その他シリーズ | ナノ
もう一度初めから始めよう二
しばらくしてから彼らはひとまず刀剣たちが集まる広間に行くと言った。手入の完了を伝えに行くそうだ。
それと入れ違いに、こちらのこんのすけがたったかと走って駆け寄ってきた。
「ようやく担当者殿と連絡が取れましたよ!どうしても繋がらないので、非常事態用に作っておいたコードで試したところ、こちらは大丈夫でした。今までの事の原因と現在の状況について話ましたが、すぐに対応して下さるそうです。ただし、こちらにはまだ迎えには来れないそうですよ」
「え!?そこまですんなりいったんだ!」
「それはですね、途切れる直前まで審神者様と連絡していたこと。その途切れ方が不審なこと。もうすでにこちらにたどり着いているはずが一向に現れないこと。彼の部下から一部の人間が妙な動きをしていたという報告があったことで、なんらかの原因に巻き込まれたかもしれないと思い調べていたそうです」
私は驚いた。 安堵した表情で伝えてくるこんのすけの話は吉報。今後最悪な展開も考えていた。だいたい知っているこういう案件はなかなかすんなりとうまくいくことがない。それなのに連絡が繋がればすぐに対応してもらえるなんて。それいうと、そもそもここの本丸と話をついたことも、ね。色々と巻き込まれはしたが、それの対応が思ったより早すぎて安心はするんだけど、なんか妙に不安を拭えない。これ以上、何も起こらないよね?
「そこに、こんのすけの連絡で、決定的になったと?」
「そのようですね。今回の件は政府の者が関わってることがわかったので、もうすでにこの件を上に話しているそうです」
「それを踏まえて、審神者様。担当者殿から言伝です」
「言伝、て」
「今回の明け渡せ命令は、一部の政府の者の独断。よって正式な手続きをしたわけないので、迎えに行ったあとは元の本丸に戻れと促されるはず。これが、上の判断です=E・・ということです」
「ええええええ?!」
人手不足の審神者業界で、すんなり審神者であることを辞めれるとは思っていなかったけど本人自覚済みの私の行動はかなり問題だろう。直前まで担当者さんにそれも話したし、それをあえて言わない人じゃない。 もしかして、監督不行届で担当者さんに責任が!?
「そんなに驚くことですか?確かにあなたの今回の行動は大有りですが、それで審神者を解任されることはありません。それと普通なら担当者殿も審神者殿も責任をとされます。ですが、今回の件は前々から目をつけていた輩の仕業なのでお咎めなしに」
「前から?わかってたんなら、なんで捕まえないの・・・あと、私が言うのも変だけど。それでいいんかい時の政府は。でも、担当者さんは私のせいで責任とらなくもいいのはよかった」
「大きな組織というのはね、色んなものがありすぎてなかなかそうはいかないんですよ」
声が単調なのと、いつもの無表情の顔で呟くので、彼は相当お疲れのようだ。疲労を蓄積させてんのはテメーだとも言われかねないので黙っておく(もうすでに視線で訴えかけてきてる)
「・・・私は、三日月に主をクビにされたよ」
ここまできても、審神者を辞めたい気持ちは変わらない。でも、もう、本丸を出た時の開放感は既に無くなりつつある。
「定期的な調べで、あなたの本丸運営になにも欠点はありません。本丸の成績も常に上位です。多少のコミュニケーションどうのこうの言われても本人たちにしかわからないものです。それはまた別で話し合えとしか言いようがありません。 それにーーーよほどのことがなければ、刀剣男士たちの意思で審神者を辞めさせることはできません」
その言葉はなにかに重くのしかかった。
重い雰囲気の中、こんのすけにまた連絡が入りを席を外す。去り際。
「審神者様。
三日月様は本当は何をしたかったのか。
それに、鳴狐様があなたがこのような行動とっても見捨てるのか。
貴方は彼らとしっかりと向き合うべきです」
そう言ってるわりに柔らかさを滲ませた言い方で、もうどうしていいのかわからない。
周りにいた妖精達がどうしようもないなと、頭をよしよし。いつもならその仕草に喜ぶけど今は何も思えない。
最初は審神者を辞めたいからそれらを利用しようとした。 ちろりと脳裏に何度も彼らはもしかしたら私を必要としてくれてるかもしれない≠ニ思ったけれど、ただ、ひたすら逃げだしたいという気持ちが強くて、直接向き合うのが恐ろしくて、三日月のあの言葉がすべてだと。
「なあ、あんた」
「ひっ」
誰もいなかったのにいつの間にか、近くにここの同田貫正国がいた。
「あの話し合いの時には口を挟むつもりはなかったけどさ・・・あんたはそれでよかったのか?」
思いもしない言葉にびっくりした。
かなり失礼かもしれないが、彼がああいう話し合いの場に同席しているイメージがなかった。前の本丸の同田貫正国とここの本丸の同田貫正国が少し違うからと言われたらそれまであるけど。とにかく、その時点で私は彼が少し違うと思っていたがーーー。
話し合いの席で見た鋭い眼光のまま、彼は言った。
「それは、」
「あんたのことは俺たちになんら関係ない。どうしようと知ったこっちゃねーが、粟田口の連中を手入れしているときのあんた、充分・・・審神者だったよ」
どストレートに伝えてくる言葉。
なぜ、彼が今そんなことを言うのか、手入れずっと見ていたの、かと(それは監視か)
「俺が言えることじゃないが。
いつまでも逃げるなよ。向き合ってやれよ」
容赦なく斬り込んでくる言葉は彼の性質そのものを表しているようだ。
「あの、どうして、そんなことを」
「・・・余計な世話だったな。そう思ったから伝えただけだ」
バツ悪そうにああ言わなきゃよかった、というような表情をしている。
それでよかったのかと聞かれて、私はすぐに返答を返せなかった。
本当によかった?
清々しい気持ちは本当だ。だって私は審神者に向いていないんだ。
まとまらない思考にさらに、新たな混乱がやってきた。 本丸の入り口付近から雄叫びが手入部屋まで聞こえてくる。
その声を聞いて全身から血の気が引いた。
16/2/21
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