刀装シリーズ | ナノ






絆されたのはこちらが先

同田貫正国は、燭台切光忠ほど前の審神者に未練や執着などなかった。
大倶利伽羅も自分と同様だと思っている。

自分を呼び起こした主≠ネので、一応責務ははたしたつもりだ。近侍も愚痴は零すがちゃんとやってるし、内番はしなければ、後々困るので真面目に取り組む。
穏やかな性格ではないから、近侍はある時されなくなった。まあ、だろうなと思った。
その代わり、望んでいた出陣が多くなり密かに喜んだ。女の前で、大っぴらにあらわすと色々めんどくさいからだ。
それもすぐに、あの人間が例の刀に傾倒し様子が変わっていった。
中傷・重傷ともかく、擦り傷くらいで騒がれちゃ実戦刀としての面目が丸潰れだと思っていた、それでもあの人間の厚意なのだと理解はしていた。
ーー優しい人間だった。

そして現状をかえりみれば。

あっさりと態度を変え、一つの部屋に押し込まれ中傷・重傷のまま放置された同士の姿。
キズに耐えきれず折れた刀の姿。
ーー人間とは脆いな、それは俺たちもか


それから、数日後。
何度目かわからない出陣で部隊か崩壊し、残りの二振とともに移動した場所で折れるのだと、同田貫は覚悟し、気を失った。




なんの因果かそこに住む審神者のガキに助けられ、その本丸で他の六振と、燭台切、大倶利伽羅と暮らすことになった。その中に御手杵がいたせいか、それなりに馴染むのは早かった。あとは、中々いい動きをする刀装兵の存在も相まった。
ガキも他の者とちょっかいをかけにくるので、会話できるくらいにはなった、はずだ。つい辛辣な態度をとってしまうが、あまりガキは気にしてないようだ。図太い性格に同田貫は嫌ってはいなかった。少し・・・かなりあほの部分も。個性的な刀装兵もあのガキが作ったというから、もう深く考えないことにした。

ここの本丸は通常の本丸と大きくかけ離れていて、出陣を行ってなかった。
最初こそ、うんざりしていて当分は戦場に行きたくねえ≠ニ自分らしからぬ考えもっていった同田貫だが、平和すぎる日常と、騒動は起こってもこう気が抜けるような出来事ばっかり、御手杵が大量に魚を獲ってきたとき、二度見した。お前、槍しか突けなかったんじゃなかったのかと聞くと、意外とできたと答えられ。

(突いて・・・獲ってきたのか・・・)
この心境、察してほしい。

珍しいことに本丸内で戦闘になるが、あまりの手応えのない侵入者達に物足りないなさを感じはじめた。しかも、あいては最近かなり嫌そうにしかたなそうに来るのだが、舐めてんじゃねーぞと暴れまくったら、破壊される前に戦略的撤退なるものをする。それも、まあそうかもしれない、鶴丸国永が白丸から赤丸になるのでだいぶ鬱憤が溜まっている。前に人数の都合上、出陣もできないと言っていたからな。

鯰尾藤四郎が、逃げるなら来なけりゃいいじゃないですかーと冷たく言い放ち、あいつらはこっちにもやらなければならないことがあるんだよ的なこと言い逆ギレしていた。あちらさんにも事情があるようだ。





そんな日々を送っていた同田貫はふっと思った。
(なんか染まりつつあるよな、俺)
この暮らしは、それなりに同田貫は気にいっていた。でも、同時になんだか物足りない。
それである日あのように発言した。他の面々も興味をもち最終的に全員、賛同し鶴丸がまとめた。


ただ、一人。あのガキだけそれに関わらず刀装兵と戯れていたのになぜか苛立った。
ーー興味なさそうだ。俺やお前に関わることだろう
古株組は長い付き合いがあるせいか気にしておらず・・・でも少しはちょっかいかけようと鶴丸が何か企んでいた。燭台切や大倶利伽羅も表面上では平然としていたがどこかそわそわしていた。

自分はこいつらほど、あのガキ・・・人間と、うまく関係を築けていないと思っていた。人間の人柄をあまり把握しきれていない。自分のことを怖がっていないことや避けられていないことは知っている。他の刀剣とも悪くない関係を築けていると思う。

ただ、あの人間が主≠カゃないのが、この奇妙な関係にどう関わればいいのか同田貫にはわからなかった。いつか帰るかもしれないーーー自分達から去る人間に。


作ったのは自分だからか?それを刀装ばかりに気にかけている人間に、つい言いすぎた。



鶴丸がそのことを伝えると、あっさり了承しどうすればいいのかと聞いてきた。
他の面々の口調が刺々しいのは少なからず思うことがあるからだろう。急に決められたことに反論しない人間に不満そうな表情をしていたーーなにか言って欲しそうな顔してるじゃねーか

それに困惑している人間は刀装兵に寄られて嬉しそうな表情をしている。
なんだお前は結局、刀装兵が居ればいいのかと・・・思わず思ってることをぶちまけてしまった。





それが人間ーーチビの本音を赤裸々に語られ、聞いてしまうことにはなると思わなかったのだ。
おまけに、全員がそれぞれの出来事を暴露され恥ずかしさのあまり悶えていたのはいうまでもない。



ーー純粋な言葉ほど威力が計り知れないと、知ったのだった


話さなければわからないといったもんだ。いつか去る存在としても歩みよるのもーーーまた。







後日、チビにあやまりにいこうと探してたら鯰尾との会話を聞いてしまい再び悶絶したのは、鯰尾にばれたくない。




【同田貫正国は客観的に思考した】




15/5/13

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