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なんだかんだ良好

あの一件が解決して処罰も終わって本丸に帰ってきてから、私と刀剣達は緩やかに良好な関係を築けていっている。刀剣達や見習いさんにしでかしたことを考えると、転がりまわりたくなるけど順調です。

でも、まだまだ別の問題はあるわけで。





一緒に縁側で日向ぼっこをしていた骨喰藤四郎に、思いきって相談してみた。

「私に対する三日月の行動がわからなくなるんだよね」
「どうしたんだ?」

無表情のまま不思議そうにしている。雰囲気で感じとり、彼から私に向けられる感情の暖かさにほっこりした。これも心に余裕が持てるようになってから気づいたことだ。昔は少なくともそれがわかっていたはずなのに、どれだけ私は切羽詰まっていたのだろう。

(おっとまたネガティヴになるところだった。いい加減この面倒くさい性格を直したい、それが簡単にできてたらあんな事件起こさない・・・てまた言い訳してる)

「三日月がまだ怖いか?」

直球で問いかけてくる骨喰に、心の中で勝手に落ち込みかけた私は慌てた。

「怖くは・・・ブキ・・・ゴホンゴホン、まだちょっとどう接していいのか戸惑いはあるけど、前よりは普通になったはず?・・・なったよ?あのさ、実は三日月に頭撫でられたり、持ち上げられたり、万屋に買い物に誘われたり・・・はては、岩融が今剣に肩車してるのを見てしてこようとしてきたりして、今までと全然違うからなんか審神者に対するようなことではなくて、いや私なんかが主ぶるなんておこがましい。でも、一応主従だし・・・とにかく!三日月がわけわからん!」

何が言いたいのかわからない。答えようとしたがなんか微妙になってしまった。
しかし、今の言葉でも骨喰は理解したらしい。心当たりあるような雰囲気だ。


「主様、今不気味て言おうとしてましたよね?」
「断言できないのか大将?他者に行きかいが少なくないところで、話すのもどうかと思うぞ」

薬研に指摘されて思わず口を押さえる。ここは頻繁まではいかないが、結構人通りが多いところだったと思い出す。

かわりに聞こえた声は背後から、籠の中に収穫してきたであろう野菜を持つ、笑いをかみ殺した表情をする鯰尾藤四郎と苦笑した表情をする薬研藤四郎が居た。どうやら彼らも言いたいことがわかったらしい。理解力ありすぎる男士達に、私は色んな意味で部屋に篭りたい。でも、変わろうと決めたのだ。




「今のところ俺たち以外見かけませんでしたけど、三日月さんにでも聞かれたりしたら愉快なことになりますよ〜」

持っていた籠を下ろし、骨喰の横に座る鯰尾。薬研は鯰尾の隣にある柱に寄りかかる。骨喰が自然な流れで、私と骨喰の間にあった急須と湯飲みを持ち、お茶を入れ鯰尾に手渡した。ありがとうと言って、あたりまえのようにそのお茶を飲む鯰尾。ちなみにその湯飲み骨喰が使ってたやつだ。この二人が仲が良いのは知ってはいたけど、そこらへん細かいところ気にしないのね。薬研がはそれを眺めていた。

兄弟も多いのも関係しているのか・・・こうやって、この本丸の刀剣男士の関係がちらほら見えるようになれて嬉しかったりする。






今まで私なりに彼らのことを見ていたつもりではあったが、まだまだ知らないことばかりだ。

「大丈夫だ、大将」

無言で二人を見る私に、薬研が唐突に言う。恐る恐る顔の方を見た。

「焦らなくていい」

・・・やっぱり、彼らは優しい。騒動を起こす前と変わらない表情で、微笑っていた。



「ところで、さっきの返答」

骨喰が思い出したように言った。

「三日月はお前を可愛がりたいんだ」
「え・・・えええ?!」

骨喰の返答に硬直。つかの間のしんみりとした空気がぶっ飛んだ。それは、まさか。いやいやいや、それはないだろう。

「三日月て、私のこと、そんな」

「骨喰短い!大事な部分を省いてどうすんの!」
「三日月の旦那は、大将を孫みたいに思っている」

骨喰の表情はあいかわらず変わらない。なんで、そんな動揺してるんだと言いたげではある。ぎょっとする鯰尾に、すぐさま訂正をいれる薬研。こちらの兄弟同士も仲が良くていらっしゃる。

「ま、審神者と刀剣男士の関係を考えればどうかと思う部分もあるが、大将が旦那に対して緊張して避けていることに凹んでいたんだ。うーん、親愛を拗らせすぎたもんか?諦めろ」

「ああ、そういうこと、び、びっくりしたーーーじゃない!三日月てそんな感じだったの!?じゃあたびたび茂みから、こちらを監視してたのって見守ってたりしたの?!諦めろてどういうこと!?」

「あの天下五剣、そんなことまでしてたのか」
「我が本丸の平安刀、主様の奇行が似てもろに影響してますよね」
「そんな太刀だ。安心しろ、旦那は大将のこと大好きだぜ?」
「旦那の行動(茂みの件)には、気づいていたんだな?」
「あんなそこにいるだけで発光してる存在だよ。そりゃ、わかるよ。茂みじゃ到底隠せないよあの存在は」
「(大将の目線からしたらそんな風に見えてのか)声かけようと思わ・・・ねーか」
「怖すぎて、必死に気づかいないようにしてた」

「・・・」
「悲しいすれ違いだ」
「口端が引き攣っているぞ」

連なって聞こえる言葉はフォローしてない。全然してない。返答になってない!相談してみたが、更に頭を抱えるはめになった。





「俺の話をしているのか?」
「ぎゃあっ」

言葉を発する最中に反射的に悲鳴をあげる。噂をすればなんとやら、ごく自然の流れで背後に降臨する三日月宗近。気配を感じないのは慣れてきたが、不意打ちはそろそろやめて。

「主、俺を化け物とでもまだ思っているのか」
「三日月が現れるからだ」
「骨喰その言い方だと色々たりないから」
「はっはっはっ、普通に登場しても主は逃げるではないか」

骨喰の物言いに慣れているのか、さらっと返す三日月。鯰尾がフォローの態勢に入ろうとしたもののどうやら必要ないようだ。

「三日月の旦那。自信満々に言う事じゃないぜ?」

呆れたような薬研に、和やかにドヤ・・・自信満々顔で言っていた。

「まあ話は戻して、主は俺のことがまだ怖いのだろう?それは、まだ距離が遠いということ・・・つまり圧倒的にすきんしっぷ≠ニいうやつたりないからだ!こういう時はひとまずはぐ≠すればいいと思うぞ、と鶴丸が言っていた」

「つ、鶴丸ーーー!なんて余計なアドバイスを!あなたのその唐突な行動が怖いって言ってるんですけど!?」

おもむろに両手を広げて満面の笑みでウェルカムポーズ。私はそれを見て引きつる。なにが、つまりだ。青年の姿(超美形)をしている三日月に抱きつくなんて、そもそも私にできるとでも思ってんのか。ああ、やめて!その期待に満ちた目で見るな!

「鳴狐ならいいのか?初期刀といえど騒動の最中、至近距離まで近づいたと聞いたぞ」

悲しそうな顔する三日月に、鯰尾と薬研がギョッとしている。

「いつの間に、鳴狐と!?」
「ふーん、それは初耳だな」
「ああ、アレか」
「!?」

視線が一気に集中して、悪癖の逃走が発症しそうになる。三日月に語弊がある伝え方したの誰だ!

「骨喰兄、ちなみにそれはどういう状況だったんだ?答えられる範囲でいいからさ」
「・・・?たいしたことじゃない。壁際に追いつめてーーー」
「骨喰これ以上誤解をモゴッ!?」
「大将、声量おとそうな」

薬研の顔を見ると知ってて、わざとやっている表情に見えた。以前は頼もしく引っ張っていてくれる印象があった。今では、こんなイタズラっ子のようなまねをする一面を見れるようになって、距離が近づいてきたこと喜んでいいのか・・・。


おかまいなしに話は進行していく。

「で、骨喰。真相!」
「参考にしよう」
「三日月さん、参考にしても逆効果なんじゃ」

「ーーー腕の中に閉じ込めて壁に腕が貫通していた」
「ん?最後おかしくない?」
「どうせ逃げようとした大将を、鳴狐が捕まえたらたまたまそんな格好になっちまって、勢いがありすぎたのか壁が腐って脆くなっていたあたりか?で、その様子見た誰かが少し話を盛ったところか」

「ふむ、そういうことか。乱が言っていたこととはやや違うな」
「み、乱れえええちょっと行ってくる!」

畑当番だから本丸内にいるはず。
乱に抗議する体で、その場から逃走する。やっぱそうそう変われないもんだ。こんなことを何度も繰り返しながら、私たちは近づいていくのかな。








「やはり逃げられたか。どれ、俺もやってみるか」
「三日月さん、絶好調」
「この前の件で思いっきり吹っ切れたようだ」
「旦那。あんたなら壁、粉砕できそうだからやめとけ」



「ーーーしかし、主に対する俺の行動止めることはなくなったよな?」
「こっちから強引に接触していくくらいが、ちょうどいいってわかったからな」



なんだかんだ関係は良好なのである。


17/2/25

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