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想像力は無駄に豊か(U)



「よし、この部屋は終わったな」

ぱたん、と扉を閉めて掃除し終わった部屋をメモしていく。

普段使っているところは少ないのですぐに終わってしまうから、鍵のかかったあの部屋以外のあまり使われていない部屋も掃除する。鎖や枷が外れて自由に動けるようになってから、八代に言われるまでもなく自主的に掃除するようになった。リバイバル前の俺とは大違いだ。いや、やることなさ過ぎて暇・・・ではない!八代の分析とか外への脱出とか考えている。こうやって掃除して家の中を調べているんだと主張してみる。


・・・異様に窓が少ないことしかわからなかった。出れそうな小窓には、防犯用と言い訳できる鉄格子がすべて設置している。大窓にも特注なのかつけられていてまるで檻のように感じた。

この家に人を招くことはないんだろうが、これはちょっと・・・普通に暮らしていたらいい家の部類に入るのに、監禁するのに都合がいいと考えるとガチすぎて気持ち悪い家だ。考えれば考えるほど鬱々して、脱出への道を探そうとしたら精神的ダメージ受けるって、積んでないか?

勉強して娯楽を楽しめている分気持ちを別の方向にむけれるから追い詰められている感が少ないが、ある拍子に八代の行動にゾッとすることがある。 前に絵が描きたくなって要らない紙にこっそり落書きしていたら、机にスケッチブックと色んな画材が一式揃って置いてあった。あらかさまにじっと見てきたので数日間、八代を避けた。

その描いた紙はゴミ箱に捨てていたんだ。ちなみに置きっぱなしになんてしてない。八代がいない間の俺の行動を、監視や探っているのは間違いないと思い知らされる。廊下にある電話に何度か連絡を取ろうしていたのも、見透かされているんだろうな。

「オリジナルの未来なら、高能性の盗撮カメラとかボイスレコーダーとかあるが、昭和の時代にそんなものあんのか?ンなもん、詳しく知ってるのもな・・・あーでも、漫画の参考になんでも調べておけばよかった。くそっ、便利なもんを知っちまった後だと不便だ」

ぶつぶつ言いながら、掃除してたらいつの間にか終わらせていた。細かい部分は気にせず大雑把な性格は変化しない。



クローゼットに掃除機をしまって、さて何しようかと考えていたら玄関が目に入る。
ここに来た初期に玄関は真っ先に調べた。もちろん開かなかったが。

「普通に見える玄関のくせに」

無意識にドアノブに手をかけて開ける仕草をしたら。



スローモーションのように外の光景が映った。

「え・・・えっ?・・・扉が開いて、る?」


なんとなしに触ったら、開いた。


外の景色は周りは木々に囲まれ太陽の光が降りそそいでいた。廃墟は幾つか。人が近くにいる気配はない。

外にでてみてもーーーここだけ隔絶した世界だと、まるで一人っきりになってしまった錯覚に、どこか遠くで動物の鳴き声が聞こえてはっとした。


「開いた・・・嘘だろ!?こんな、あっさりと!??」

俺の目の前に、ありえないと思っていたチャンスが現れた。


16/4/26

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