その他シリーズ | ナノ





もう一度初めから始めよう五



弟たちからだろうか。
演練に行った先で、よその刀剣たちから本丸見習い研修について妙な噂を聞いたそうだ。

見習いの者が本丸を乗っ取るんだって〜
乗っ取るて?
さあ?主さんに成り代わるのかな?
ええ!そんなの嫌です!
あくまでウワサだよー?
もしここに来る方がそんな方ではないといいのですが・・・

その話が本丸内を駆け巡るころには尾ひれが少しづつ積み重なり、大半の刀剣の見習い研修への認識が色々な要素を絡んで手のつけられのないこととなった。それを気にしない者いたが。

そんな噂が密やかに囁かれていたある日、審神者の朝の報告でこの本丸に審神者見習いの人間が、一ヶ月ほど研修に来るということを知る。短く告げられたその内容に衝撃を受けた者、ごく一部の話が誇張されたものの微妙に知ってしまってるぶん衝撃は各々が受けただろう。

本来なら、政府や審神者たちのなんらかの事情だと、以前なら誰も気にしてはいなかったはずだった。



夜も更けて広間には小さな騒めき。審神者を除き刀剣達は極秘で話し合いが行われた。

『今朝の主からの話しより、この本丸に見習いが研修しにくる』
『あの見習いが遂に来るか』
『ついに、か』

『見習いってあれだろ!?あれ!!主さんの皮を剥いで成り代わるんだろう?!主さん守らないとな!』

口を開いたのは浦島虎徹。蜂須賀虎徹が大きな声だと諌めている。
たしか遠征に出ていたため、今朝の報告は聞いていなかった。それよりもどういった経緯で歪曲されたのか、当初耳にしたものとはまったく違う話に変貌している。

『そんなことするんならもはや化け物じゃん!浦島、突飛すぎ!』

『俺が聞いたのは、謎の悪臭放って刀剣たちを自由に操るらしい』

『っ・・・骨喰もそれ誰から聞いた?』

浦島の発言に兄弟の鯰尾藤四郎は笑っていた。
兄弟は歪曲されてるとわかっていながら、おもしろいのか便乗しているように見えた。俺はそれのどこが面白いのかわからない。この流れは自身が聞いた噂話を報告すればいいのかと、そのこと言うと兄弟が腹を抱えて動かなくなった。楽しそうだな。

『匂いが酷くて皮を剥ぐつーの?居てもごく一部だろ?』

『ごく一部でも存在してるなら恐ろしいよな!』

『肩に鵺を乗せてるお前に言われてもなー、あと練度が三百あるとかないとかか?』

更に興味無さげに呟く同田貫正国。ごく普通の反応の獅子王。さりげなく言う御手杵と好き勝手に発言しはじめ話が収集つかなくなる。

『貴様ら、ふざけてないでちゃんと話を聞け!』
『ふざけてなんかないよー!』

『長谷部くん、浦島くん!しっ!主が起きてくるよ!?』


先入観は駄目だよなと声を潜めて口々に話し合う刀剣達に、へし切長谷部は深いため息をはいていた。盛られた部分を除いてもあの噂通りのことがこの本丸でも懸念されている。


心配も仕方ない。ただでさえこの本丸は審神者との意思疎通が上手くとれていない。それでも審神者と刀剣男士との均衡を保っていた。
杞憂に終わるといい。




研修に来た見習いは噂で聞くものとは違っていた。至極真面目に研修に取り組み研修先の刀剣とは適切な距離で接する。見習いの研修ではあまりやらないというが、戦の指示を研究してきたのか勝率の割合も高かった。司令官としての才能があるんだろう。


『と言うより、話を盛りすぎた感じ?』
『面白いおかしくせさていたのは、あったかなぁ』

『それにありゃ凄いわな。お偉いさんの箱入り娘と聞いてたが戦での指示、中々たいしたもんだ』
『・・・兼さん。絶対にそれ主さんの前で言わないようにね』
『は?!言わねーよ!』

『それでどうのこうのと動きはしないが、予測できない行動をとるからな』

出陣から帰ってきたのか入り口付近で、新撰組の刀たちがそう話しあっていた。


穿った見方をしていた者もいたが日が経つにつれ、誠実な見習いの態度に認識を改めていく、あの長谷部も認めていた。逆に厚意的に見るようになり、見習いが本丸を持てる審神者になれるように様々なことを積極的に教えて協力的になっていった。心配ないと判断した弟たちも見習いの負担にならないように配慮しつつも、交流の一環として遊びに誘ったらしい。見習いもそれを快く承諾して休憩中に遊んでくれるそうだ。

見習いの滞在期間は一月。日々、研修は平和的に行われている。


『問題なく良好な関係を築けるのはいいですが、この流れが少しばかり気掛かりですね』
『何も起こらなければいい』


審神者室にこんのすけと閉じこもる審神者を、鳴狐とお供は心配そうに話していた。


こんのすけに審神者の様子を聞こうとした矢先、審神者が不審な行動をとっているところ目撃した。

やけに身辺の整理をしていたり挙動不審に絡繰の箱を覗き見ていた。怪しく思い問いただせば、ごまかしているつもりか話をそらす。やましいことをしていると目が泳ぐ。それで何か隠しているのか気づいてはいたが、だいたいいつも通りかと様子見で判断しかねていた。

『まさか主殿、審神者をお辞めになるつもりはありませんよね?』

『そんなまさか!行動がともなっていませんしぐだぐた言っていますが、意思疎通能力をなおしたいとおっしゃるほどですよ』

『なおしたい・・・希望ですか?』
『まだ思っているだけでも』

はあ、とため息が重なる二匹の狐。


『勘違いしてる気がする』

側で会話を聞いていた鳴狐の呟きが、この後に起こる騒動を暗示していたんだろうか。



16/3/27

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