その他シリーズ | ナノ





もう一度初めから始めよう一



口論の最中に聞こえた。

何処か聞き覚えのある男の声で、現状を思い出した私達。




その声が聞こえた後に、あちらのこんのすけが話し合いをしてみないかと提案をしてきた。

それに私とこんのすけは罠じゃないのかと疑った。しかし、このままずるずる立て籠もる訳にも行かない。なるべくどちらも不利にならない条件を提示して話し合いの場を設けた。 はたしてこちら側の要求をすんなり受け入れてくれるのかと思ったが、それは意外とあっさり承諾される。

こんのすけ同士が先に話しあい、結界をはった部屋にあちらのこんのすけと代表として刀剣一振。こちらのこんのすけと私と妖精さん達。
わざわざ結界をはった室内に招くというのも意味ないようなとも思うが、自分たちにとっていま安全な場所はここしかない。

この話し合いの場に刀剣男士を一人同席、本体は中に持参しないと決めた。

あちらの刀剣さんは丸腰。でも、いざとなれば正式な審神者じゃない私なんて物理でいけるよな。

だ、大丈夫、そもそもそんなこともうしないと約束してくれたはず。たぶんダイジョウブ。同席した刀剣男士が少し意外だったけど。


『えっと・・・つまり?貴方がたはここへ引き継ぎにきた新たな審神者ではないと?』

「ええ、そうなりますね。強引に連れ去れられここへ放り込まれたのです」

『それは、わかりました。私たちこんのすけ≠ノ搭載されている情報共有コードを照らし合わせてもその様ですね』

「貴方がたはその、不当な扱いを受けていた本丸で間違いないのですね」

『・・・はい、誤魔化しようもないですし。先ほどの件もあります。あの、それと、まことに言いにくいのですが・・・』

「気になることは聞いて下さい。情報データだけでは計り知れないこともありますし。私たちも此処のことも詳しく知っておきたいです。近年、一部の本丸の運営が問題視されて対策が難航しています・・・そちらの担当者殿はもう信用できないことが発覚しているので、こちらの担当者殿と連絡が取ることができるようになれば、ここの本丸の現状を伝えることができるかもしれません。はっきり断言できないのが申し訳ないのですが」

『いえ、此処を管理する担当者をはじめ、揃いも揃ってアレなものですから。少しでも現状が良くなる可能性があるのなら、朗報です。で、その、そこの審神者様はその、』

片方ははきはき喋る管狐ーーー纏う雰囲気は仕事に疲れきったサラリーマンのよう。
もう片方は少しぼろぼろになっている管狐、やっぱりどこか疲れたような、もう人生に疲れた雰囲気を纏っている。下からなんとも言えないようなあちらのこんのすけの視線と、こちらのこんのすけの呆れたような視線がダブルに、ガンガンあたってものすごく居心地が悪い。

この本丸のことについて、私たちがここにきたざっとしたなりゆきと、ここはいわゆる正常に運営していない本丸(ブラック本丸)かどうかと尋ねたところ、そう返答。

なんだか肩透かしくらうような感じ。さっき必死で逃げたのはなんだった! ・・・よくよく思い返してみれば、反射的に逃げてしまったのがいけなかったのかな?言い訳として真剣迫ってきたので逃げたと供述しておく。

「大変情けないのですが自業自得といいますか・・・なんといいますか。言えることは、刀剣男士様方を傷つけることは無いことと、この本丸の審神者になることはないです」

『わかりました。そのことについては置いておきましょう・・・もうこのさいあなたでもいいです!正直不安しかないですが・・・お願いします。刀剣男士様達を手入れしてください!』

「手入はするよ、え!このさい=I?なんか失礼なこと言われてない!?」

「札や資材の方は?」

『前任者達が鍛刀用にとっておいた資材から、手入用のものをこっそり死守しています。あとは、まともな手入ができる審神者の来訪がなく・・・』

「大方の審神者は手入はできるはずですが、目的がということですね・・・二年は審神者をしていたので手入はそこそこできますよ」

『おお、ありがたい』

ぽんぽんと会話する狐達は、先ほどのことなどとうに置いてさくさく決めていく。私の発言はスルー。もはや審神者の権威とやらもない。別に気にしないけどよ!それから、こんのすけの微妙なフォローに撃沈。本丸から逃げてきたのでもはや何も言えない。大人しくもう黙る。

・・・前はもうちょっと機械的一面の方が多かったけれど、ウザがれるほど絡みすぎてだいぶ態度も柔らかく(?)なったこんのすけ。普段話している時は人間染みた部分が大きすぎて気にしてなかったが、こういった場合の切り替えの早い。

こんのすけの尻尾見つめるふりをして別なこと考えてるけど・・・それよりも、ずっと黙って聞いているこの本丸の同田貫正国の鋭い眼光が怖い。いい加減、鋭く突き刺さる視線に耐えきれなくなってきた。ガンとばされているの!?


ーーー結局この話し合い、彼は始終無言だった。




手入部屋の一室。

部屋の外にかけられた時間を確認すると、もう少しで手入が終了する。最後の一振りにて、この本丸にいる軽中重傷を負っていた刀剣達が、万全の状態へと戻るということになる。 特に短刀たちの外傷が酷いもので見たときは、重傷を負って戻ってきたあの出来事≠思い出した。ここまで酷い傷を見たのは久しぶりだから意識がトビそうだった。

手入をすればすぐに治る外傷だとしても、その痛々しさは見慣れることはない。



手入が終わるにつれ心なしか本丸の空気が少し和らかくなったような気はする。

護衛代わりの刀装兵(銃兵)や鍛刀の妖精達がついてくれてはいる。そんななか、ずっと気を張っていた緊張感が緩み、はーーーと息をはきだした。これで彼らの条件はすべて達成させた。後はここの本丸の審神者問題のこと。こんのすけが何度か政府や担当者さんに回線を繋いでるけど、なかなかうまくいってないようだしな。

「あの・・・」
「ひいっ!」

背後から音もなく現れた一期一振の登場に悲鳴をあげてしまう・・・そういえば、自分の感覚が鈍いのか、彼ら気配を消すのが得意なのか、前の本丸でもこんなことよくあったなと、いまさら何を思い出しているんだ。

「その・・・そう怯えなくとも、手荒な事は致しません」

「へ、へい!へへへ!ダイジョウブッス!ゼンゼンキニシテナイッス!」

挙動不審で全然ごまかせてないことも気づかないふりをして、変わらない表情の一期一振に用件を聞くことにした。その穏やかな表情がかえってコワイデス。

「ところで何かご用でしょうか?もしや、何か不備はがありましたか!?」

「い、いえ!不備などは決して!・・・弟たちの迅速な手入、本当にありがとうございました」

直立不動で綺麗なお辞儀に後ずさり。

「いえいえ・・・ハハハ」

(ここブラック本丸なんだよね?噂に聞くハードなブラック本丸での刀剣の行動・・・私、それ関係の話見すぎかなぁ)

彼らが約束を守ってこちらの安全を保障し、一期一振含めここの刀剣達が比較的穏やかに対応してくれていることに、先入観があるものの当初との差に困惑する。


このままどうしようと思っている時に、ちょうどよく小さな完了音が鳴る。

手入部屋から傷の治った短刀がでてきて、一期一振に控えめに抱きついた。彼も優しい微笑みを浮かべて短刀を抱きかえした。 短刀の姿を見て安堵した雰囲気に、その光景に少しだけ当たり前のことだけど、いい事したような気がして嬉しくなった。

ここの本丸がなんにせよ、今はそれが重要じゃないと思えた。前の本丸の粟田口の刀剣たちもこうやってよく・・・いや、もう関係ない。



16/2/21

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