メイン | ナノ



これで共犯者



ばさーと大量の飴が転がり落ちた。

「・・・先生、学校では食べなかったんじゃないの」
「いや、はは・・・」

散らばった飴を他の生徒や先生に見つかる前に急いで拾い集める。
昼休憩の閑散とした廊下で八代が何かを持ってこそこそしていたので、興味本位で声をかけたらこのような事態になった。何しているんだこの教師。

「車に備えつけていた飴を切らしたから昨日の帰りに買ったんだが、鞄に入れ忘れてたまま学校に持ってきてしまってな」

拾い集めた飴を八代に渡せば、苦笑混じりで頭をぽりぽりかいている。放課後以外、人の出入りが多い職員室で、まんがいち発見される前に車に持っていこうとしていたのか。俺に見つかってるから元も子もないんじゃ。

「そんな胡乱な目で見るなよ」

思いっきり顔に出ていたのかそう指摘され、なんて言おうか逡巡していると八代が飴のはいった袋に片手をつっこんだ。

「悟、受けとれ」

反射的に両手を出してぽろぽろ降ってきた飴をキャッチした。取り溢してはいない。
両手に溢れかえっている飴の山を見てこれをどうしろと硬直した。

「絶対に俺も見つかるんだけど」
「俺と悟は共犯者だろ?」

声に出た本音に八代は気にすることなく、笑ってそんなことをのたまっている。この前の車の中でのことも兼ねているのか。昼の授業も終わってないというのになんで巻きこもうとしているんだ。それ以前に隠す場所なんてない。

「先生、これって贔屓だよ」
「毎回お前どこで、そんな知識を覚えてくるんだ」

賢也とか、からか?と再び苦笑していた八代は全然気にしていない。なんでこんなに余裕あるんだよ。

「どうせなら、皆にあげた方が喜ぶのに」

言ったあと、小学五年生て飴で喜ぶのかなと思いったりしたが、ただ単に言っただけなので、まぁいいかと、すぐに思考の隅に追いやる。

「それはそうだが、そんなことしたら問題になるからな」

これは問題じゃないのか、と声には出なかった。




結局その場では受けとらなかったが、帰りに小袋に入ったものを手渡された。自宅に帰ったあとに目敏く気づいた母さんに聞かれ、今日あったことを話せば察したようにけらけら笑う。


「それは贔屓だべ・・・でも、よかったね悟?」

そのくだりは話していないはずなのに同じ意見が出た。
だけど、何がよかったんだ。八代と同じように含み笑いで見ている母親に心の中で抗議した。

子供だと思って!

「何言ってるだべか」

額に地味に痛いデコピンを喰らわされた。


・・・声に出てた。


16/4/6

- 29 -


[*前] | [次#]
ページ:



×