刀装シリーズ | ナノ






閑話 審神者と粟田口の日常



「暇だ」

ダラシなく部屋で寝そべる我らが大将。槍兵に爪楊枝でつつかれながら、呟いた。


「さっきまで槍兵相手に、えっと、なんだっけ?しんげきのきょじん?ごっこして、追いかけまわしてた癖に、それ酷いんじゃないの?」

大将をちらりとも見ず目の前の画面に釘付けな鯰尾兄が、呟きは聞こえたのかそれに返事をする。
この大将、暇だからといって槍兵達相手に、きょじんなるものを演じて追いかけまわしていた。逃げまどう槍兵達、可哀想なのでやめさせようとしたら、大将がぱたっと倒れて寝転がり今に至る。

「ごっこ遊びもネタが尽きてきたのです。やり過ぎると刀装ちゃん達が、駆逐してやる!てガチで反撃にでるからやめた。それに、外と連絡が取れないからさー、暇潰しのものが取り寄せられないし。唯一、室内で暇を潰せるものがどこかの刀様に占領されてるし・・・ね? 」

半目で恨みがましく兄を見つめる大将。彼女は気づいているのだろうか、その槍兵達が反撃の準備をしているぞ。

大将の言葉を無視する兄が夢中になって弄っているのは、大将のノートパソコンだ。この前、俺っちが電波や電気が通らないこの本丸に、使われず置物状態のまま置いていたのを、試しに、神力を少し注いだらインターネットというものに繋がった。試してみるもんだな。

それを知った大将に、それを自由に使えるようにしてくれ!とものすごい表情で頼まれ仕方ないので、受信機として俺っち達が一緒にいることを条件に設置した。機械関係を扱えそうということで、鶴丸・燭台切の旦那、鯰尾兄と俺っち含む四名が着任している。後の奴らは機械が苦手なので触れないことにしている。一番、気をつけにゃならねぇのは同田貫の旦那だ。燭台切の旦那から聞いたが、以前いた所で前科を作ったらしく本人はもう触りたくないそうだ。

「しょうがないだろう?さに子が触ってるの一緒に見てたら、面白そうだったんだからさ〜、あー、もう他のとこの俺の兄弟達が面白い!可愛い!一兄最高!・・・俺たちの所も最初からこうだったらよかったのにな、まっ!過去なんか振り返ってもしょうがないけどねー」

鯰尾兄が画面から目を離さないまま楽しそうに喋る。その表情は、あの頃とは違い生き生きしていた。掲示板という色んな人間が、自分のところの刀剣男士の様子を書き込むものがあるらしく。そこに書かれた、俺っち達の兄弟の出来事が鯰尾兄とって楽しみみたいだ。自分でも触ってみたいと、教えてくれと、大将に言ってきたらしく、やり方を教えて覚えてからだいぶはまった?んだと。大将が、困ったような嬉しいような表情で俺っちに教えてくれた。

それから、俺っち達の本丸は元ブラック本丸といわれるところだった。今でこそ、少々問題はあるものの平穏暮らしているが、折れていった弟や兄達のことを思うとたまにどうしようもなくなる。だからこそその掲示板の出来事達が愛おしくて尊い。俺っち達に直接関係なくても、いっしょではないけどあいつらが別の場所で幸せに暮らしているのならと思う。すべてが平穏ではないみたいのもあるが、きっとそれはどうしようもないのだろう。 せめてそれが救われることを祈ってる。

しんみりとした空気になりつつある一室に、それぞれ槍兵達が突っ込んできた慰めに来たようだ。落ちこまないでというように、たしたししながら見つめてくる。

この小さな刀装はいつも俺っち達を支えてくれるーーー空気が和らぐのを感じた。

ぱたんっ、とノートパソコンの画面を閉じる音がした。鯰尾兄の方を見ると、にかっと笑ってる。

「さに子、暇て言ってたよな」

「え?何?いきなり!?何かする気?!!」

話を変えるように、鯰尾兄がにこにこしながら大将に近寄った。姿こそ見えないものの声音でよからぬことを察知した大将は、後ずさりしながら俺っちの方に逃げて来た。

「やっちゃん、絶対あいつ、よからんことする気だ!馬糞とか馬糞とか!」

「馬糞=鯰尾兄に結びつくのはやめてやれ、大将」
「まるで俺の印象が馬糞になってるからやめてくれる?」

「さすが兄弟似たようなこと言いおって」

はもりながら似たようなこと言う俺っち達に大将が感心したようにいう。あいかわらずどこかずれた人だ。

そして、鯰尾兄が気にせず喋った。

「新しいごっこ遊びでもする?」

鯰尾兄がなにか思いついたのか、提案をする。なんだかんだ、兄もこの人を構うようだ。



楽しそうに笑う大将をみて、鯰尾兄も俺っちも表情を緩ませるのだった。
槍兵達はその光景を、机に座りにこやかに笑っていた。


15/5/28

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