刀装シリーズ | ナノ






思い出しては歩み行く2



ああ、やっぱりーーー話を聞きまわって考え事をしていた時だ。あとは兄様と鶴丸さんに聞いてこんのすけに相談しようとして、早足で廊下を歩いていたら。外から叫び声と大きな何か壊れる音が聞こえた。




壊れたばらばらのこんのすけだった・・・ものと。折れた歌仙さんの刀が転がっていた。

門の周りに集まる刀剣達が、ある一点を囲うようにして青褪めている。

『どいつもこいつ煩いのよ!この二ヶ月、我慢して苦労して優しくしてやったのに。あんた達は私の言うこと聞いていればいいのよ!もう、別に良いけどね。契約を上書きしておまけに一つ前の審神者が術式組んでくれてたみたいだから、もう私に危害は加えれないしー?危害を与えようとしてもこの刀みたいに自動的に折れるから。練度高かったのに勿体なかったわ。こんのすけは口煩いし邪魔だったしこのままなくてもいいわよね』

地面に転がった歌仙さんの刀とこんのすけの欠片を踏みつけて蹴りながら、醜悪に表情を歪めて喋る審神者に、衝撃で思考が追いつかない。
歌仙さんとは喋ることすらなくなっていた。でも、今日は朝に出陣して見送ったはず元気に行ったはずなのに。こんのすけだって。

『ねえ、さっさと支度してよ。厚樫山に出陣して。あと鍛刀ね。ああ、遠征も』


地獄の幕開けの合図のように聞こえた。




回数を増すごとに無理な行軍を、進言するようになった審神者に歌仙さんが苦言をした。それを聞いたこんのすけが審神者を問い詰め、政府に報告しようとした時に何かの術式で破壊をする。一瞬だったそうだ。聞きつけて集まった刀剣達は唖然として、豹変した女にとっさに刀を突きつけるも、真っ先に動いた歌仙さんをその場で触れる寸前で刀解した。儀式もなく口上もなくだ。

ーーーそして。歌仙さんとこんのすけがいなくなり、大倶利伽羅さんが出陣から帰ってきて破壊していなくなったあとのことだった。


『わかってはいましたが、度重なる夜伽を要求とは・・・あの阿婆擦れが』

『江雪、本音が出てるいるぞ?そう、思うのも確かだな。二人同時とは』

『貴方と一緒なんですか・・・この世は・・・地獄・・・です』

『絶望した顔に更に絶望をしたような顔しないでくれないか?男に抱かれるよりはましだろう。あの匂いはきついが』

『あんたら疲れてるのはわかるけど多数がいる場所であけすけに話すな。短刀もいるんだからな、聞こえてるかどうかは定かじゃないが』


軽快に会話される内容はあれでも、顔には嫌悪がありありと表れている。疲労はかなり積もっていた江雪兄様と鶴丸さんの会話に、御手杵さんが苦味を含んだ言い方をしていた。

この場にいるのは、ほとんど傷を負っている短刀か重傷を負った刀、比較的に優遇している者だけだ。それ以外は、遠征と出陣している。
優遇している者には、風呂に入るなど人のような生活をさせてるみたいだけど、それは他の刀の手入を条件にして夜伽をさせることに過ぎない。

『小夜・・・これが終われば、貴方達の手入がされます。・・・もう少しの辛抱ですよ・・・』

『うん』

兄様の声かけに頷くしかない。

崩れればあとは落ちるだけ。穏やかな暮らしから前のような生活に戻った。落差は激しくその事実が身に堪えた。短刀は一部を除いてその事実が余計に堪えただろう。

それからの三番目の審神者は目当てのものが手に入らず苛立ちを募らせ、欲望や衝動を僕らに当たり散らすだけだった。審神者業務は辛うじでやってるみたいだけど、ついには絡繰りを破壊していた。どうして、こう上手くいかないの、と。資材や物資も止まり、夜伽で気を紛らわしている。



(最初から全て演技だったのだろうか。一欠片の思いもなかったのだろうか)





『ぎゃああああ、いだい、いだいよおおお、苦しああああ死ぬういたああい・・・あっ』


断末魔の叫び声が上がり、止まった。

審神者室には血を吐いて苦渋の顔をしてことが切れた審神者がいた。江雪兄様と鶴丸さんが疲れたように嗤って、ようやく効いたかと呟いていた。

江雪兄様の表情を見てなんとなくわかってしまった。



事態は、三番目の審神者はあっさりとーーー死んだことによって変わる。

審神者は送り込まれることはなくなったけれど、手入をする者もおらず放置されたまま過ごす日々に力を失った刀は一振りずつ戻り折れていく。太刀や打刀は、これ以上人に振り回されるのは御免だと、戦場に行き自ら敵を道ずれにして折れていった。

江雪兄様はそれから倒れて床に伏せたままだ。僕はそっと寄り添っていた。
薬研や今剣はそれぞれの繋がりのある人に抱き込まれながらそれの流れる日々を見ていた。気力はもうほとんどない。みんな疲れていた。





ーーー江雪兄様が・・・折れる間際。


人の姿が消えていなくなり刀へと戻るまでの少しの時間。僕と鶴丸さんは側にいた。

『・・・近々、折れると思っていましたがーーーここまでのようですね・・・少しばかり・・・疲れましたね。先に宗三の元へ向かうとしましょう・・・会えるわけではないですが・・・本霊の元に還るか・・・どうかわからない・・・ああ、でも小夜が心配です・・・』

『俺に任せとけ』

『・・・それが心配なんですよ・・・はあ、でも小夜を頼みます』

『ああ』




『さ・・・よ、たい・・・せつなおと・・うと・・・よ、どうか、このさきあなたに、あなたたちに・・・さちあらんことを』


薄っすら笑って、刀の姿へと戻った。
僕の両目から涙がたくさんでてるのを鶴丸さんが自身の裾で拭ってくれる。






『江雪は、外側からの攻撃が駄目なら内側から徐々に自分の神力を流し込んであれを弱らせていた。呪いを含ませてな。あれは、それに気づかず欲に溺れていたから、最後は神気に耐え切れなくなって苦しんで死んだ、さ。欲に溺れるから・・・幾ら術を施しても神と交わるんだそれなりの影響を受ける』

『鶴丸さんは』

『堕ちて黒い穢れを背負っているんだ。それを意図的に隠していたとはいえ、何度も俺とも交わっている。それに耐えられだけの精神があったんなら別だろうけど、気づかない時点でな。

どうもここに来る輩を処理させようとしている気がするな。あれの体に僅かな別の神力が残っていた。似たようなことを別のところでしていた、かもしれない』



そう語る鶴丸さんの顔は能面で。


『小夜ーーー坊、折れる時まで俺が君達を守る。それまでよろしくな』

『・・・よろしくね』

繋いでいた手だけ強く握り返した。



15/7/20

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