刀装シリーズ | ナノ






刀装兵が愛おしい(1)



ある日、住処にしている厚樫山を散歩中に面妖な刀装兵を発見した。

捕まえてどうしたものかと悩んでいたら、刀装兵がどこか急いで行こうとする。
暇なのでついていけば、持ち主であるらしい人間の娘が襲われていた。
刀装兵に請われ助けたが・・・この娘も面妖でなにやら縁≠持ってしまったみたいだ。
まあ、たいしたことはない。

迎えにきた刀剣男士に引き渡しその娘とあっさり別れ、その件はそれで終わるはずがーーー。
どうやら、懐に忍びこんでいた三つの刀装兵。


俺と一緒に暮らすことになった。



長い間、一人で住んでいたせいか少々戸惑うが、これらと暮らすのはなかなかに楽しい。



刀装達がここに住み始めた頃だ。

ことの発端は、そわそわと俺の普段の様子が気になるらしい刀装達が、たびたび尋ねてきたこと。




【どんなせいかつしているの?】



俺は、住処にしている使われなくなった古い山小屋で暮らしている。
人間との生活に嫌気がさしているので、様々な問題があるもののこの静かな場所を俺は気に入っておるぞ。でも別に、絶対に関わらないとかぎらない・・・がな。

一日木陰でぼんやりしたりな、寄ってきた小動物達を構ったり、ふらりと山を散歩したりする。
途中でうっかり、探しに来た者達に見つかる場合があるが、雲隠れするから問題ないな。

ん?どうした?

そんなに簡単に撒ける?と?

うむ、問題ない。俺はじじいだが、これでも刀剣男士歴は長い。あまりいい記憶はないが、だいぶ出来ることがあるんだ。じじいの神速には勝てぬぞ?
それに、この山はもはや俺の領域といっても過言はない。地理はこちらが詳しい、しかし・・・最近はなかなかの策を持つ者が増えてきてのう。危ういこともあった。

おお、なんだ頬をぐりぐりと急に。

ん?労ってくれるのか、あんまり無茶しないでね?
はっはっはっ、よきかなよきかな。こう、心配してくれる者がいると嬉しいものだ。・・・礼をいう。感謝する。

でも、あやつらも悪い奴らではないのだ。不敏もいれば、使命感に満ちているものもいる。
・・・俺を欲するものが多いのは天下五剣の宿命でもある。どうしようもないな・・・。

これ、泣きそうな顔をしておるな。頬を撫でるか。

くすぐったいな。

大丈夫だ。俺は弱くはないぞ?弱ければここで一人でおれんからなあ。
なに、いざとなったら俺の真剣必殺(肌蹴ない)が炸裂するから大丈夫だ。

む?口は笑ってるのに目が笑ってない?観察眼があるのう。うむ、よきかなよきかな。

はっはっはっ、怖がらんでいい。




じたばたと逃げようとする刀装兵の背を摘む。じっ、とみると諦めたようにぷらーんとしている。

表情がころころ動くさまは見ていて飽きない、人の様な仕草をとることに少し驚くが、自身を思っての行動の様なのでそれがなんだか嬉しい気持ちになった。

これから、どういう風に今までの日常が変化していくかな。

淡い期待に、笑みが溢れた。





【ごはんはどうしているの?】



空腹はあるが食べなくても平気だからな。
たまに知り合いの者が差し入れに持ってくるのをつまむくらいか?

食べなきゃ駄目、とな。
栄養は関係ないぞ?

お腹すいた、とな。
なんと、お主ら食せるのか。

狩りにいきましょう、とな。
何を狩るつもりだ?

・・・お主らが腹を空かしてるだけではないか。
はて、どこか意地汚さあるような・・・?

作った人に似た、か。
お主ら言うなぁ。

どれ、試しに獲ってこようか。しかし、俺は料理というものをしたことがないからなわからんぞ、どうすればいい?丸焼きくらいなら出来そうだが。

調理はこちらでやる?
あい、わかった。それにしても、お主らは色々出来るな・・・。

流石に、解体は出来ない?
では、解体は俺に任せてくれ。これは結構、得意だ。

ん?なんで黙る?





外に出て、何刻か時間が経つ。
途中、刀装兵が獰猛類に襲われる事件が勃発するが未遂に終わり、暫く交戦していつの間にやら手懐けていた。

大ぶりな鷹のつがいの背に跨る二つの刀装兵の姿は歴戦の戦士のようだ。

肩に乗る一つの刀装兵に、・・・あれはなんだ?と問えば、前の場所にいた頃は鳥類に乗って見廻りをしてたという返答が返ってくる。

・・・刀装兵とういうのは何だったのか。
自身の存在を棚に上げ、三日月は思考するのであった。


その後、中ぶりの猪が突進してきたのでそれを捕獲することにした。
刀を構えていざ捕まえようとすれば、全速力で逃げられた。突進してきたのはそちらだろう。まるで、化け物を見たように・・・まったく。

ちっ、骨のない猪だ。と呟けば、刀装兵達も賛同するようにこくこく頷いていた。

仕方ないので、川で魚を釣った。
火をおこし、貰った塩を使い串刺しにして塩焼きにする。
一連の動作を、慣れたようにこなしていく刀装兵達。火の加減を見る表情は真剣だ。
何かおかしいと思うが、まあ器用だと思おう。

塩の匙加減が絶妙で、口に含むと少々魚の生臭さがあるが気にならないくらい美味だった。

一匹の魚を仲良くわけて食べる刀装兵は、美味しいでしょうと誇らしげだった。
なんでも、食糧の鮮度と調味料は偉大らしい。
俺もそう思った。



久方ぶりに食欲ががっつり刺激されたので、これは次回から対策やら立てねば。




【ていれとかどうしているの?】




昔は苦労したが、最近は傷を負わなくなった。

歴史修正主義者かな?
あいつらな、俺は別にどうもしようとしないのに・・・これでもかと奇襲や攻撃をしてくるんだ。集団でだぞ?こんなじじい一人に・・・。
まあ、ぶちのめ・・・返り討ちにはしているが。

・・・なんとなく大丈夫そうとは思った?もし今度襲われたときは加勢する、か頼もしいのう。頼りにしてみようか?

新しい勢力の奴らかの?なかなかに手強い。あれは、時と場合によるかな・・・危ない時はさすがに撤退する。
滅多にならないが重傷になった場合は、知り合いに変わった審神者がいてな、それに頼みに行く。もちろん、謝礼もなしとは悪いからな拾った資材とかを渡す。

その人は、貴方に興味ないの?か・・・もう既に別の俺がいるからな。逆に、他のいい審神者とやらを紹介してくるぞ?断るが。

それ、と修羅場にならないの?
ずけずけ聞いてくるのう・・・。最近は良好だぞ。


という訳でな、・・・そうそうにお主らを剥がさせない、安心しろ。





現状、俺の存在は、長いこと荒御魂という様だ。なのに、時間が幾らでもあったのか様々なものに揉まれながら、冷静に判断できるまでにはなっていた。

異様な神気が不安定なのか、たまに暴れるが、人(一部以外)には向かってはいないのでそれが幸いかな。
人には酷い目に遭わされてきたが、根本にはまだ人を好きでいる自身がいる。



この神力のせいか、傷つくことはあまりなくなった。基本は手入をせずとも動けた。
それは、もはや別のモノになっているのかもしれぬなぁ。

ただ、かつてのーーー刀剣男士として俺を顕現させた、主との約束が今も尚、支え続けている。

側に居る、刀装兵を見遣る。俺の影響を受けているか受けていないのかわからないが、未だ存在し続ける小さき者達。



刀装は刀剣男士を守るものーーーでも俺とて御前達を守ってもいいだろう?



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