刀装シリーズ | ナノ
閑話 カラクリ屋敷にご用心!
「お、同田貫!驚いたか?」
ごく自然に廊下の壁から現れる、白い物体。
「あ、同田貫君。御手杵君知らない?」
御手杵を探しているのか、目があった俺に尋ねてくる燭台切光忠。ただし、床下からの登場だ。
「はー、よっこいしょ。改修工事終わったー」「大将は、頭をぶつけまくってただけだろ?」
天井から梯子を下ろし、呑気に会話をしながら降りてくる。後頭部にたんこぶをこさえた審神者と、道具を手に持った薬研藤四郎
それを見て、我慢しようと思ったが叫んだ。
「てめーらああああ、普通に出てこいよっ!!」
ここに来てから、何度目かの光景だった。そして、当然のごとく道具を戻そうと離れていく鍛刀の妖精達。てめーらもだ。
「いきなりどうしたの、同田貫くん?そんな大きな声だして、格好良くないよ?」
「床下から登場した今のてめーに言われたくない」
「おいおい、俺は無視かい?表情くらい変えてくれよ」
「あんたはいつもだろ!この本丸どうなってやがんだ!」
不思議そうにいう燭台切。ここに来た当時は俺と同じような反応していたが、それもいつの間にやら。なんで、お前はそんなに、馴染みすぎだろ。
そして、出入り口以外からの登場が定着しつつある白い物体もとい鶴丸国永。こいつに関して、もうできるだけ反応しないようにしている。厠の壁からでてきたときには、叩き斬ってやろうかと思った。
最近はましになってきたが、やる時はやるじいさんなのに、な。
「対政府の野郎が訪れた時用の罠だって、言ったじゃないすっかー。念のために、点検して改修工事を妖精さんとやっちゃんとしてたんだよ」
「大将、以外と大工まがいなことできるよな。今回はたんこぶしか作ってないけどな」
「爺ちゃんに日曜大工くらいのことなら仕込まれたけどね。まあ、柱にぶつけまくってほとんどできなかった」
「大将は自滅で、最悪の危機を回避することあるから悪いことばかりじゃないぜ」
「へー」
穏やかに会話するチビ共に、なんか、急にどうでもよくなってきた。こいつらと話していると脱力する。
この本丸の(正式ではない)審神者のチビと薬研曰く、色々と仕出かしてきた政府の人間がこの本丸を訪れてきた際、逃がさないように至る所に仕掛けを施してるみてえで、中も外も罠の巣窟になっている。どこぞの誰かさんが喜びそうな場所だよ。むしろ率先して改築しまくってるが。それよりもなんで鍛刀の妖精がそんなことしてるんだ。お前は、刀を作んのが本業だろうと思ってしまう。鍛刀の妖精を見ていたら、こちらの視線に気づいたらしくコクっと頷いてグッと親指らしきものをたてる仕草をする。なんの了承の合図だ。
「なんか作って欲しいのあったら言ってくださいね!出来る限りの努力はしますよ!て言ってるよ」
「いや、そんな視線を寄越したわけじゃねーよ。毎回思うが、なんでチビはこいつらの言葉?を代弁してるんだよ」
「だいたいは、なんとなくで気持ちを汲んでる」
「お前の適当さに・・・もういいわ」
「審神者ちゃんは、よくそんなで今まで生きてこれたよね」
「私にも、よくわからんのです。しいていえば、爺ちゃんと婆ちゃんのおかげかな」
「さり気なく、どこかで聞いたことあるような台詞をいうのやめようか?大将? 」
「君のおじいさんとおばあさんを尊敬するとともに、どうしてこんな自由に育ってしまったのか」
「鶴丸君が言うのかい?」
あの一件以来、以前より話せるようになった子供との会話は、そんなに嫌ではないがこう、ゆるゆるになる感じが慣れない。だから、他の連中の適応力はなんなんだよと思う。最近はあの大倶利伽羅でさえも適応しつつある。奴の場合はその他もろもろの影響が多いが。以前とだいぶ変わったな。
「はあ、俺は御手杵と手合せあるから、もう行くわ」
「あ、そうだった!これ渡しといてよ、薬!」
「はぁ?なんだあいつ、どっか悪いのか?」
「昨日、食べすぎて食あたり起こしてるらしいんだ」
「あいつ寝とけよ」
食あたりて・・・この本丸の空気にやられているのは、あの男もらしい。そういえば、食料調達を一緒に行ったことあったが、普段の様子からずいぶんと変貌していた。あれか、これもあの審神者の影響か?
「渡しとく」
「ありがとう」
断る理由もないので、渡しておこう。そして、今日の手合わせは取りやめだ。脱力した気持ちを引き締めながら、道場の方に一歩踏み出した。
「ああ、しまった!同田貫!」
突如、浮遊感。そのまま俺は落ちた。
「新しい仕掛けを施したのを、仕舞い直すの忘れてたぜ」
「鶴さんそんなこといってる場合!?また作ったの!?」
「同田貫君ーーー!」
「深すぎないか、これ」
救助されてから、鍛刀の妖精にこってり絞られてる鶴丸を見て怒る気力は失せた。今剣と鯰尾が爆笑してる姿を見て、平和なんだなと思うことにしたぜ。以前の本丸との差がありすぎる。疲れた。
15/5/28
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