。本来の私を取り戻していたのか。そのきっかけになったのが、盟友の死とは認めたくない部分もあるが、最期にあの創造主は私に力を与えたのも確かだったのだ。

結局ーー私は、アルタイルには勝てなかった。あの世界では完璧な敗北を喫したけれど、私という主人公≠ヘ諦めることだけは、しなかった。例えあの槍が貫けなかったとしても。次に繋げられたのならいい。きっとそう思う。



まみかと同じ様に青い光へと消えゆく中、私は何を想い願っていたのだろう。

あの時、止めていればよかった。
あの手を掴めばよかった。
きっと二人で行っても勝てなかっただろう。
あんな別れにはならなかった。
私は、確かにあの者に敗れた。
それでも、まだ終わっていなかった。

当初の目的は変わっていた。そう願わなくてもーーー私の世界は私が導くのだ勝利へと。

でも、もし、一つだけ最後に願うが叶うなら。

「もう一度、まみかに会いたい」



夢の残骸が記憶に戻る。ずっと見ていた夢は、あの世界のアリステリアが訴え続けていたのか。この世界戻った私に託したのか今はわからない。目が覚めて起きたらあの少女に、まみかとなんと言葉を交わそう。そもそもそこに存在しているのか、私の作り出し幻覚の可能性がでてきた。

疑わしいが。それは、起きてから確かめよう。今、思っていることを伝えよう。



夢から現実へ意識が浮上する中で、あの創造主が微笑んで消えた。


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