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残された刀剣たち



鳴狐が珍しく怒っている。ついでに無口な方の脇差の彼も。無言の重圧がどんどん膨らんでいく。

お供の狐は冷や汗を垂らしながら感じた。


現実逃避をしながら目の前の惨状を見る。崩れ落ちて転がる者、今後どうしようかと考える者、すぐさま主殿を追おうとする者・・・とにかく刀剣全員。

『こんなはずでは』

な心境だ。

この状況を喜んでいるのは、見習い殿一人だけだ。


「三日月様、これからよろしくお願いしますね」

それに気づかず優美な笑みを浮かべながら瞬きせず硬直しておられる三日月殿に見習い殿が嬉しそうに話しかけた。見習い殿この空気に本気で気づいておられないのか。辺りは急激に冷えていってらしゃる。

お供の狐は、鳴狐の怒気を感じながらダブルパンチの空気に逃げ出したくなってきた。

硬直していた三日月殿がついに崩れ落ちた。三条派の方や鶴丸殿が駆け寄る。
それ以外の者も、彼にはみんな嫌がっていた役を引き受けてもらっただけに、かなり同情的な視線を寄越している。

唐突に三日月殿が壊れた。

「俺とて、あのように言うつもりなかったのだ。頑張ってる主を影から見守っていたというのに・・・いや、やはり主的には威圧的に聞こえたのだろうか・・・俺とて、目一杯甘やかしたかったのだ!皆の者が止めるから我慢していたというのに!はっ、そもそも主は俺を避けていた。ここに来るのは遅かったのもあるが、何故か毎回後退りされる。目線を背ける。顔が引きつる。もしやこの存在感主張してならない姿が嫌だったのか・・・嫌だったのかあああああ。山姥切いいい、その布を寄越せえええええ」

「は?え?駄目だ!?この布は俺のだ!それにあんただけじゃないからな!主が避けていたのは!俺だって俺だって!写しだからかあああああ。鬱陶しかったのかあああああ」

「爺さんそんなことしてたのか!?あああ、爺さんは悪くないからな!山姥切の布を引っ張るな!握力どれだけあると思ってんだ!」

「あの子は相当、三日月の存在に気後れしていたから。最近は、ましになったと思っていたんだが・・・」

「こら!いしきりまる、しーーー!」

「やはりかあああああああああ」

「石切丸君!追い討ちかけて、どうするんだ!」

発狂した三日月殿が山姥切殿の布を剥ぎ取ろうし、山姥切殿が自身の布を守りつつ同じく発狂。鶴丸殿が仲裁に入り、石切丸殿が火に油を投入する発言。今剣殿が止めるも、三日月殿畳をばんばん叩きながら荒ぶり燭台切殿が止めるという惨状が出来上がっていた。

何、この混沌。

お供の狐は、死んだ目で見ていた。


それから、鳴狐が感情を落ち着けたのか門の方へ動いた。もう一人の彼と目で会話し二人で行く。所々、主お慕い勢が動かなくなっていたが踏まないようにした。



間に合えばいいのですが、とお供の狐は思うのだった。



こんなつもりでは、なかった。なかったのだ。

みんな、彼女が頑張っていたこと知っている。



15/7/12

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