刀装シリーズ | ナノ
それぞれの思い
御手杵さんに斬りかかる敵を、鯰尾さんが間一髪で切り捨てた。すぐに覆い隠されたが二人が背中合わせにしてる姿が見えた。二人の位置が中心になりこの場のほとんどに注目されているさまになってしまった。
僕の視界は遮られていた。背が低いのがここで足を引っ張る。どんな風になっているのかさっぱりわからず、どこに薬研や今剣もいるのかそれさえもわからない。そんな状況で徐々に蹴散らし倒したはずの敵が増えてきている。
平行線だった状況は一変したというのに戻りつつあった。弾き出された僕らは中心に行けず、無理に行ったとしてもこちらに気づき敵兵に再び阻まれはじめていた。このままではまた身動きできない状態になってしまう・・・不意に鶴丸さんに腕を捕まれ急ぎ足で奥の方に連れていかれる。後ろを振り返りさっきまでいた場所がどんどん遠ざかる、こちらに気づいた敵達が追いかけてきた。
『鶴丸さんっ!鯰尾さん達や薬研が・・・まだっ!』
『・・・門の辺りは御手杵達が引き受けてくれた。離れる時に合図をだした薬研と今剣は審神者のところへと任せた。俺たちはまず奴らの侵入経路を防ぐ事だ』
『・・・僕らにとっても、審神者へところにも戦力が分散するのは』
『それはわかっているんだ』
鶴丸さんは歯がゆそうに低く呟く。
『だが、斬っても斬っても沸いてくる。なんとか侵入場所を堰き止めないけりゃいつまでたっても終わらない。審神者のところは真っ先に行きたいがその前に全滅しちまう。あいつらなら大丈夫だ・・・だから、信じよう』
掴んでいた手が離れた。無駄に広い本丸だ、走っているとはいえ増えていく敵は僕らを殺りにきている。そうして、鶴丸さんは前方を僕は後方をその体勢に整えた。
敵は単体では強くない。そうでなければ少人数の僕らの方が不利だ。しかし、圧倒的に相手の人数が多すぎる。鶴丸さんの言う通り何度倒しても元を断たなければ・・・それはわかってるけど、他を心配してる場合でもないとも。
優先すべきは審神者だーーーでも、本当に守りたいものは何?
『今回の件は俺のせいだ』
突如わきだつ感情に思考をとられていた。現実へと引き戻すような声を聞いた。
『・・・もっと、考えなきゃ駄目だったんだ。もっと、詳しく調べときゃよかったんだ。いずれ起こる事態も・・・今回のような最悪を防げれたかもしれない』
淡々と言葉を口にする鶴丸さんは、ただひたすら前から来る敵を切り倒しながら進んでいく。その雰囲気はいつかの日かと重なって、すべてを背負いこもうとしているのがわかってしまって、このままではまたあの時みたいになってしまうのか?
『鶴丸さん』
『・・・最終的な判断を下したのは俺だ』
またあなたは一人で・・・昔からそうだ、この人とこの本丸で暮らすようになった時から。普段は飄々としいている癖に、いつの間にか一番重いものを大きなものを背負いこむのだ。誰にも相談しないですべて終わらせてしまうんだ。
『今回は、今回の件は僕ら全員#[得して決めたことだよ』
そう言えば、苦笑するけれど表情が和らげた。
順当に思い当たる場所を巡る。
異常があったのは昨日直した場所に大きな歪みが生じていた。そこからは黒く禍々しい靄が漂っており、確実にここから敵が破壊して侵入してきたのだとわかった。入り口に待機していた連中を倒すと鶴丸さんが素早く結界を貼り直し始めた。僕はその間、鶴丸さんが集中できるように辺りを警戒する。来た道には、通ってきた後が残っている。本丸に戻ってきてからどれくらい敵を切り捨ててきただろう。
体感時間は長く感じるが、実際はそんなに経ってはいない。本当は僕も結界を張るのを手伝えればいいのだけれど、鶴丸さんのが破られるくらいだ。僕が手伝ってもあまり意味はない、つくづく自身の非力が疎ましい。でも、今は自分にできることを精一杯しよう。
いくら綻びの回数が多くなったとしても、こう容易く突破されるようでは・・・鶴丸さんも手を抜くなんてことはあり得ない。
『これでよし』
そうこうしている内に鶴丸さんの手が止まった。今度は少し方法変えたみたいだ。刀剣男士の神力は作られてから長いほど強い。それと平安時代から今の時代まで現存されている鶴丸さんはその上位に入る。故にこの六振りの中でその役割を大部分請け負ってくれていた。
今貼られた結界も不備は見当たらないのに・・・・・・もしかして。
『さあ、早く行こうか』
『待って。鶴丸さん、もう『大丈夫という言葉が正しいのかは断言できないが、もう侵入することはできない。そして、奴らがここから出ることもできない。一時的には凌げる。・・・小夜坊、どうした?』
ここに辿り着いた時より明らかに鶴丸さんの様子がおかしかった。この人が力を使ったのもあるけれどこれは。心なしか鶴丸さんの纏うものが・・・ずっと感じるこの嫌なものは。僕は今まで一番重要なことに目を逸らしていたんじゃないか?
『小夜坊』
『鶴丸さん、あの、もしかして』
『ーーーなあ、小夜坊。俺は大丈夫だ』
またあの時みたいに言う鶴丸さんに、何かを押さえ込むように。誤魔化すように手をひかれた。急に引っ張られ、口をつぐむ。
『ここから離れはそう遠くない、急ごう』
僕たちはすべてをこの人にもう背負わせはしないと決めている。だから僕たちはまだ終わるわけにはいかない。今何をすべきことなのか。
考えることは後にしてもうすぐその場所へと。
15/11/20
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