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もう一度初めから始めよう四





「オラッ!」
「野生ゆえ!」
「縛りあげる!」

見事な連携を発揮し、相手の刀剣方を荒縄で縛りあげていく三振の刀。普段こそあまり接点などないはずの刀たち。ここぞという時に思わず感嘆させる様を見せた。

おろおろした鳴狐と、胃を抑えたお供が背後にいた。その連携についていけない、少し引き気味の山姥切国広が、縛られた刀剣たちの保護にまわっていたため手伝いをしている。

そうはしても練度の差なのかあっさりと捕まえられるものなのだろうか。
ただし短刀や脇差にまでしようとするものなら、こちらとあちらの保護者たちの視線が突き刺さっている。兄弟たちも意味ありげにみている。

相手の様子は不思議と敵意が感じられない。むしろ呆れと疲れが含んでいるようだ。

俺も手伝うべきだなと動こうとした時。


「これはすごいな」
「感嘆してる場合か!」

いつもの様に茶を飲みながら感嘆したように言う鶯丸が、無数のたんこぶをこさえた鶴丸国永に叱られていた。

「・・・?なんでたんこぶなんか出来ているんだ?鶴丸」

「そこに食いつくのか!これは、様子のおかしいあの爺さんの巻き添えをくらったんだよ。思った以上に衝撃受けて暴走しちまっててな、予想つかない行動とるから対処しきれない。こんな時にだいたい暴走するのは俺の特権だろ」

鶴丸のその発言により、真面目な性分を持ちあわせていたなと思ったが、最後の余計な一言で台無しな気がする。

「この件に入ってから大人しいと思っていましたが、お願いですから貴方まで暴走なさらないように」

少し黄色疲労を浮かべた粟田口長兄の一期一振が、いつものように柔らかな声で言った。その横には無言で頷く江雪左文字もいたが袖の袂からちらりと荒縄が見えた。気のせいか。

「今回の襲撃のきっかけは爺さんだぞ!これはもう迎えじゃないだろ?」
「確かに。もう既にここの本丸に手をだしていますし」
「それにしては、随分と大人しいような。話で聞くと荒れていると思ったのですが・・・」

兄弟もここの本丸のことに気づいていたようだ。

本丸の内部は廃墟のように荒れてはいるが、話が通じそうにもこんな所業を現在進行系で行っている俺たちと話すだろうか。

「では、落ち着かせようとするか」

やる気をだしたのか鶯丸がその場に近づいていった。



16/3/27

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