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奴はスキンシップだと言いはる


八代に監禁されてから半年くらい経った。

現状に進展はないが、暴行等如何わしいもの一切されていない。猥褻罪で訴えたい心境だが衣食住はちゃんとしている。
あたりまえだが窓などの入り口は子供の力じゃ中から開けられないよう封鎖されていた。通信・通話の機器は鍵をかけられた部屋に置かれているが、しばらくしてからテレビや本といった娯楽を与えられていた。

それに、学校に通っていたときと変わらず勉強も教える(そうだった。こいつ一応教師だったと再確認した)しかも中高大の教科科目も教えられるらしく、どれだけ頭がいいんだと苦い気持ちになる。リバイバルする前の澤田さんの情報や、一連の雛月の保護への動き、三人の殺害を阻止したとはいえ綿密な計画的犯行、人心掌握術といまさらながら得体の知れない厄介な奴に捕まっちまったと思ってしまう・・・犯罪者じゃなきゃ、才能のありふれた人だったのに、な。

気になるのは、勉強や本はともかく、ニュースも映るテレビを見せるなんてどういうことなんだ。唯一、外の手段を知ることのできるものだというのに。八代がいる時に堂々と見てても何も咎めれない。誘拐や子供の連続失踪等の内容のものがないことに安堵する。たまに俺のことがニュースで流れてきて、外にいる大切な人達のことや自分の状況に焦りを抱くが、何を考えているかわからない八代の瞳を見ると、すっと頭が冷え焦りが消えさる。この相手に何度も負けてきたのだ、へたに感情のまま動くわけにはいかない。

外の情報を見せることで俺を試しているのか反応を見ているのか、こいつの目的はまだわからない。沈みゆく車の中で、最後の足掻きで言ったあの言葉を何も聞いてこないしな。聞いてきても喋るつもりもないが。


長期戦になるだろうこいつとの関係に、俺は再度、決意を固めていた。


思考の読めない相手に、体をまさぐられたり両足を片方枷をつけられたり、耳元で囁くなど精神的に圧力かけてくる日々。親のような態度で、テレビを見てたら九時を過ぎるともう寝なさい言いリモコンを取り上げられたり。それを気にくわないと思いつつも、当然のごとく一緒に添い寝する男に、俺は負けるわけにはいかない・・・添い寝について散々抵抗したが、それを楽しんでるようなのでもう諦めた。





「ぎゃー!近づいてくんな!」

「はは、楽しいな悟。父親と子供みたいだろう?」

「監禁して、不純なことしようとしてくる父親なんか、父親じゃーねえよ!」

そして、現在進行形で風呂に一緒に入ろうと強引に脱がされかけ、身の危険(貞操)を感じて逃げまどっている。足の枷は外されていたのもあって、反射的に弁慶の泣き所(向こう脛)を蹴りあげ勢いで離れられた。しばらく蹴った箇所を抑えて八代は蹲っていたがそのうち復活してしまった。そのままずっとそうしてればよかったのに。

それから数十分はそうしているが、八代は俺と追いかけっこして遊んでるつもりなのか、本気ださなくても捕まえれるだろうに、捕まえにこない。何したいんだよこのおっさん!・・・中身二十九歳の俺もブーメランか。年齢についてはあまり触れないでおこう。

机を挟さみ防壁のようにしてこの雰囲気をどう打開しようかと、頬に汗が伝う。

「・・・悟、君と風呂に入ろうというだけで不純とは心外だ。第一、これでも僕は我慢してるんだよ?風呂なんてもう一緒に入っただろう、何をいまさら恥ずかしがる」

「最近テメーの行動が際どいんだよ、我慢している時点でおかしい! そういう問題じゃねえんだよ!」

いけしゃあしゃあと、学校で見せていた教師スマイルで言ってのけるが、本音を隠そうともしない。それで納得すると思っているのか。

「最近取り繕うこともなくなってきたな・・・いいから、こっちに来なさい。おとなしくしてるなら手荒なことはしないさ。僕はコトは慎重にするタイプなんでね、今は何も≠オないよ。それに君が想像してる厭らしいことが目的なら、最初、目覚めた時点で行っていると思わないかい?・・・僕は悟を大切にしてるんだよ」

そう言った途端に、甘い表情になる八代はこちらを真っ直ぐに見つめている。

一見、真摯に言っているように聞こえるが、これって俺が勝手に勘違いしていることにすり替えようとしてないか。そして、そんな表情してもときめかねーよ、無駄に顔立ちが整ってるからよけいに腹たつー!俺にそんな気はない!

そして、なにより。

「・・・今は何も=Hそれってつまり今後何かするってことだよな・・・なんのフォローにもなってない!」

甘い表情のまま笑みをたたえる八代は無言だ・・・肯定と捉えた。




痺れをきらしたのか、じりじり詰め寄ってきた。伸ばされた手に捕まりそうにより避けたが。つるっと足が滑り、受け身の体制が取れず思いっきり頭部を強打した。少し視界が揺れた。

「う、うおおっ・・・」
「自滅してどうするんだ・・・やれやれ」

頭を抱えて痛みに呻いていると、上から呆れた声とため息が聞こてきた。誰のせいだと思ってるんだ。その後、痛みで動けなかった俺は八代に容体を診られて、そのまま風呂に連行された。





結果。

何もされはしなかったが、全身を舐めるように凝視された・・・思わず尻を抑えたのは言うまでない。



16/4/10

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