刀装シリーズ | ナノ






人刀関係すれ違い未遂1



事の発端は、同田貫正国がーー戦いに行きたい、と呟いたことだった。





燭台切光忠ことお母さんと薬研藤四郎による自作醤油・味噌(おかず味噌も有り)の試食会を催していた時である。宙に浮かぶ、味噌のついたきゅうりが何処かに消えながら、それを食っているだろう同田貫が呟いたのだ。

ーーほう?そりゃ、出陣したいってことか?

呟きを聞いた、鶴丸国永は愉快そうな声音で返す。先ほど獲ってきた魚を刺身にしたものを醤油につけながら食べている。これもまた、何処かに消える。

ーー同田貫君、いつかは言いだすだろうと思っていたけど、ーカ月かぁ
ーー同田貫の旦那、ここにきた頃は出陣させるつもりか?て言ってたが?
ーーここ最近、暴れたそうな感じがしていたもんなぁ

呆れたような口調でいうのは、小皿に食べ物を取り分けているお母さん、それをみんなの元に運んでいる薬研、同田貫と同じようにきゅうり味噌を食ってる御手杵だ。御手杵はどちらかというと分かるぞというニュアンスである。

口を開いてない面々は、味噌のタルのフチから覗き込んで、中に落ちってしまった刀装兵の救出作業中である。私こと審神者もその輪にいた。 小夜左文字と今剣が救出しているのを、大倶利伽羅がそわそわしながらちらちら見ている。鯰尾藤四郎がその様子をガン見していた。 味噌の中で、上半身埋まり下半身だけ見えている刀装兵の状態は、某映画で見たことあるような気がする。とにかく早く引っこ抜こう。

ーー違げーよ。出陣したいとかそんなじゃねえよ。体が鈍って仕方がないからだ
ーーああ、それは分かるかもな。こう、やっぱり毎日、本丸内にいると戦場で槍で突き刺したくなるよな
ーー血気盛んだねぇ、ま、俺も返り血浴びて、鶴になりたくなる気持ちもあるな
ーー馴れ合うつもりはないが、同感はある
ーー旦那達が鬱憤を晴らすせいか、渋と、諦めず襲撃してきた歴主達もめっきり減ったしな。そもそも、結界は張ってるはずだがなんであんなに来るんだ?
ーー審神者姉様の護衛にまわってるから、あまりいかないけど見てるだけでも不憫に思う。薬研それ僕も思う

会話の雲行きがきな臭くなってきたのを、必死に聞こえてないフリをする。たとえ、刀が輪になって話してる、シュールな光景でも。

何度か本丸内に侵入してきた憐れな歴主さん達をカレらが血祭りにしていたのを思い出す。前は大量の血を見ただけで気絶しそうだったけど、今は慣れつつある自分が怖い。こうやって、図太くなっていくのだろうか、人間というのは。 それにしても、薬研の言った通り大きい組が暴れ足りなすぎて暴走するから、刀装兵部隊が手持ち無沙汰である。本丸にいる動物達に乗って見まわりとか、雑事をちょこちょこ手伝ってもらっているが暇を持て余していた。




一部餌付けのし過ぎで少しふくよかになり・・・現在進行形で味噌に埋まる事件が勃発中。
元は刀に付ける装備だが、ウチの刀装兵は結構自由に動けるので刀達とお互い相談しながらくっついてるからなー、でも、刀達はそうそう刀装を剥がさないから少し安心してる。 剥がす=いなくなるて知ったとき、なんだってえええ!?と絶叫して、薬研にはたかれ、刀装ちゃん達からお叱りを受けて落ち込んだ。あと、歴主(歴史修正主義者の略)さん達はなんで来るのかは私も知らない。ただたまーに鶴丸が不審な行動をしていたのでもしかしたら・・・いや考えんとこう。真相は闇の中へぽーいっ!






「出陣か」

無事、救出し終わりお母さんに味噌の件を報告する。ウチは大食漢が多いし、それを試食用のタルだからすぐになくなるよと朗らかな雰囲気で言ってくれたので、ホッととする。よかった。

それから、ぽそっと一言洩らした。
それを聞いた今剣が、話しかけてきた。

ーーどうかしました?サニワ?
「んー、平和ぼけしてる私からしたら争いはあまり好まないけど、やっぱり刀的には戦いたいんだなぁ、って」
ーーそうですね、なんだかんだありますがぶきですからね。ぼくたち。

そう答える、今剣もどこかそわそわしていた。会話に入りたそうにしている。
鯰尾もお母さんも興味深そうに聞いていた。



薬研の講習で、審神者のことや刀のことを学んだのが頭に浮かぶ。

(審神者のことは少し分かるけれど。刀のことはさっぱりだ)


審神者

2000年代に生きる私の時代から、二百年後に歴史修正主義者というヤバイ組織が歴史をかきかえようとして、それを阻止し二百年後の政府が対抗する為に、刀剣男士ーー刀の付喪神様、物を励起する技を持つ特別な人間を探して起用し、日夜、本丸という拠点で刀剣男士と共に指示をだし戦っているーー存在。 例外もいるらしい。

まさか、私の時代で非科学的だとされていたものが、200年後には国家主導で行われているのだからびっくりである。霊力があるとかないとかで判断されるらしいから、時代の流れはすごい。

私は力があるのかというと、一応あるにはあるらしい。たぶん政府に誘拐?されたとき言われたような気がする。薬研に教えられてから、あ、確かそんなこと言ってたっけと思いだした。 私自身は、生まれてこのかた幽霊や妖とか神様とか見たことなんかなかったから、実感がわかなかった。
しかし、ここに暮らしはじめてから、そういえば現代にいた時もたまに妙なことがおきていたなと気づいた。なにか自分以外の気配がしたり、少し物の位置が変わってたり、失くしたものが机に置いてあったり、と自分の気のせいか爺ちゃんや婆ちゃんかな?としか思っていなかった。
その時にその件をたずねた私に、婆ちゃんが人の常識では考えられないモノもあるのよと意味深に教えられたの忘れていた。 その日は一緒に寝てもらったな・・・懐かしい。不思議なことを感じとれるくらいには、私にはあったんだなぁと、でも、無ければこんなことにはなっていなかったよなと思ったりした 。

当時、薬研にそのことを言うと、審神者には極端に視える力が欠けていて、力は人並みにあると言われた。それから歯切れは悪かったけれど、私には時間はかかるが周囲を鎮める力があって、ゆっくりとソレを受け入れるくらいの精神力が備わってるみたいだ。 言っていることがよくわからないと答えると、薬研がため息つきながら投げやりに。急がず時間かければその時、その時に審神者の中で必要な能力の開花が起こって対応するから大丈夫だと言われた。
この前、誰かにそういうまじないをかけれるてるて明かされてビビった。誰かって誰?もしや婆ちゃん?爺ちゃん?と自分自身、納得しといた。




(あいかわらず、ヒトの姿には見えないけれど特に困ってないし。時間をーーーかければ・・・あれ?私、何時までここにいる≠ツもりなんだろう?)

ーーということだ、君はどうするんだ?

わきあがった疑問を考えようとしたとき突然、誰かに話しかけられた。




「え?何が?」

ーー聞いてなかったかい、前にも説明したろ?きみは審神者だ、俺たちは正式な主人≠ノ据えてないが、一応な?きみにも関わることだしな

話しかけてきたのは鶴丸だった。

今まで、内番・食料調達・手入と刀装の資材集めの遠征、そこに出陣を加えようかという話らしい。一応、私が審神者だから立ててくれてるようだ。でも、私、審神者て名乗ってるけど来た当初はただのオカルト的な清掃員的なもんだから、後付けで審神者に昇進?だよ。私が刀達を呼び起こしたわけじゃないし、もし主人ていわれても何していいかわかんないし、命令できるような人間じゃない。 みんながしたいようにして、それに私がなるべく合わせればいいんじゃないのかな?今までどおりで。

どう答えたらよいものかと、黙ってたのがいけなかったのか次々口を開きはじめた。

ーー大将、今まで六人しかいなかったからな、遠征も半分の人数で行っていただろう?太刀が三人増えたからこれを機に戦場に復帰しようかと思って
ーー元々、戦意みたいなものがあったからな、同田貫が来てから結構、戦場に行きたくてさ
ーー政府のノルマ?ていうのもないから自由にできるし。万が一、重傷負ってもさに子も手入してくれるよね?
ーーぼくらたんとうは、そこそこのれんどしかないので、やっぱりつよくなりたいのです!
ーーこの本丸少し不安定。遠征とはまた違うから長く離れることが多くなる、審神者姉様が危険な目にあう可能性が今より高くなる・・・守るけど

ーー帰城や行軍は俺たちで判断するぜ。お前にはわからねえだろ?
ーー多少の擦り傷で手入は必要ない
ーーもう、みんなきつく言いすぎてないかい?審神者ちゃんには、少し難しいんじゃないかな?そう慌てなくても

ーー今までと勝手が違うからな、俺たちが君に割いていた時間が減る。君にはだいぶ気をつけてもらうことになるがいいか?

古株組が話をきりだし、新参組が出陣?のこと、最後に鶴丸が締めくくるという感じ。



なんだ、結構話がまとまってるじゃないか。聞いてくるけど決定事項ね。 ちょっと口調がきついなー?話聞いてなかったの怒ってる!?

つまり戦のことは俺たちに任せな、それから本丸の警備が薄くなると人?数が少ないから私を守るヒトが減る、と。今まで遠征でもすぐに駆けつけてこられる、ギリギリのラインで行ってたからな。いつも守ってくれてたし、これからの日常が変化するのは不安だけれど、危機感が常日頃からたりないて怒られていたから、気を引き締めろてことだね。
よしっ、審神者も成長しちゃうぜ!

「がってんしょうちのすけ!戦のことはさっぱりわからんからおまかせする。あ、ねえねえ本丸には何人?残るの〜あと緊急時の連絡とか・・・いつものやつかな?手入は分かった!擦り傷てどのくらいなんだろう?ボロボロだったら問答無用で放りこむよ、手入ちゃん達厳しいし。というか手入部屋増築しておきたい。あ、内番とかも色々変わるね。そこらへんは話し合いしよう。 で、結局私はどうしたらいいの?」

一気に喋るから、返答が大変だよ。そして、さっきと違っていつのまにか静まりかえってる。全員の視線のようなものが突き刺さって居心地悪い。




膝に置いておいた手にちょいちょいとした感触がした。見れば、いつものように刀装ちゃん達が集まって・・・全員集まってきてる!?なんでなでなでされてるんだろう? 私の周りは、久しぶりの刀装パラダイス状態になってた。大倶利伽羅が来てから大半の刀装ちゃんがじょろじょろついてるのでなんか嬉しい!


15/5/13

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