刀装シリーズ | ナノ






刀装兵を可愛いがりたい2



気付けば私は。

手に持っていたバケツに入っている馬糞を奴の顔面に叩きつけた。 無くなるまで投げつけた。なにか言っていたがもう感情のままにやり続けた。

いつの間にか、中ぐらいの刀が追加の馬糞を用意していた。 そして一緒投げていた。素晴らしいコントロールである。

白い刀も、大きな槍も、小さな刀達も、刀装ちゃんも妖精さん達も。集団による個人への攻撃だが知ったこっちゃねえーーーーー私はこの日、良心を捨てたのだ。 コイツが全て悪い!


覚えとけよと捨て台詞を吐いて逃げ帰った奴の姿が馬糞塗れだったから、少し怒りが収まった。
それは自分達もだった。

その後、私は大号泣。喚き散らしていたかも。 周りにいる皆に大迷惑をかけたのは間違いなかった。それでも、みんなずっーと私が泣き止むまでいてくれた。その後、お風呂に入ってご飯食べて一緒に雑魚寝した。刀とだけど、妖精とだけど。

問題の奴はというと、スマホに大量の着信があっていつもの脅し文句と現世との連絡手段が無くなるぞとか、本丸を消滅させるとか。本当に今更だった。もうやらかしてしまったしあっちの本音も知ってしまった以上、従うことは無いとも思っていたし覚悟を決めていた。 やりたければやればいい。

奴はぶちっと電話切った。

このことを刀様達に話した。もしかしたら消滅するしかもしれないことに。少しは与えられていた物資も連絡もなくなることに。だけど、みんなはそんな事かと軽く流していた、それよりもきみのご家族はいいのかい?と聞かれて思わず泣きそうになった。慌てた様な感じで、頭に手の様なものがよしよしと撫でくれた。意外と大きく、それに暖かかった。

ーーー私は、あの日から感触が分かるようになった

相変わらず姿は刀だ。


消滅に関しては、対策しているから大丈夫と言われた。物資も大丈夫らしい。頼もしい刀様達である。様子見をしているらしいが(どうやってるのかわからない)、あちらは今のところ何もしてないらしい。まあ、連絡と物資は途絶えたけれど。あちらも様子見なのだろう。 漢らしい小さな刀は、また事が収まった頃に直接くるかもしれないな。と言っていた。

どうしようもない怒りも一周回ればロクなことにならず、あちらから行動を仕掛けてくるまで私は刀様達と妖精さん達の力添えで、この城ーもとい本丸と外に様々なカラクリもどきを施し、緩く待機中だ。小さな刀の一つが復讐をする?と問いかけてきたり、舌足らずな快活な刀がやっちゃいますか?と言ってくれるが断っておいた。刀だけに物騒だ。 たまに明らかに私を狙ったような仕掛けがあって引っかかるが、死にはしないので我慢する。仕掛けたであろう刀が楽しそうな雰囲気をしていたから、いらっときたので小さな刀達と協力して木に縛りつけた。それでも奴は楽しそうに笑っていた。それ以降は、自然とそんなこともなくなってたまに巻き込まれるくらいにはなった。なんだかんだ真面目だったりお茶目だったり掴みどころのない刀様だ。

現時点での目標は、もしかしたらこの本丸の様子を見に来た政府の野郎を取っ捕まえること!

ただ、私の軽率な行動でどうなっているか分からない、爺ちゃん婆ちゃんの安否が心配だ・・・無事である事を祈っている。

ーーー大丈夫、激動の戦前を生き残ったあの人達なら大丈夫。

それから半年後、現在のような状況に至る。



「ぴっー!」
「ああ、ごめんごめん。ご飯中に考え事しててごめんね」

行儀悪く箸を止めたまま回想に浸っていた所を、一緒に食事している刀装四号ちゃんに怒られた。
他の刀装ちゃんは両手で掴みもぐもぐと食事をしている。 現在、用事を済ませ戻ってきた刀様達と食事をしていた。一緒に食事中の刀様達が喋りかけてきた。

ご飯が空中に浮きどこかに消えてくがもう見慣れたぜ。

ーー審神者、なんか気にかかる事があったのか?あいつの事か?
ーー審神者姉様、復讐するの?
ーーサニワ、ぼくはじゅんびおっけーですよ!
ーーさに子、顔が面白い事になっているよ〜

「半年前のこと思い出しちゃって・・・というか復讐しないから、殺らないから!殺る気満々すぎるだろう!スタンバイするな!そして、面白い顔で悪かったな!」

口々に好き勝手いう刀達に思わずツッコミを入れる。約二振り口調は幼いゆえに怖さが際立つ。年齢聞いた時、遠くのほう見つめたくなった。

ーー落ち着こうぜ、焦らなくてもいいだろう?
ーー半年前か・・・きみは凄かったよな。最初からきみは驚きしかないからな。

朗らかに話すこの中で一番大きいかたよ、焦らなくていいとはどういうこと!? 驚きが口癖の奴はスルーしておこう。

このように、最初の頃は色々とあったけど刀様達との関係はだいぶ打ち解けたと思う。たまに怖い部分もあるけど! それに醜態は散々見られている。こちらの本性はしられている。もう・・・いいのさ。


「ぴっー」
「ぴい!」
「ぴいー!」
「ぴっ!!」

「あー日差しがあったかい。お腹一杯だし、昼寝日和」

ご飯を食べ終わると食器の後片付けをしてしばしの談笑・お昼寝タイム。刀装兵ちゃん達もいいね!と賛同してくれる。
きゃいきゃいしながら寝ころがっていると、手の様なものが触れた。そちらを見ると白い刀と小さな刀が三振、小さな刀は私を囲うようにまとわりつく。感触はあったかく柔らかい。

「一緒にお昼寝する?」

雰囲気から笑ってるようだ、肯定と受けとった。

初めて昼寝の誘いした時、色々と反応が凄かった。白い刀に関しては刀と昼寝か驚いた!≠ナある。大きな槍には呆れられたように・・・女の子なんだからそんなこと言っちゃいけません≠セ。オカンか。 どうやら、私には刀の姿にしか見えないが彼らは人の姿をしているらしい。性別は男。聞こえてくる声はどう聞いても男の声だーけーどー。見えないので、どうにもしっくりこない。 想像ではジ◯リにでてきそうな姿を思い浮かべている。

仰向けになると小さな刀は横に列を成した。刀装ちゃん達は私の腹の上である。上下に膨らむ振動が楽しいらしい。食べたばかりなので手加減して欲しい。じゃなきゃ、リバースするよ。 ちょっと青褪めかけている私を、白い刀がそれを見てカチャンカチャンと音を鳴らしている。言葉なくてもその仕草で笑っていることが分かった。

煩いしドッキリするようなことをしてくるが、この刀が一番表現豊かなので意思の疎通がしやすいのが、なんか複雑な心境である。それに、どことなくこの愉快なところが爺ちゃんに似ている。たまに重なっては泣きそうになるのは内緒だ。 最初に接触してきたのもこの刀だ、あの頃は今みたいに声が聞こえなかったから夜中に寝ていたらなんか音がするなーと、灯に火を点けると襖にオドロオドロしい血文字見えた。ホラー定番の血文字会話である。

その時は絶叫して気絶した。 起きたら刀装ちゃんと妖精さんに、刀が怒られてるというシュールな光景だったけど。

刀装ちゃん達は素敵だけど、白い刀には刀姿にしか見えないんだから驚かすのやめてくれよと思う。ついつい反射的にオーバリアクションしてしまうから、それが楽しいのか。やめてくれないだろうな・・・と諦めつつある。 いつかは報復するので覚悟しておけ。


それにしても今日は本当にいい天気だ。お腹が一杯になると眠たくなる。

そのうち、うつらうつらとしはじめた。 遠くでここにいない刀達の打ち合いの音。小鳥のさえずり。周りのみんなの話し声。 心地よい眠気に誘われて、ーー目を閉じた。

頭にまた柔らかな感触がした。


これは私の穏やかな昼下がりの日のお話。しばらくはこの平穏を満喫するよ。



おやすみなさい



15/4/19

[ 13/106 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -