刀装シリーズ | ナノ






ストライキ本丸の事情1


穏やかな春の庭。



「だーるーまーさーん、ころんだっ!」
「うおっ」
「え、ちょっ、ぎゃああああ」



この遊びにおなじみの言葉を言いながら振り返る今剣君、背後には小夜君、薬研君、鯰尾君、鶴丸君、審神者ちゃんがだるまさん転んだで遊んでいた。 鶴丸君が無理な体勢をしていたせいで崩れたらしく、近くにいた審神者ちゃんが巻き込まれて、顔面から地面に衝突した。


「つるまるっ、なにしているんですか!」
「大将、大丈夫、じゃないよな。状態起こして顔を下に向けて、鼻をつまんどけ。鯰尾兄、あとは詳しいことわかるよな?介抱頼む」
「うわーさに子、顔が血塗れ・・・はいはい、了解っと!」
「審神者姉様!両鼻から鼻血が!」

「小夜は、清潔な布を持ってきてくれ。俺っちは水を汲んでくる」
「わかった!」


強制的に正座させた鶴丸君を説教する今剣君。素早く薬研君が指示を出して、小夜君と手分けして水と布を取りに行く。残った鯰尾君が、慣れた様に審神者ちゃんを介抱して、背中をぽんぽんしていた。審神者ちゃんは薬研君に言われた様にして、大人しくしてるが死にそうな顔をしている。出血量が多すぎて、顔面がとんでもない惨状になっていた。

昼食が出来たと呼びに来た僕が駆け寄って介抱する間もなく、絶妙な連携で場を収める短刀と脇差に感嘆していた。そして、ことの元凶であるレア太刀が、子供達の輪に入って遊んでいることより、問題起こして短刀に説教されてる図がなんともいえない気分にされる。



鶴丸君、格好良くないよ。
空を仰ぎ見ながら、もう一週間経つんだな、と現実逃避。







元主人に捨てられた僕等は厚樫山の山の中を彷徨いながら、偶然この不思議な本丸に足を踏み入れ、気力と体力の限界で刀の姿へと戻って気を失っていた。

本来なら折れていたはずの僕等は、この本丸の審神者である少女が手入をしてくれたおかげで通常の状態に戻っている。そのうえ刀装を持たせてくれたらしく、唯一気を失っていなかった大倶利伽羅ーー倶利ちゃんから聞いたときは、僕と同田貫君は呆然とした。
同田貫君はその餓鬼は何か企んでるんじゃないかと疑心丸出しで、倶利ちゃんに言いつのる。 だけど、普段の彼らしくなく饒舌にその出来事を話して他意がないことを証明してたから、倶利ちゃんもだいぶ動揺していたのかな。 同田貫君はなおも食いついていて、刀装はどうなんだと聞いたときに、倶利ちゃんが今まで見たことない、眉根を垂れ困惑した表情で、刀装が僕達を心配して自分の意思でついてきたと言ったとき言葉を失う。
同田貫君が、まさかそんな返答されると思ってなかったのか面食らった顔をしていた。 それから、たどたどしくだけど倶利ちゃんに謝っていた。 気を失った自分に苛立ってたみたいで、少し八当たりしていたのは彼自身が駄目だと思っていたのだろう。一番気を張ってたの彼なのだから気にしなくていいのにと、思った。

戻る場所もないのでこれからどうしようかと話し合った際、ここで居候させてもらえるかどうか交渉しようと提案した。同田貫君が、こんな得体のしれないとこにいる奴に頼るのかと、反発してたから、様子見をしようと言った。 同田貫君は納得できないという顔をしていたけれど、もう自分達にはここしかないことを分かってはいたはず。他の本丸にドロップという手段もあったけれど、全員戦うことに少なからず疲れていた。ドロップした先が、ちゃんとした場所とも限らないし。もし、ここで無理だったのなら申し訳ないが刀解を頼もうとひっそり思っていた。それほどまでに、追いつめられていたのだ。

それから真夜中の話し合いに至るまで、ここの住人に観察していたけれど、危機感あるのかないのか、しまりのない会話と緩やかな行動になんだか僕等の警戒心も失っていく。途中、何度かヒヤッとしたけれど、少女の言動と行動に再び色々なものが抜けていく。むしろ、心配になってくるくらいである。

それと、最初こそ刀装の行動に信じていなかった僕等だが、倶利ちゃんの両肩から頬をつんつんしたり頭の上でぴょんぴょん跳ねたり、同田貫君の膝の上で団子状態になり転がって遊んでいたり、僕等の話していることがわかるのか、相槌や疑問に答えるような仕草と表情をしたりするので、だんだんと癒されてきたのもあったかもしれない。 やっぱり、小さいものがちょこちょこしているのは可愛らしい。
あとは倶利ちゃんが始終真顔を貫いていたが、耐えきれなくなったのか自由気ままにする刀装をそっと優しく地面に降ろす姿を見て同田貫君と二人で吹き出しそうになるのを堪えた。 めげずによじ登る刀装に、諦めた目をしていたの見て頑張った。それも、最後の会話で崩壊したんだけどね。








少女と鶴丸君の言葉によりあっさりと迎え入れられた、僕等は翌日ここの本丸についての話を説明される。彼等が、少女に話せないことがあるみたいで、この説明会に外していた。

それから、ここが審神者達が云う元ブラック本丸で、最も最悪な部類だった。僕等も、酷かったけれど夜伽とか同士討ち紛いのことはなかったから、絶句した。演練で噂で聞いたことあったけど、まさか本当にそんなことが行われてたなんて、他の二人も無言だ。 それから、何人か後任できたらしいがロクな人間ではなかったらしい。刀剣の数が、三十から六になるくらいなのだから察した。

そして、荒御魂に堕ちいる寸前・・・一年前に少女がここに放り込まれたらしい、最初こそ殺そうとしたみたいだけど、まあ色々あって妥協から始まり和解して現在の関係になったみたいだ。 だいぶはしょられたのだけど、それを話すと一晩じゃ終わらないと言われたので辞退しといた。鶴丸君が不服そうだったけれど、アレは孫の話をしたい爺の表情だった。一年間の話は少しずつ、教えてもおう他の人に。

あとから、少女は審神者のことを何も知らなかったらしいことが発覚する、というかそもそも何も知らなかった。理解する前に投げ込まれ、ここを清掃する様にしろと言われたので・・・と少女は言ったという。 彼等は薄々、勘付いたみたいだけど、若い娘を人身供養に捧げられたことに苦虫を潰した心境だったという。
その頃には、少女をどうこうしようとは思わないくらいに冷静になっていたので、取りあえず審神者やこの世界のことを少しずつ教えてきたらしい。だけど、ちゃんと理解してるのかは定かじゃないと薬研君が遠い目をしていた。最初は、彼等の都合いい様に教えていたが、妙にところで勘はいいのに、少々物分かりが遅いことに心配になってきて本格的に教えているみたいだ。少女の言動を思い出すと、なんとも言えない。





ある日、転機が訪れたという。
少女を放り込んだ元凶(一応)が本丸の様子を視察しにきたらしい。もう、典型的な駄目な人間だったみたいで、みんな口々にその様を僕等に話していた。確かに聞いていて胸糞悪くなった。 で、そいつは少女に立ち去る用意をしろと言ったらしい、帰宅を願っていた少女は純粋に喜んでたみたいで疑っていなかった。彼等は、これまでの政府の所業に疑心しか持っていなかったから、様子を伺っていた。

それも、まあ、あっさりと本性を現したみたいだけどね。

人身供養として捧げた娘が殺されずに、ほぼ正常に戻ったので安全と判断して、娘・息子を練度の高い刀剣のいる所に置きたい上層部の連中に斡旋していることを暴露してるようにしか聞こえなかったらしい。どうやらそいつは上っ面で敬意をはらっていても、刀剣男士≠モノにとらえていたので、理解できないだろうという考えが透けてみえたみたい。馬鹿だ、刀の頃だったらどうしようもないのに、受肉して思考や行動できるようになった彼等の前で、自ら下郎と名乗っているのが分かってなかったみたいだ。

そして、用済みになった少女が使えなくなるまで、ここと似たような他の本丸に回していくつもりだったのだろう。少女を受け入れはじめていた彼等は、我慢できなくなりそいつを斬り捨てようとしたら、それより早く少女の方がキレて手に持ってたいた馬糞を投げつけたらしい。 ひたすら馬糞まみれにする少女に呆気を取られていた彼等は、斬り捨てるのをやめて便乗して撃退した。

同田貫君が、なんでそうなるんだとドン引きしていて、倶利ちゃんと僕も同感と頷いた。彼らもなんかもうこれでいいやと思ったと、答えられてどう返したらいいのか分からなかった。

その後そいつから連絡が来ていつものように脅されたらしいが、少女は流石に耐えきれなくなり宣戦布告?をしたと彼等に告げた。彼等も、少女の事情を知っているので少女が帰宅したかった理由の祖父母のことを尋ねたが、悲しそうな顔をするだけで何も言わなかったらしい。


彼等は、対策を考えに考えてーーー


15/5/10

[ 22/106 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -