Re:CREATORS | ナノ



すべてはあの記憶へと


少女の話は信じがたいばかりだった。ざっくり聞くに『私がいるこの世界』と『少女のいる世界』違うこと。その二つの世界にも、更にたくさんの『世界』があること。そして『幾つもの世界』には、それぞれ様々な力があり、逆になんの力もなく、統治している組織はばらばらで、そこには複雑怪奇としか表せない。言葉は通じているのが、せめてもの救いか?

少女の世界は文明が進んでいて、水や火が容易くすぐ使えるのは驚いた。鉄の塊が飛んだり動いたりするのは、想像できず頭が痛くなったが。最も一番信じがたいのが、少女の世界では先ほど見たあの強力な力も、死人はでず多少怪我するだけのものらしいということ。あんなもの、まともに喰らったら死ぬ。現に、あの魔物は木っ端微塵で姿形すら消え去っている。吹き飛ばされただけの気配もない。

「それは、この世界の決まりごとが適応されたんだと思う。この世界ではこんな力を使えば…死んじゃうでしょう…?」

なるほど、わからん。わからないが、こんな突飛な嘘をついてなんの得もなく、それどころか頭の可笑しな人間と判断される。信用させて、油断させるには初っ端でつまづいていた。

「とりあえず、わかったことは、お前は行き場所が無いんだな?」
「え!?信じてくれるの!??」
「信じられるか!ただ領土内で奇妙な人間を放置するのも問題だ。しかし、敵意も害意もまったく感じられない子供を、殺すのは私の信条に反する。よって私直々に保護し監視する体でいけば、まず処刑されることはないだろう」

職権乱用とも言われそうだな………夢の中の少女に似たこの子供を殺すのは、本能が嫌だと訴えている。どうしてしまったんだ私は。

少女は大きな瞳を瞬かせた。

「それって…あなたが私を守ってくれるということ?」

自身の今後がどうなるかわからないというのに、嬉しそうに笑う。

「よく良いようにとらえるな…とにかく私と共に馬に乗ってくれ。一旦城に帰るぞ、しかし城の奴らにどう説明すればいい。異世界からの迷い人を保護したなど納得するか、どうか」

歩きはじめて、はたっと立ち止まる。そういえば、この少女の名前を知らない。私も正式に名前を名乗っていない。

「私の名前は、アリステリア・フェブラリィ。お前の名前は?」

一番大事な過程を飛ばしていたことを忘れていた。一応、初対面の人間同士名を名乗りあうものだ。最初の衝撃て色々吹っ飛んでいた。

「ああ、そっか…そうだよね…………よく考えたら、自己紹介まだだったね!!私の名前は、煌樹、あ、こっちでは名前が先なのかな?今の私の世界での苗字みたいなものなの」

「キラメキ、こちらでのフェブラリィの部分ということか?」

「うん!でね」


「名前はーーーまみか」






(まみか?)


脳内で半濁する。
額に手を当てもう一度唱える。

「まみか」

懐かしいこの響きに、何故か泣きたくなる。

「ーーえ?アリステリアさん?!しっかりして、アリッーーーーーアリスちゃんっ!」

そして、意識は其処で途切れ、あの夢へと私を誘った。



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