その他シリーズ | ナノ





どうやって攻略したか私が知りたい



朝早く目が覚めたら何か違和感を感じた。どこか別の場所に来たような居心地の悪さに、少しだけ戸惑いながらも気のせいだと思うようにした。

二度寝する気分でもないので本丸の中でも散歩しようかなと、気持ちを切り替え着替えようとした時、突然背後から誰かに抱きしめられる。

「わっ、え?鶴さん?・・・しかいないよね」

後ろを振り向かずとも、見慣れた白い着物と行動に鶴丸と検討をつける。現在も恒例の寝起きドッキリを仕掛けようと思って来たら、私が起きていたから背後から驚かす行動に替えたに違いない。後ろから抱きしめる行為は女子的憧れの王道シュチュエーションだけれど、常日頃からやられ過ぎてもう慣れてしまった。あれである。神様といえどイケメンに囲まれるという非日常を過ごしているうちに脳が麻痺してしまったんだ。そうに違いない。
・・・それにしても、いつまで抱きしめてるつもりなんだ。暑苦しい。


「あのさ、鶴さん、そろそろはなれ」
「・・・っ、きみは、江雪と俺をどちらを選ぶんだ・・・?」



鶴丸の頭上に、

《攻略対象レベル4》

という白い文字が浮かんでいた。どういうこと?

がちがちに抱きしめられているのを、なんとか後ろを振りかえった私。そしたら、白い頬をほんのり赤く染め蕩けたような眼差しで見つめる鶴丸。で、熱い吐息とともに呟かれた言葉である。どういうこと?

「鶴さん・・・、江雪さんがどうしたの?えらb」
「とぼけないでくれ、昨日の夜見たんだ。君が江雪に口付けしてるのを!」

なんだってええええええ!?

最後まで喋らせろやと思っていたら、さらなる爆弾発言がとびだす。
江雪さんと私の関係はそんなチューするような関係ではない、口煩いけれどなんだかんだ言いながら一緒にいてくれる兄のような存在だ。あちらも、手のかかる妹のように思ってくれてるだろう。なのに、なんでそんなことになっているんだ。昨日の夜といえば、山姥切が鍋を爆発させたとのと、こんのすけが酔った次郎さんに枕にされて死にそうになってたこと以外はいつもの日常だったはず。鶴丸のいう、事実なんてない。

「鶴さん、なんか誤解してない?というかそんな」

→そんな事実なんてない。貴方だけよ、口付けしたいのは
→そう、江雪と口付けしたわ。私はあの人を愛しているの
→国永、どういう経緯でそんな勘違いしてるかわからないけれど、口付けしたいのは貴方だけ、貴方は私を信じてくれないの?どうしたら信じてくれる?私の総てを捧げるなら・・・信じてくれるの?

今度は、白い文字で選択技がでてきた!?いやあああ、なんじゃこりゃああああ。なにこれ乙ゲー?乙ゲーなの?これはイベント?イベントの台詞なの?でてる台詞が酷い。私のキャラがブレてるうえどの選択肢を選んでもろくなことにならないじゃないか。どう足掻いても鶴さんになんかされるじゃないか。そして、三番目の選択肢、クソ長いうえにいかにも選んでも下さいと言いたげだな。選んだら、即効でRー18イベントに突入するじゃねえかあああ!

「君を抱いた夜、俺は確かに誓ったはずだ。《あいつ》のような存在になれなくとも俺は君を守ると・・・支えると!なのに、何故、江雪なんかに!!」

え、もうヤッちゃってんの!!?そんな記憶ないよ!?さっきの選択肢なんなんだよ!てか、あいつて誰だよ!!現在、わかってる時点で私、三股かけてることになちゃってるですけど!うち、一人はにゃんにゃん済、一人は接吻済・・・うわあ・・・(ドン引き)そして、最後の一人も鶴丸の口ぶりからして深い関係のようだ。死にたい。・・・これは夢?夢なのね?夢だよ!いつもの鶴丸と大違いだし!なんか変だし!

「なにか答えてくれ・・・」

苦しげに呻くように言う鶴丸に、現実逃避していた私の意識は連れ戻される。さっきから白い選択肢が主張するように視界に入ってきてるので、私は今起こってることを夢と判断して、怖いもの見たさで三番を選んだ。大丈夫、・・・夢だから。

そこから、ぱああああと歓喜の表情に変わった鶴丸に思いっきり押し倒された。うっとりした艶やかな笑みでどんどん顔が近づいてくる。なにこれ、怖い。えろい。

「鶴さん、今朝だし!誰か来たら!」

「見せつけてやればいいだろ?」

ぎゃあああああああかんこれあかんやつや!自業自得だけど誰か助けてー!

「うわあああ、そおい!」

私は耐えきれず、乙女の馬鹿力で外へ鶴丸を放り投げた。それから、襖を閉めて二度寝した。夢や夢!夢なんや!・・・私は欲求不満なのだろうか?





朝起きたら、寝覚めが悪かった。目を擦りながら廊下を歩いていたら背中をポンと叩かれた。ビクッとした。今朝の夢?らしきものがあんまりにもだったので、もしやと思ってしまったのだ。当分、鶴丸と江雪と顔が合わせづらい。幸いにもまだ遭遇してないけど。

「あのさ、主、僕の薄◯鬼のそふと知らない?ぴーえすぴーに入れてたはずなのにないんだ・・・」

「今日一番の一言がそれか」

話しかけてきたのは、大和守だった。そして、某有名乙女ゲームソフトを探しているようだ。

「周回ぷれいをしたい。今日は、休暇の日でしょ?時間たくさんあるし」

「やっすん、すっかりハマちゃって・・・沖田君恐るべしやで」

「そのあだ名?何度止めてと言えばいいのかな?首落ちて死ぬ?安定にしろってだろが」

「ぎゃああああ、頭もげるうううーー!すみません、安定!」

両手で頭を鷲掴みにされて叫ぶ。大和守が私に対して口調や行動が荒いのは、昔に色々あったからだ。その成り行きで、某乙女ゲームや某万屋漫画など幕末ろ◯くなどの様々な作品に出てくる沖田くんの力を借り、彼と今の関係を築いたのだ。

最初はこんなの沖田くんじゃない、沖田くんの存在を弄んでいるのかと斬りかかれそうになったが、沖田くんがもし転生したら前の沖田くんじゃないかもしれない、どんな性格になっているのかわからない。だから、この作品達にでてくる沖田くんを受け入れることが出来たら、きっと転生した沖田くんに出会えたら大和守は今の沖田くんがどんなになってても受け入れて愛せることができるよ。となんやらかんやら言って大号泣されて、色々あったのだ。そして、私。沖田くんを言い過ぎや。

「ふーん」
「お、どうしたの?」

気が済んだのか手を離す大和守、あれなんか雰囲気変わった?

「なんかそう呼ばれるのっていいね」

大和守がふんわりと微笑む。しゃらららんと何処かで音がなった。嫌な予感がして、大和守の頭上を見れば、

《攻略対象に変更されました》

と白い文字が宙に浮いていた。

イベントだったんかい、そして夢の続きかい?!・・・終わっていなかったんだ。

「主、今日暇?一緒に薄◯鬼探してくれない?あ、そういや《あいつ》のことはいいの?」

→いいわよ、でも沖田くんを落とすのかしら。私を落とさない?
→沖田くんのことばっかり!沖田くんと私どっちが大事なのよ!
→抱いて!

はにかんだように笑う大和守、しかし台詞が酷い。相変わらず選択肢も酷い。脈絡なくないか、これ・・・そして、三番目の台詞、今度は短くなったけど露骨じゃねえか!そしてあいつて誰だよおおお。
もうわけが分からなくなって、逃走した。




なんなんだ一体。鶴丸に続いて大和守まで。
物凄い疲労感をおいながら手入部屋へ避難する。誰もいないよかった。走ってる最中、他の刀剣にあったけど、白い文字があったりなかったり。じゃあ、あの鶴丸も実在するの?ou・・・

倒れこんで寝転がっていると、手入の妖精さん達がどうしたのーと近ずいてくる。君たちが癒しだよと、すかさず抱き込んだ。

「ああ、いた!何しているんですか?いくら、休みとはいえこんなのところに寝転んで、だらしないですよ!」

といつの間にか近くにいる、こんのすけに怒られる。うちのこんのすけは機械的ではなく、何処か人間染みた雰囲気がある。彼はもはやオカン2号だ。たしたしと前足で頭をはたかれながら、たしなめられる。

「こんのすけ〜聞いてよ。ちょっと、この世界変になちゃった」

「いきなりなんですか。貴女の頭がおかしいのはいつものことでしょう?」

「いや、私の頭じゃなくて・・・まあ、いーや。とにかく、こんのすけ。政府がまたなんかやらかしてないか即効で調べて」

「否定してください!自覚あるのがタチ悪いですよね、もう。て、政府がどうしたんですか?うーん・・・まあ、仕方ないですね・・・貴女は私の番いなので、深く聞かずとも動きますよ!では!」

「おお、さすがこんのすけ・・・え?」

意気揚々と駆けだすこんのすけの背中を見ると、

《攻略済》

と白い文字で書かれていた。



乙女ゲームのようになってしまった世界。
おかしくなった鶴丸の発言に《あいつ》
攻略対象になった大和守の発言にも《あいつ》
こんのすけの発言

背中の攻略済の文字。



「お前だったのかよ!」




この長い夢よ。早く覚めて。





→タチの悪い夢オチ
→パラレルワールド
→政府の仕業


15/6/10

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