Re:CREATORS | ナノ



取り巻く記憶と世界


目を覚ましてから、刻が過ぎ去るのは早かった。忙しく戦いの日々は続き、苦しいもの悲しいことはたくさんあった。それでも、それを乗り越え私は前進していく。前に進み続けるのだ。どんな結末が待ち構えていても、私は歩みを止めることなどない。

だが、心が折れそうになる日がある。そんな時にあらゆる者たちが私を支え後押ししてくれ、私はまた前へ進めた。そして、その度に経験したことのない覚えのない夢を見るのだ。

『あなたのようでありたいと、そう思うから!』
『値する!そのつもりで描いてるに決まってるだろうが!!』

熱さの灯す少年の声が聞こえる。照れくささを帯びた男の声が聞こえる。何を言っているのか訳がわからないが、その言葉たちはとても大切なものだと漠然と感じていた。はっきりと思いだせない。誰にも話すことなどなく、その夢の話は心に仕舞うだけだ。

夢の最後に、いつも不思議な少女が私に言葉くれた。最初はあのペンダントをくれたあの村娘だと思った。あの子を忘れるはずがない、忘れる訳がない。私が守れなかった者たちを。でも、違う。あの子ではない。


『私がアリスちゃんを信じているように、この先に何があっても私を信じてほしい』


ああ、私は信じている。
誰よりも信じている。
胸に溢れるこの暖かな気持ちはなんだ?

名前すら思いだせない少女へと、溢れる気持ちでいつも目を覚した。



ある日の朝だった。

「アリステリア様、あの、少し変わられましたね…」
「は?」

「あああ、あのですね。乏している訳ではありません。断じて!ーーーただ、今の貴女はとても、とてもーーー」



「『穏やかに微笑まれるようになりましたので』と町の娘に言われた。私はそんなに近寄り難かったのか?」

今朝の出来事を世間話くらいの気持ちで話せば、仲間の一人は書類に目を通していた顔を、驚いたようにこちらに向けた。それから、考えるそぶりで顎に手を添えた。そんなに驚かなくて良いだろうに。

「…………確かに変わったと思います。それは、ウンターヴェルトとの戦いが好転に進んでいるのもあると思うのですが…貴女はあの襲撃からだいぶ気持ちに、ゆとりがあるように見える。前ほど一人で背負い込まなくなりましたね」

ゆっくりと語り始めた彼の様子に、今度はこちらが硬直してしまった。

「全ての悲しいものを背負いこんで、それでも前に進む貴女の姿に。私たちは勇気と希望を抱かずにはいられなかった。同時にその姿にもどかしく悔しく、思ったこともありますーーーアリステリア。私たちにたくさん頼ってくれるようになって、私たちは嬉しいんですよ」

穏やかに微笑みながら思わぬ心境を話す仲間に、妙に照れくさくなった。

「…そうか。ありがとう」
「ふふ、本当に表情豊かになりましたね。前も笑うこともありましたが、こうやって何気なく談笑するまでは、なかったのですから」
「私は気が抜けすぎているようだな、鍛錬に行ってくる」

照れ隠しですかと、後ろからかけてくる声を無視してその場から立ち去った。そう、だった。それまでウンターヴェルトへの憎悪で溢れていたはずが、今では折り合いをつけたような気分でいる。そこには、私は必ず奴らを倒すと『絶対的な自信』があるからだ。



夢に留まっていた記憶の中の妙な男は、私に何か伝えようとしている。それに、私は。

『お前にしか救えない』

お前≠ノ言われなくても、必ず私はーーー私は?

可笑しな感覚に、正直戸惑っていた。


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