Re:CREATORS | ナノ



平和が訪れた世界の後


早朝。

人の通りの少ない廊下を、忍び足かつ早足で移動する。重装備である。いつもの鎧姿が仇となってなかなか静かにできないのは難だ。城の者達に見つかれば、大目玉を喰らうだろう。『前』は常に非常自体であったから、見逃されていたことも、『今』ではそうとはいかない。

「……アリステリア、鎧姿で何処へ行こうとしているんですか?」

早速、口煩い奴に見つかってしまった。

「見逃してくれ」
「駄目です!『前』なら、ともかく『今』は駄目です!貴女、一応王族で姫なんですからね!」
「…王族に対して色々欠けていると思うぞ」
「私が貴女に配慮するとでも?………しかし、野をひたすら駆け回っていた貴女が、一日中城の中で王政に携わっているのは、色々心労もあるようでしょうから、今回は見逃してあげます」

注意を促しながらも、仲間の彼女はなんだかんだ私に甘かった。そんなところに気をおいていた。

「ほらほら、早くいかないと、私より厄介な方々達に見つかりますよー?」
「礼を言う」
「あ!わかってると思いますけど、なるべく早く帰ってきて下さいねーーー『平和』になったとはいえ、問題は山積みなんですから」
「ああ…」

『この世界に平和は訪れた』ーーー今の状況を表すならこの一文になるのだろうか。



「待たせたな。こうやって空を翔けるのは久しぶりだな」

相棒の白馬の頭を撫でてやると嬉しそうな鳴き声。こちらも嬉しくなった。手綱をしっかりと握りしめ、また一つ高く空へと上がる。前ほど自由に城を抜け出すことが難しくなり、此奴とも直に接することができなくなっていた。信頼のおけるかつ自由に動ける仲間に、此奴の世話を頼んだりしているがやはり己が連れ立ってやりたいと思うものだ。此奴もまた、私を導いてくれた大切な相棒なのだ。とはいえ、私の息抜きも兼ていたりもするが。

「済まないな。そう長くは共にできないがどこまで行こうか?近場で言うとあの森がいいが、今日はもう少し遠い方選ぶとしよう、お前もその方がいいだろう」

私の問いに答えるように、翔ける速度が早くなった。ふと、真下に広がる城下を見渡す。夜明けから徐々に暖かな朝日に照らされて、いく。

「ーーー美しいな」

まだまだ問題は山積みだ。残党はまだこの世界の何処かで潜んでいる。しかし、悪の権化を倒した今。緊迫した雰囲気はなくなり、明日へと人々は静かに営みを立て直し、前へ進み始めていた。



ウンターヴェルトとの最終決戦は私たちの勝利で終わった。『大』勝利ではない。あの戦いでまた多くの命が散ったのも事実で、私は一生、歩んできた者たちを忘れないと心に誓っている。


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