刀装シリーズ | ナノ






敵刀装兵を強奪する天下五剣





「お前達に土産だ」


散歩から山小屋に帰宅した。


手の平に上に、ぷるぷると固まり赤い眼からは涙が浮いているーーー敵側の刀装兵達を差し出すように見せた・・・取って喰いはせん。そう怯えなくても良いのになぁ。


それ見た此方の刀装兵達。返してあげて!と目で訴えられた。

・・・はて、何故?

「解せぬ」
「ぴっーーー!」

喜ぶと思ったんだがなぁ?

敵でも味方でも刀装だ。お前達なら仲良く出来るのではないか?







冒頭に至る話には訳がある。

助けた審神者の娘に貰った三つの刀装兵と暮らし始め幾月かの時が過ぎた。正確に言えば、懐に忍びこみ押しかけてきた来たらしい、とな。刀装兵に聞いた。

毎日、楽しく過ごしている。

俺を捕獲しに来る刀剣達から逃げたり捕まったり逃げたりな。簀巻きにされ護送中に刀装兵達が必死で縄を切り、隙をついて逃走した。後ろから、何処ぞの獅子王のちくしょーーーー!≠ニいう声が聞こえたが。残念だったな。うむ、あれはなかなか楽しかったぞ。

食欲に目覚めたため、俺たちが食べる分だけ獣達の狩りしたりな。ことごとく本能とやらで察知されるのか、最近俺の姿を見るだけで脱兎のごとく逃げる。それでも、獣か。と思わないでもない。しかし、いたずらに追うのも如何なものと思い。よほど、腹を空かしてなければに、した。川魚も美味いからな。でも、魚ばかりも飽きる。

敵達に襲撃されたりするが、刀装兵と返り討ちにしたりな。あれが絡んで来るのは、俺がこのようになった最初の頃、今より荒れている上に、行く道を遮ったのでつぶしたのが原因でもあるが

何処ぞの小狐丸が手土産片手に勧誘してくるのを躱す。勿論、手土産は回収し代わりに資材を渡してやる。あやつの本丸も真っ白いといえんからな。



そんな日々を刀装兵達と過ごす。爺は世話になっているから何かこやつらに出来ないものかと考えていた。そんな矢先。

刀装兵達と昼寝してその間に早く目が覚めた俺は散歩していた時だ。そこで歴史修正主義者どもの部隊に遭遇する。いつもは囲まれ奇襲されたりするが、今回は違った。俺から発見したのだ。見た所無傷でこれから出陣する出で立ち。ふと敵の刀装兵に目に止まる。投げられる投石や弓やら何やらを躱しつつ、相手方とともに臨戦態勢をとる小さな存在に思った。

(そういえば・・・こやつらも刀装を所持していたなーーー見た目は違えどあれも刀装兵、か)

今後、刀装を作る機会などないだろう。知り合いの審神者にわざわざ作ってもらうのも、なぁ。その他にも方法もあるかもしれんが・・・刀装の見た目どうこう現状、俺の判断を咎めるものもおるまいて。




自身の本体に手をかける。

『少しばかり、頂いても構わんーーーよな?』

結論、強奪しよう。


宣言すれば何故か知らんが退却し始める歴史修正主義者達。さっきまでの勢いは何処にいった。爺(刀装なし)一振対六振(完全装備)ではないか。

気概を見せい。と思いつつも気合入りすぎて相手の薙刀をぶっ飛ばしてしまった。

しかし、あちらの小さいのも愛いではないか。


『熱いな。本気になるか』





「・・・という訳だ。十八個ほど持ち帰りに至る」
「ぴっーーー!」

突拍子ない!とそれから敷地内に刀装兵と言えど敵を招くなんてと怒られる。仕方ないので正座して手前に座る。

降ろした敵の刀装兵十八個は固まりでぷるぷる震えながら威嚇している。此方の二つの刀装兵が、落ち着かせるように接触を図っているのを、横目で見てたら目の前にいた刀装兵が小さな手で膝をたしたししながら、話を聞いているのかと抗議していた。すまん、聞いてない。

「ん?それで歴史修正主義者達はどうした?・・・と?刀装兵だけ剥いでそこらに放置して帰ってきた。・・・折ってはないぞ?矜持とやらがあるなら、それは折ったが」


うわぁ・・・という目で刀装兵達に見られた。敵のーーー紛らわしいな赤眼と呼ぼう。赤眼も睨んだように見られた。

む?名付けが安直か?俺とて加減はしたつもりなんだがな。




数日過ぎた。

刀装兵達と話し合い、拾ってきたからには仕方ないと最後まで赤眼を面倒みようという形で妥協する。最初こそ困惑していた刀装兵達もすぐ適応し赤眼のいる生活へと慣れたようだ。今では赤眼達にここでの生活を教えるまでになった。

やらかした本人が思うのもなんだが、敵だった刀装兵をなんだかんだ許容しているのは良いことなのか悪いことなのか・・・うむ良いことだろう。

逆にずっと困惑しているのは赤眼達の方だ。当たり前か。あちらからしたら敵陣に連れてこられてきたのだからな。警戒もするだろう。一部、感化されて刀装兵達と仲良くし始めたが仲間内で亀裂ができつつあるようだ。



ある晩、赤眼達が押入れの中で話し合いらしきものをしていたのを盗み聞きした。

『ぴっーーー!(あの野郎、舐めやがって!おら、とっとずらかるぞ!)』
『ぴっ!!(一部、馴れ合いすぎだ!なんで仲良くしてるんだ!)』

『ぴっーー?ぴっ!(酷いことされてないし?もう少し様子みよう)』
『ぴーーい!(さんせーい!今度、ごはんとやらくれるって!)』
『びーーーー!!!(ものでつられるなあああああああ!!!)』

『ぴ・・・(帰りたいよ・・・ぐすっ)』
『ぴー(おおーー、よしよし。泣くな泣くな)』

憤り立ち今にも飛び出していきそうなもの、様子見のもの、モノにつられて楽しそうなもの、帰りたいと願うもの、様々な反応だ。帰りたいと願うものには、少し悪いことしてしまったが諦めてくれ。
あの個性的な刀装兵達と過ごす内に、なにか言いたいことがわかるようになった俺は赤眼達の会話も容易く理解できた。夜目のきくほうだからか、真夜中の押入れでも中の様子がわかったしな。

その後、覗いていたのがバレて攻撃されたり卒倒されたりと小さな騒動が起きた。





「米が炊けた。配るぞ」

それぞれ好き勝手にしていた刀装兵と赤眼達は、ぱたぱた走って近寄り列をなす。
小さな米の盛りを手の上に箸で渡して配っていく。各自、好きなように食べていた。

結果的に餌付けをしたらほぼ陥落した。食の美味しさには勝てなかったらしいな。一個ほど警戒しているが。

小さいのがちまちま食事している姿を見て満足し台所へと戻った。
刀装兵達によって、増築されたはここはこの小屋にしては比較的な綺麗な場所だ。訪れていた通いの小狐丸がそれに巻き込まれていたが、あいつもなかなか良い仕事する。

そこで、ふー・・・と一息つきながら茶を飲んでいると、何やら気配が。
頬に何か刺さるが、刀だろう。小さいがな。

いつの間にやら肩にいた一個の赤眼は、可愛らしい殺気を放ちながら頬ぶすぶすさしていた。
うむ、何度も刺されると痛いな。

「お主も懲りんのう・・・」

赤眼を摘まむとぷらぷらしながらも抵抗しているのか手に持った刀を振り回す。ははは、当たらんなあ。それが気にくわないのか冷めぬ興奮状態の赤眼に、どうしたものかと考える。


普段は隠してあるが、ぶわりと黒い靄を纏った。歴史修正主義者のそれとまた違うと思うが、似たものを感じるのか大人しくなる。他の赤眼や刀装兵達はなんだなんだと、物騒な気配を感じたのか此方に来た。俺と摘まれた赤眼を見るとあーーと、こくこく納得したように全員頷く。

それから、ぞろぞろ赤眼達が近寄ってきてひっつきはじめる。
この黒い靄は落ち着くらしくこれを纏うと嬉しそうするのでたまにだしたりしている。



その様子を刀装兵達はなんだかなーと思いながらも仲良くやっていけそうだと思っていた。
三日月さんが、幸せそうなので良しとしよう。



【三日月さんは刀装兵を強奪する】




「ぴっーーー・・・」

たまに刀装兵達が、何処か遠くを見ているのを知っている。
・・・此処に来る前は、沢山の仲間達に囲まれていたのを色々と聞いたことがある。故郷を思い出すこともあるのだろう。刀装兵達に、もし帰りたいのなら残る僅かな霊力を辿り娘の元へと行けるぞと言えば、首を振り大丈夫と言うのだ。

自分達が決めてあなたの元へと来た。今更、戻るつもりはないのです。
毎日、楽しいです。たまに、たまーに思い出してしまうのです!

小さな体をわたわたして俺に訴えかける姿に、優しい暖かな気持ちになる。
俺は、そうかと呟き。その小さな刀装兵達の頭を撫でた。

というのがつい最近あった出来事だ。


それ以来、俺に隠しているらしいが刀装兵の寂しそうな小さな背中を見つけた時。
何かしてやれないだろうか
と日に日に思うようになり、ふと閃いた。

ーーーー寂しさを感じさせないほど賑やかにしては?

そう考えていた矢先に、あやつらと遭遇したのだった。




刀装だけ剥がれぼろぼろ状態の歴史修正主義者達が発見され、たびたび某掲示板で話題に上がっているのを当の本人達は知る由もない。




15/7/18

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