刀装シリーズ | ナノ






代わる審神者と四番目の審神者1



鶴丸さんが、あの男を殺した。ーーーあの男はいなくなった≠フだ。


もう、この地獄は終わった≠フかーーー?



昨夜起きた事件は、打刀・太刀を中心に後片付け≠しておくからといって、短刀・脇差は休むように促され、そう言われればどうすることもできないので大人しく部屋に戻る。でも、それで落ち着くわけもなく部屋にいた固まっている他の刀剣達に厠へ行くと言って、誰もいない場所を探した。

行く宛もなく、とりあえず人が居ない場所に行こうと思った。もしかしたら、資材もあるし手入部屋は使ってるかもしれないので、太刀達の邪魔にならないよう遠回りして行く。本当なら休みなく出陣していたはずなので、あえて馬小屋に行こうかと思ったけれど誰かいるかもしれないと思いとどまり、なんとなく鍛刀部屋に行くことにした。

限られた場所だがどこでもよかった。
落ち着いているようで落ち着いてない自身の心を静め冷静に考えたかった。向き合いたかった。

徐々に浮かんでいた、溜めていた、どす黒い負の感情を。

ーーー復讐を。

鍛刀部屋に入ると、ざわざわと落ち着きのない妖精達をがいた。
妖精達は、夜中にそしてあまり近寄らない僕の登場に少しギョッとしたけれど、どうしたと言うようにわらわら集まっくる。その中に、手入の妖精や玉の状態じゃない刀装兵も混じっていた。何気に本丸にいる住人達が集まっているのは、やはり彼らもこの本丸の主≠ェ消えたことを感じとったのだろうか。

『・・・ねえ、いなくなった≠フ知ってる?』

何をとは言わないけど、聞いてみた。
みんな一様に互いの顔を見合わせてからこちらを向いて、こくこくと答えるように頷く。

『そっか』

妖精達が座りなよと言うように、小さな手でぐいぐいと引かれる。適当な所に座れば、僕の周りを彼らが集う。悲しそうな表情で手入の妖精が僕の切傷をぽんぽんするけれど・・・治ったりはしない。少し前までは、彼らがそれをやればこの傷くらいなら治ったのに、審神者≠フ力が必要になった今、それは難しいこととなった。・・・その審神者≠熕謦いなくなったのだけど。

心なしか痛みが治まったような僕は、妖精の気遣いに感謝を込めてその小さな頭の上を撫でると、にぱっと嬉しそうに掌にぐりぐりと頭を押し付けてくる。それを見た、他の妖精達や刀装兵が自分もというようにわっと体にひっつき、空いている方の手に頭を押し付けはじめる。その様子に、燻っていた憎悪がじんわり凪いでゆく。彼らは僕らが傷ついているのを癒すように支えてくれるように、寄り添ってくれる。それは、触れ合う機会が多かったからか、ここの妖精は僕らの影響もあってか少し人間臭い。付喪神な僕らがそう評するのは少し違和感があるけれど、人の姿で顕現する今では人間らしいところが出てきてもおかしくはない。

一応、あの男からの霊力だけは提供されていたので刀剣男士達だけ行ってはいたが、やはりそれだけでは上手くいかないこともあった。でも本丸には、僕ら刀剣男士や審神者の生活や支える様々な妖精がいる。鍛刀を手伝う妖精、手入を手伝う妖精、畑などを手伝う妖精など・・・依頼札や、早くするには手伝い札が必要になってくる。それが、本来の彼ら仕事だった。他の本丸は知らないけれど、ここの妖精はそんな事情もあってちょっことしたことは制限がないのか彼らは自由に僕らの手伝いをしてくれた。おそらく、審神者とするあの男よりも親密な関係を築けていただろう。この件だけは、あの男が僕ら刀剣達に手入など勝手にするようにと放置しなかったら、ここまで妖精達と触れ合うことはなかったのかもしれない。それが、免罪符にはなりはしないけれど。

ーーーだから、この小さな住人達はこの本丸の刀剣達を、決して決して見捨てたりはしない利用したりはしない、ずっと支え見守ってくれている。

僕らが憎悪を孕んで、堕ちるのを必死で食い止めようとーーーしてくれている。
だから、まだ僕を含めた多くの刀剣達はかろうじで正常でいる。

でも、破壊された一期さんやーーー鶴丸さんは。

『・・・ねえ、君達は・・・鶴丸さんや・・・僕らが・・・堕ちたとしても、もし刀解されても、最期まで一緒に居てくれる?・・・君ら何処へいってしまうのか残るのかわからないけれどーーーーー』

どこか壊れたままの不安な心が、優しい彼らに縋ってしまう。

彼は、それを肯定するように寄り添ってくれるのだ。瞳が、暖かさを伝えていた。


ーーーーーしばらく、そのままでいよう。




『何処にも見あたらないと思っていたら・・・小夜、ここに居たのですか・・・』


鍛刀部屋でぼーっとしていたら、江雪兄様がその言葉とともに現れる。後片付け≠終えたらしい兄様が来るということは、長いこと此処で過ごしていたようだ。外の方を見れば日が明けようとしていた。

『休みなさいと言ったでしょう・・・が彼らと居たのですか・・・なら、大丈夫でしょうか?』

眉間に皺を寄せていた兄様が、僕の周りにいる妖精達をみると表情を少し和らげる。
・・・兄様は、宗三兄様がいなくなって以来、元々心配性だったのが更に強くなり僕に対して過保護になることが多くなった。
ーーー余談だが、宗三兄様はあの一振り以来、あとから来ることはなかったのでなおさらだった。

『ごめんなさい・・・兄様・・・鶴丸さんは・・・もう、いいの?』

『怒っているのではないですよ・・・鶴丸殿はーーー大丈夫、とははっきり言えません・・・彼本人には先程の件で何も外傷は受けてないと確認致しました・・・しかし・・・』

『・・・意思疎通、できないの?』

『いえ・・・契約の隙をついたといっても主≠ニした審神者を殺したのです・・・気が昂ぶってるというのでしょうか。以前、噂に聞いた闇堕ち=E・・鬼堕ち≠ニまではいきませんが、私達が見た様子では荒御魂≠フ状態になっているよう・・・ただ、同士とそれ以外の者の区別はつくようです』

素直に謝るが、兄様は首を振り怒っていないと頭を撫でながら言った。鶴丸さんの様子を聞くと、まだ¢蜿苺vそうだという。人間からすればだいぶ変わったように見えるらしいが、兄様達から見れば大丈夫のようだ。

ーーーでも。

『これから、どうなるの?』

『そうですね・・・理由はどうあれ、主に謀反を起こし殺した私達は刀解でしょうか・・・でも、それでいいと思うのです。どのような対策を立てられるやもわかりませんが・・・こちらを荒御魂としてうけとり、儀式を執り行って戻れるなら本霊の方に戻して頂ければ・・・私的には一番いいのですが、他の方がどう考えているのかは、わかりません。・・・しかし、皆みな疲れているでしょう・・・人間に』

目を伏せながら、何時もより饒舌に語る江雪兄様は何処となくほっとしていた。
ーーーそう、もうあの身勝手な人間に苦しめられることはないのだ。

『もちろん鶴丸殿のことや、破壊され続けてきた他の刀剣のこともあります。・・・粟田口の方達も色々あるでしょう・・・また、刀剣全員で今後を話し合いすることとなります。だから・・・今はしばし休息をとりましょう、小夜』

優しい声音で呼びかけられ、ふわっと意識が飛ぶ。江雪兄様に抱き抱えられながらーーー色んなことが起こりすぎて、かなり疲れていたこと自覚した。
ふわふわした意識の中で、刀解になって兄様や今剣達と別れてしまうのは少し寂しいなとか、最期まで守られっぱなしだったとか思いながらーーー眠りに落ちた。



15/6/28

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