刀装シリーズ | ナノ






奇襲された本丸1



前々から悩んでいたが、全員で遠征に行く試みをしてみようということになった。

もちろん反対意見もあり長い話し合いの末、今の人数じゃ効率が悪いから少しでも改善しようということに。刀種も偏り数も少ない僕らじゃ行けるところも限られている。ただ特殊な空間により少しだけずれた違う場所に行けることで、油断してはならない。
御手杵さんが日々狩りができると喜んでいた。あの人出陣した過ぎて意識がおかしな方向に向かっている気がする。

それとあまり取りすぎても駄目なので注意はしている。本丸の方は侵入者を防ぐ結界は念入りに確かめ、万が一ということで害意のあるものが侵入してきた時それが僕らに伝わるような仕組みを一から構築した。

今回こうは決めたものの審神者の様子を見てると不安になってきて、もしなんらかのことが起これば審神者が立て篭りやすい離れへ逃げこむようにと丹念に言い含めておいた。鶴丸さんが『・・・そうだなやっぱり。君一人残すのは心配だ。一人でも残しておく方がいいか』と決定に悩みはじめたりする。

『ずっーと守って貰いぱっなしもどうかと。もちろん感謝してます。でも、刀様にも刀様の事情があるんですからアナタ達のことを優先して下さい。どうなるかわからないけれど、今後のことを考えるなら、私がこの本丸に一人でも居ても大丈夫にこしたことはないと思うんです』

真剣に話す審神者にみんないう言葉もなく。

審神者の周りにいる妖精や刀装がお守りは任せろ!といった様子での合図が後押しになった。
頼もしい。



前日の夜の日だ。日課の本丸見廻りを、全員遠征に行くため強化していた時だった。



身体を抱えこむようにする鶴丸さんを見た。周りにはあの黒い靄。今日は当番の日なので一緒に本丸をまわっていた。途中、厠で離れていたがまさか、そんな。でも、すくっと立ちこちらを向いた鶴丸さんの様子は普段通りでーーー先ほどの可笑しい様子は何処にもなかった。

『鶴丸さん』

『ん?どうした?』

『・・・なんでもない』

遠征の回数を増やしている今日この頃、半分刀剣を残してるといえど偏りがあるため。
鶴丸さんを中心として当番を決め、本丸内の結界を常々強化したりおかしなものが紛れ込んでいないかを確かめたりしている。ちなみに御手杵さんこの作業が苦手らしい。鯰尾さんがよく背を押しながらせかしているのは、日常の光景になっていた。

『綻んできたな。どうしたもんか・・・』
『鶴丸さん、どうしたの?』

それで今日の当番は僕と鶴丸さん。その最中、鶴丸さんがため息混じりに呟いた。

『いやな。なるべく結界をできるところまでしてるんだが、最近、綻びが直しても数日経つと駄目になっちまう。政府の保護とやらが完全に消えたのも原因かーーーそれともなにか影響受けているのか』

『御上も仕事はちゃんとしていたんだね』
『そりゃそうだろう。むしろ今までの状況で無事だったのはいい方だ』

『・・・審神者も何度も変わったしね』
『そうだな。ま、問題はあるが、もう振りまわされない』
『うん』

本当に一人で残して大丈夫なんだろうか。でも、このままでいるのも。妖精達に念入り見張っていてもらうか。とぶつぶつ呟いていた鶴丸さんはすくっと顔を上げる。

『さて、今日のところはここまでにして・・・夕飯の時間だ。戻ろう』

不意打ちに頭をくしゃりと撫でられ、手を繋いでひかれてゆく。ずいと鶴丸さんの方へ覗き込めば、こちらを見返してどうだ驚いたかと言わんばかりの表情している。僕は、たぶん困ったような表情をしているだろう。

(ああ、いつも通りだ)

今の審神者が来てみんなの調子が回復してゆくころからだろうか。こんな風に接されるのが徐々に増えていって、今ではそれがあたりまえになっていた。これは僕だけじゃなく、薬研や今剣、鯰尾さんにもしている。さすがに御手杵さんにはそんな風には接してないが、倉庫にあったお酒を傍らに月を見ながらひっそり一緒に呑んでいるようだ。なんか、たまにその現場に薬研と鯰尾さんも乱入するようで、ふと夜中目を覚ましたら今剣と僕だけという状態にでくわした。酔っぱらいに絡まれると大変なのですぐに寝直す。

この人の状態は順調に安定していっているので、つい忘れがちだけど荒御魂。どこか仄暗い狂気的な部分も身を潜め、ごく普通に存在している鶴丸国永≠セ。しかし、先ほどアレはーーー・・・大丈夫。ちゃんと対策すれば不安なんてない・・・一応遠征を終えてから、薬研に報告しておこう。


何処となく僕が心の内に抱く。穏やかな日常が崩壊する前兆を、あの時感じた不安にーーー刻一刻近づいているのは気のせいだと言い聞かせた。同時にめっきり抱かなくなったあの♀エ情は表にださなくはなった。


ーーーそれでも、それでも。
なくなりはしないのだ。




朝になる。

今回は刀剣全員で遠征に行くから、審神者がやっぱり心配だとか理由は色々ある。胸騒ぎがする。

『さよ、かおいろわるいですよ?』
『体調が悪いなら、無理して遠征に行かなくていいぞ?』

なんとなく落ちつかない僕を見て、薬研と今剣が気遣って声かけてくれた。

『ううん、大丈夫』

そう答えたもののちらりと審神者の方を見る。刀剣全員が一時いなくなるというのに、なんともゆるっとしている。御手杵さんが口を酸っぱくして最後の注意事項を言っていた。

『サニワですか、しんけんにそういってくれたときみなおしたのに。そのあとおかみたいさくのおとしあなにうまってうごけないところをはっけんしなければ、ふあんなんてなかったんですけどね』

『それで、さすがに怪我させるのは問題だから鶴丸の旦那も落とし穴系はやめて、別の路線を考えてるらしいな。あと元々の仕掛けた罠はすべて審神者に教えていたが』

『僕たち審神者の心配ばかりしてるね』

『そうだな。なんか目が離せないな』

『ぼくらもかわりましたね』


会話は審神者のことで。それはあたりまえのような、でもあたりまえじゃない存在であることでくすぐったい感情になった。

・・・大丈夫だろう。


15/11/1

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