刀装シリーズ | ナノ
鼻っから逃がすつもりはない
案内されるままとある部屋に通された。目元を押さえ思わず一言。
「悪趣味だ。燃やそうか」
「えっ」
部屋の内装は良いようにいえば色鮮やかだが・・・実際は和室で統一性がなく、派手な色で目に刺激的。そして、部屋の中央にひかれている布団に、ため息をはきたい気分になった。部屋の中に何振かの漂っている気を感じとってしまう。そこで行われていたことが嫌でもわかる。
(想像を裏切らないなこの展開は。しかし、こんな部屋があるとは常日頃から夜伽が行われているな)
この部屋へと連れて行けと指示された石切丸の表情をちらりと窺うが何も読みとれない。
「三日月宗近。君の目的は何だい?特殊というか君から少し穢れが視えるーーーそして、かなりの強者とみた。・・・新しく落とされた刀ではないね」
俺の本丸内の観察する様子と本音がでたのを聞いた石切丸が、訝しげに警戒したような問いかけをする。うむ、いつものように此奴には見通されてるようだ。
警戒はしつつもすぐに攻撃はせず話聞き様々な事柄から判断をする、そこが出会った石切丸という刀剣には多かった。ここの石切丸もそうらしいな。こちらからどう話をしようかと思ったがあちらからはっきり聞いてきてくれるのならありがたいこと。誤魔化したり惚ける必要もないので話そうーーーもし話つかない場合があり、戦闘になればこの本丸にかけられた術式ぶっ壊して脱出するか。審神者が本体持っている場合ならいいのだが・・・本丸自体に仕掛けられいるのは少数だが、悪知恵の働く輩だと難しくなる。
さて、どこまで妥協させられるかどうか。まあ、まず疑うだろうな。本丸から俺のことを承知で連れてくる場合と、自ら潜入する場合。相手方の刀剣の態度にもあたりまえのようにかなりの違いが出てくる。自己満足のお節介を焼いてるのは自覚済。しかし、石切丸の言葉からするに俺のなりに気づいていて招いたのだから返答次第で穏便に済ませれそうだ、可能性はありそうか?一期の件からして、審神者が従わせて目的のものを得るかわりに今後の扱いやらを条件にしていたには違いない。叶えてやる気配はなかったが・・・もう少し時間があると思とったが、すぐさま他の刀剣と顔合わせしないままここに来たしな。
「お主の言う通り、俺は他の者に顕現された刀だ」
「害そうとする気はなさそうであるね・・・君の主は?」
「主がおるなら、ここに居るまいて」
「なら、何のために。この本丸へと・・・?自身で言うのなんだけどね、私達の行軍を見ていたのならば禄でもない本丸だとわかったはず」
「ほう?覗いていたのを気づいておったか?では、質問に質問を返すのだが、もしこの本丸の審神者を害すると言ったらどうする?まあ、それは最終手段であるが。
俺が通常の刀剣ではないと気づいていた筈だろう。何故、連れてきた?」
「・・・それは、主が望み続けたことだから、とでも言っておこうか。君を本丸内に招いたのこちらだが害意あるのならば総力を持って討つつもりだ。さて、結局のところ主をどうするつもりだ?本丸を落としに来たのか?何の意思を持って私達の前に現れたんだ?」
「審神者からしたら、ある意味そうかもしれんな」
「・・・真意を汲み取れない」
お互い腹の探り合いをしながらの会話。石切丸の様子を見ながら会話していく。一見冷静に見えるがどことなく焦っているようで、流し目で入り口の方を気にしていた。審神者の心配をしている、まだ刀剣として意思が強いな。それにしても何のために≠ゥ。闇堕ちしかけている、と直球に話すわけにいかない。勘づいてはいそうだ・・・俺も即座の判断でやってしまうのもいい加減にしないとな。
「俺を連れてきたとしてもこの現状は変わらない。あの反応を見るや次は他の刀剣と言いだすだろう」
「それはわかっているさ」
「あの審神者に従わなくてもいい方法がある。審神者は死なせるわけではない」
「・・・!この本丸にかけられた縛りを門に入った時点で感じたはずだよ、無理すれば破れることもないが・・・神格の低いあの子達に悪影響を及ばないとかぎらない」
その言葉に少し石切丸は動揺を隠せないでいる、ようやく崩れた冷静さ。平行線での会話が続く。審神者が来たら面倒なので本題へ話をきりこもうとした時、一歩遅かったよう。
「なんだお前まだ部屋に居たのか?なにやらよからぬことを企ているようだが、馬鹿なことを」
石切丸の姿を見て少し苛ただしげな表情した審神者が、部屋に入室してきた。用事とやらは済んだのか機嫌は最初見た時より良くはなっているのだが・・・その存在をなんと言おう。典型的な下賤ーーーその下衆さに懐かしい感情がわきあがる。この幾月、刀装達と楽しく暮らしていたせいか余計に思う。こういった審神者に会うことが多いが、よくもそこまで身を堕とせるものだ。
自身のことは棚に上げそう考える。これと同一視されるのも嫌だな。
俺との話を聞かれていた石切丸は取り繕うとせず審神者に話かけた。審神者は常に自身満々だ。霊力はぼちぼちといったところ。どこにそんな自信があるのか、よほどこの縛りが自慢なのだろうがもう少し違う方向に活かせばよかったものの。
「主、この三日月は少し特殊な所がある。二人でいるのは、」
「多少おかしいとこがあるみたいだが、それでもあの三日月宗近だ!明日はこれを演練に連れていき、見せびらかす。それにお前らごときにどうにもならない・・・ああ、そうか」
(この審神者は話を聞いているのか聞いてないのか、慢心が酷い。よくこれで生きているものだ)
慢心は時に自ら死の方へと向かう。最後まで話を聞かず遮り言い切る審神者、もう既に俺の持ち主≠ニ思っているようだ。刀帳を確認にしたのだろうか、いやしてないか。通常ならそうなっているが、今の段階では。
石切丸と会話中、意味ありげに厭らしく表情を歪めた審神者に石切丸は少し顔を青褪める。
「よからぬこと考えるならお前を刀解してもいいんだぞ?練度は少々勿体無いがお前の代わりなんぞいくらでもいる。でも、それじゃあつまらないな。仕置きの方にしよう。・・・そういえば刀派が同じだったなぁ・・・そうだな、趣向を変えよう。目の前でこれを汚しいくのを見せつけるのもいいなぁ」
「主!これ以上、そんなことは!」
顔は青褪めを通り越して白くなっていく石切丸。それさえも楽しんでいるかのようなこの豚、おっと審神者。なんと下衆。あまりにも典型的過ぎて、緊張感なんてない。もう一発殴って気絶させよう。緊迫しているはずの目の前の光景と裏腹にそう考えはじめた。
そして、ようやく審神者は動いた。
「何しようが、お前らに逆らえるわけがない!」
どしどし歩いて近寄ってきた審神者は、俺に触れようと手を伸ばしかけーーー
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