その他シリーズ | ナノ





自覚はあるが何かがたりない




ばたばた、ばたばた。
離れの中、土埃舞うも外部からの危害を防ぐため結界をはっていた。



(お、終わった・・・これでしばらくは大丈夫か・・・それにしても)

心臓はあいかわらずばくばくしているけれど、せわしなく動いているこんのすけの姿を確認すると、落ち着く気がする。

まだ政府の方には連れてきた子達やこんのすけのことを連絡入れてない。報告するべき事を放棄したのが・・・結果的に命拾いしたと思うことにしておく。

(いけるかな怒られるかなと思いつつも、なにはともあれ連れてきて良かった)

大丈夫、この場にいるのは私だけじゃない。





担当さんに連絡がつき事の経緯を喋ってる最中に何者かに殴られ昏倒。気づけば覆面を被せられ縛られ、こんなデンジャラスな所に文字通り放り込まれた。その後、縄はこんのすけが噛み切ってくれて動けるようにはなった。

それから、電話は通じずゲートは開かずそこでドコドコ門を叩いてたら、屋敷から出てきたここの刀剣男士に(襲われ?あ、そういえば、あちらにもこんのすけっぽいものがいたような?)追いかけられ、この中に逃げこんだ。

・・・某少年名探偵のように体が縮んでなかっただけがましなのかな。この審神者だの刀剣だのがいる世界のことを知らなかったらそれもただの空想だと思えたけれど、何が起こるかわからないところにいる。想像を遥かに超えるこちがおこってもおかしくない。例えば、大勢の人外のイケメンと一つ屋根の下とか☆・・・へへ、実体験済みだよ。

とにかく、そのせいで私自身さっぱり理解してない。本当にどういうことだってばよ。





先ほどのこんのすけの言葉を思い出す。

それが、いえ、しいて言えば。ご自身の思い込みで刀剣男士様や私にちゃんとした相談もせず本丸をあっさり明け渡したことでしょうか。審神者様!少しそこに正座しなさい!私は、こんのすけはですね。もうものすごく怒ってるいるのです!審神者様が着任した時から共にいましたしこの二年間において貴女の性格は重々理解していた・・・つもりです。なのに今回の件といったら!初期刀である鳴狐様や補佐して下さっていた骨喰様にすら告げず、この有り様は・・・なんですか!この、もう、おたんこなす!なんにせよ一時凌いだのでこれからのことを考えるのが先です。まず、はっきり言います。現実逃避することも、ふざけてる時間もないですよ。かなり危ない状況ですよ・・・!畜生、あの豚役人供が

錯乱していた私はそのまま思ったままに言えば、当然のことですがこんのすけにお説教された。マスコットのような姿をしたこんのすけも、全身の毛を逆立てて怒る姿を見ると人間臭いよな。管狐らしいが。ここで、私のせいなの?と言うものなら容赦なく尻尾ビンタだな、と思い黙って正座して聞いていた。

でも、こんのすけは頼もしい。語尾に不穏な台詞があるけど。

「不思議なことに今、貴方の考ええていることがわかります。こんのすけ≠熕R神者様によって少し性質も変わるようですしあなたの影響なのではないですか?と答えておきます。
しかし、あああ。すべて貴女の所為ではありませんが、ありませんが・・・この被害妄想審神者があああ」

「ぐはっ!」

結局、こんのすけの強烈な尻尾ビンタを食らう。なんでや。

「うう、担当者さんはいい人だし、ロクでもない一部の政府側のせいで悪いイメージついて苦労してるらしいけど、連絡がつかない門は開かない、これって計画的犯行?被せられてた覆面、視界と音が遮断されてたからいまいちわからんし」

呆れたようにため息をはくものの、それについて手提げ袋の中でバレないように潜んでいたところ、彼らの会話からするに以前から考えられていた独断的な犯行だと会話により確認した、と言う。 なるほど、最初から仕組まれていたということね。で、まぬけな私がひっかかったと。

「それから・・・審神者様、その明け渡せ指令ちゃんと担当殿を介してですか?重要なこと確認しましたか?それに、政府からの伝令も請け負う私に話がいってないなんておかしいですよ。本当に・・・気づいてなかったんですか?」

「担当さん!け、研修のことは知ってたし!でも、その・・・指令のことは、担当さん自身にさっき聞いたら・・・知らなかったみたいで・・・その、担当者さんのIDネーム・・・で思いこみました」

こんのすけのいつもの能面の表情に戻り、これはヤバイと思ってももう遅い。

「なりすましたんでしょう。セキリュティの方はどうなってるんでしょうか?手の込んだことをする。これは背後に審神者様のことよく思っていない輩達が、一枚絡んでそうですね・・・ですが、審神者様!普通はどういうことだと抗議はするものですよ!そのまま鵜呑みにしたんですね!」

再度、説教体勢に入りまた怒られるとしても抗議はしてみる。口開くごとに墓穴をほりまくっているような。

「だって四十六人ものイケメンと住むのもう耐えれなかったんや!そもそも人外だし!噂に聞く見習い展開利用して、用済みなら現世に帰られないかな〜がまさかのブラック本丸ぽいっ所にいきなりぶっこまれるなんて思わなかった!」

「こら!開き直って無責任を正当化するとはどういうことですか!?意味がわからない。あなたはあほですか!だいたい私と接するようにすればいいと再三言ったでしょう!」

加速する口論に誰も止める者はおらず、傍らに控えている妖精や刀装兵はまたやってるよという顔で、鞄の中に入れていたお菓子を食べて眺めている。

その光景だけなら本丸にいた時と変わらない、今は廃墟一歩手前とかした部屋でやることではなかった。


こんなことになっているけど反省はしていない。 取り繕うこともしない。 逃げだしたかったのは事実・・・自業自得だよな・・・。





いつの間にか周りがしんとしていることには気づかない。部屋の外では襲いかかっていたこの本丸の刀剣達は困惑していた。


「どういうことだ?あの審神者、ここを引継ぎにきたんじゃないのか?」
「おかしいとは若干思ったけれどさ・・・あちらにもこんのすけがいるのも」
「・・・話してからして自分の本丸を捨ててきたようだな、にしては何か事情があるようでもないような・・・あるのか?」
「今までの審神者とは違うの?頼りなさそう・・・」
「あのこんのすけと妖精達は気をつけることにして、審神者は思考回路おかしいが少しまぬけそうだし、交渉してみる?」
「襲いかかってしまったのでは警戒してるんじゃないんですか・・・?」

密やかに会話される内容は、聞こえていないことをいいことに好き勝手に言っている。聞こえていたとしても、気をつかうこともないだろう。彼らはそこまでする必要は無いと思っていた。直接♀害を加えないまでが彼らなりの譲歩。

この刀剣たちが、一番最初に襲いかかるのはここへ来た審神者を追い返すためだ。 政府がここを放置しないのは、全振が揃ってしまっているのとそこそこ高練度がいるかららしい。

ここへ来る審神者は、経験のない者だったりどこぞのお偉いさんの箱入り娘や息子で、この本丸を引継ぐには荷が重そうな者ばかり・・・多少の問題がある人間でも、まだちゃんと立て直すならそんな手段をとることもしなかっただろうが。

彼ら理解していた。戦いのために喚び起こされたことも、自分たちが力を貸したことも。

自分たちを酷く扱った元主ーーー審神者と他の人間は別だと認識している。
しかし、刀としての思いと、人として顕現した感情を抱いた今では違うのだ。

そんな彼らの怒りの抵抗と、どこかまだ憎み切れないこころ≠ェ、訪れた審神者に直接危害を与えないことに繋がっている。人間の運動神経がどうにせよ、当たらないように加減することは彼らにとって造作もないのだ。 だから、ブラック本丸の刀剣との関係が悲惨な事例があがる中、ここは比較的に冷静で審神者に酷い危害も与えなかった。そのうち政府も自分達に諦めるか、放置するかなんらかの処置が施されると考えていた。

なのに政府がどういう判断をしたのか、本丸をちゃんと立て直して刀として扱わない連中ばかりよこした。逆に火に油を注いだ。どうやら・・・今回、来る審神者は有能らしい御上の娘だと、ここのこんのすけより聞いていた。でも、それは彼らにはもう関係ないこと、ここへ立ち入ったのなら追い返すのみだ。相手は有能とはいえ、今までの連中と一緒で恐れて逃げ帰るだろうとーーー思っていた。

しかし現れた娘は、娘ではあったが一連の行動より有能そうには見えない。 逃げ帰らず離れへ逃げ込んだことから審神者経験者であることがわかるが、ここへ来たことからたぶん・・・問題がある輩では間違いないだろう。別の意味で少なからず。そして、何よりこんのすけがもう一体いることに困惑する。確かにここのこんのすけはぼろぼろであるがまだ機能していることは政府は知っているはず。替えを用意したというのなら、ここのこんのすけを破棄ということなのだろうか?




ますます膨らんでいく怒りと疑念の矢先。 聞こえてきたのが、緊張感の消えうせたあの会話である。

やたらとばしばししたはたく音と呻き声も聞こえるが。

「あの・・・対話してみますか・・・皆様?」

困惑している刀剣達に、こちらのこんのすけが聞いた。 刀剣達はしばし顔を見合わせて、頷いた。

気を静めたあと、妖精達が投げてきた気色悪いものも特に害はなさそうだったとも思った。運悪くあったてしまった仲間はげっそりしてたが念の為、休ませている。

どうせこの先もまた放り込んでくるのなら、この審神者とこんのすけ達の対話してみるのもいいかもしれない。・・・審神者に不安が無いと言いきれないが。うまく条件が噛み合うなら、この現状を打開できるのだろうか。駄目だったのなら、今までのように無理にでも返すだけだ。


未だ終らない白熱する会話に(あちらのこんのすけが優勢)、向こう側へ声をかける。

「あんたらの会話、全部丸聞こえだぞ・・・?」

少しの困惑さをにじませた声で。



16/1/24

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