Re:CREATORS | ナノ



二人はまだ交わらない


相棒の白馬に跨り、その場所へ急いで向かう。上空に現れた陣はすぐに消えてしまったので、あれは一体なにかと分析はできなくなってしまった。

「きゃあああ!」

つんざく悲鳴が聞こえた。少女の声だ。同時に魔物の声も重なるように雄叫びが聞こえ、少女が襲われている場面が容易くわかった。

(まずい!)

上空から、木々の間を見渡す。それらしき人影と、魔物が木々を薙ぎ倒していく方向を見れば、森の中央へと向かっている。開けた大地にでた少女の姿は、奇妙な格好をして手には変わった形状の杖を持っていた。大きな魔物と対面するように中央で向かいあっている。その少女の格好は見たことがないにも関わらず、既視感と懐かしさに戸惑う。

(何をしているんだ!)

じりじりと詰め寄り歓喜の咆哮をだす魔物と、俯いたまま微動だにしない少女。助けねばと、下へと降りようとした同時にーーー襲いかかる魔物の攻撃を交わし、少女は顔を上げ空中へと浮いた。魔物は呆けた表情して、私も目を見開く。

『…ごめんね』

口元がそう動いたような気がする。覚悟とほんの少しの哀しさがまじる表情に、心臓が大きく鳴った。持っていた杖を両手に持ち前へとつきだし、高らかに少女は放つ。

「マジカル・スプラッシュ・フレアーーーッ!」

直感でこれはまともに喰らうのはまずいと、判断し守りの詠唱で防いだ。それでも、吹き飛ばされそうになる。放たれた一撃は、鮮やかな色とともに円状に爆発し、爆発音と爆風が木々を揺らし、光が視界いっぱいに広がった。


(なんだ…この威力は…私の籠手以上だ!)

けほけほと咳き込み、しばらく目がちかちかして相棒に寄りかかっていた。空中で浮遊しているが、バランスが保てず下へと降りるように頼む。少女の位置を確認しないまま降りたった。近くに気配を感じる。うっすらと目を開け、ぼんやりと視界に映ったのは、少女の後ろ姿だ。

「……!誰っ!」

私の気配に気がついたのか少女は、こちらを振り返った。その光景はやけにゆっくりしたように見え、目と目があった。ぼんやりしていた視界ははっきりとその姿を映した。



瞳は大きく見開き、驚愕の表情で呟く。

「ーーーアリスちゃん」

少女の瞳から大粒の涙が零れた。


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