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まずは君の望む姿を演じてみよう




自身がいる間だけだが、テレビのニュースなど情報を開示している。あえて外の動きを知ったなら、どんな行動とるのかと試してみた。結果は、感情自制してこちらに従順。やりやすいと見せかけて、やりにくい。もう少し反応してもいいものを・・・罠だと思っているのかもしれない。

が、徐々にぐっと唇を噛み締めなにかを堪えている姿。子供の顔ではなく、辛い思いを隠した大人のような表情・・・戸惑い精一杯見ようとする。真意を探ろうとしていく。

(教室の中で一番大人びているのが賢也だった。加代も、まあ大人びていたが。あの子の方がまだ子供らしい表情をする)

それはある日を境に変化する前の、悟も。

流れる映像を見ている彼に、賢也たちの様子を伝えてみるか?突然、僕の口から彼の名前が聞こえたらどう反応する?

意図が読めても読めなくても、激昂するに違いないか。


『・・・』

ひっそり笑っていたら、胡乱な目でこちらを見ていた。




悟は、時折とても悲しそうな表情と恐怖が混じる表情をする。それから、どこか遠い所を見ているが、それとは別の意味が含んだように。

演じる必要はないと考えていた。それに通用はもうしないだろうと思っていた。

八代先生≠ゥらの父親¢怐B

利用するつもり、だった。
彼の一興一同を逃さず観察し、更に知ろうと行動をおこす日々。
当初の目的が、少しづつ変化するーーーこれは檻に閉じ込めた小動物を構う心境に近い。




学校に行かせないが頭は聡い子だと分かっているので、今まで通り勉強を教えることにした。丁度教師という職業をいかし、教壇とは言えないホワイトボードの手前で教鞭をとっている。学校で教えていた時とは違い、驚く早さで知識を吸収していく。学習能力が高く、これならもっと先のことを教えてもかまわないだろう。

『偉いな′蛛B次はここからにしようか?』

今日一日の予定範囲を教え終わると、開いていた教科書を何ページもめくり指で指し示した。現時点ではまだ習わない項目だ。彼の顔を見ると、いかにも言いたそうな表情をしている。からかうように近づき、ふざけているのかと目線が訴えてきた。

『学べる場があるのは良いことだ。それとも、今の君には必要ないかい?』
『・・・あんたの教え方がうまいだけだろ』

しぼりだすような声が聞こえて、はたり動きを止めた。苛立った雰囲気を感じる。

『褒めるなよーーーそんなこと微塵にも思ってないだろ』

ああ、予想通りの言葉が帰ってきた。真っ向から向けられる視線に、僕は彼が望んだ姿をしているにはほど遠いらしい。




今の僕の姿は、君にどんな風に見えている?

《いいものには、見えてないだろう》


17/1/22


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