Re:CREATORS | ナノ



強者は其れを望まない


降り立った森の近くの川辺で相棒が水を飲んでいる。この付近では大きな森へと、私は視線をやった。

「ここも、前は魔物達が住処としていたな」

人間が自由に行き来できる場所が増えるのは、良いことではある。人間にとって。

だが。

「隣国との国境やらなんやらかんら…巨悪を倒すため、団結もこうも脆いとは悲しいものだ」

大きなため息を吐く。平和になりそれぞれが立て直していく中で、今度はどうしようもない諍いで頭を悩ませることが多くなった。人間同士の政治、外交とは面倒くさいものだ。そもそも、そういった類は得意分野じゃない…脳筋と自覚はしている部分がある。これは、生まれてからの性格もあるのでしょうがない。

己の籠手を眺める。強力な力が、これには宿っている。
この国に受け継がれてきた籠手は、ウンターヴェルトを倒した。それ以来、この力は使わずともこの国をあらゆるものから、守護神のように守り続けている。他国はこれが恐ろしいらしい。

いや、違うな。他国はこの籠手を扱える、ウンターヴェルトを倒した『アリステリア・フェブラリィ』という存在に恐れ抱いているように感じた。それだけではないだろうが、この世界で強すぎる力は状況が一変してしまえば、恐怖に変わるのだとひしひし思う。今は戦争までは発展してないが、それぞれが回復していけばその心配も出てくるだろう。少しの寂しさと苦い感情を飲み込む。難儀だ。この籠手の力は、もう使いたくないんだが。

「………全然、気晴らしになってないな…うわっ」

慰めるように、相棒の白馬が私の頬を舐めた。少し気持ちが軽くなる。



私はやり遂げた。やり遂げたというのに、変な感情に振り回されていた。その感情にどう対処していいのか分からない。

「この世界が皆、仲良ければ…かーーー私らしくない思想だ。それとも」

本当に相容れなかったとしても、それなら、お互いに触らなければいいだけ

あの夢の中の少女に感化されているのかもしれない、その考えも良いのではないかと。素朴なきらいがあるが芯が強く純粋の灯った言葉たちは、私を後押してくれた。



これも妙な感情だ、夢の中の少女に憧れている。その少女のようになりたかった、と。

「会いたい」

何を言っているのだろう、と我にかえる。

「存在しない者に、会いたいなどど…だいぶまいっているようだな」

己が発した妄言に、頭を抱えた。



ドォンッ。突然音が鳴り響く。空を見上げると、森の空上に魔術式の錬成陣が現れた。ドクン、と鼓動が鳴った。

(あんな、錬成陣見たことないぞ!?まさか、まさか……)

最悪の想像が頭を過ぎる、倒したはずの敵が復活した、と。その想像は覆され、森の中央へと人が落ちていった。


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