刀装シリーズ | ナノ






本丸に帰還したい5



一通りを聞いて衝撃に混乱していた。じじいさんは、またどこか見定めるようにこちらをじっと見ている。

水際で遊んでいた刀装ちゃん達が肩の上に乗っている。混乱したままの私はなんとか、遊んでてもいいよというと、ううん、いいのというようにほっぺたをすりすりする。

(私はいつもこの子達に助けられているな)



私の現在の状態。

今住んでいる場所が、神様の流域に近くそこで馬糞撃退事件から約一年近く暮らしている。そして、そこで実る作物を摂取している。ただでさえ、普通の本丸でも現世とは違う場所に存在しているため若干影響は受けるが、少なからず一年そこらで急激な変化はないらしい。だけど、私は真名≠名乗っているのもあって、神様にとっては少しづつ、人間にとっては急激に、人から別のモノに作り変わっていっているらしい。

つまり私は半分、人の道から踏み外している。

どおりで最近、肉体は普通の私が歴主さん達の攻撃をかわせるようになったり、重い物を軽々運べるようになったりしていた訳だ。


「なんじゃそりゃあああ!?」

ようやく理解すると、絶叫した。

「じじいさん!それは私が人間・・・人間ですか!?まだ人間ですか!?」

ーー落ちつけ。錯乱して何言っているかわからんぞ。心配するな、まだ人間だ

「まだ、て言われたけど、セーフなのね!」

返答は微妙だけど、私は人間の枠に入っているらしい。

「じゃあ、じじいさんの過去?見ちゃったのは」

ーーその体質もあるが、あの者達に触れたのもある。あとは色んな重なりかな?それと、お主はあれだな、厄介なものを引き寄せる。俺みたいな、な

「じじいさんが、思ったより気にしてないのは?」

ーー昔、別の者に見せたことがある。まあ、結果はわかるだろう?俺のような状態がある意味、稀だからのう、はっはっはっ

軽快にいうので、真意が汲み取れない。これ以上、聞くと深入りしそうなので一旦切ろう。



「帰ったらみんなとこじれる前に話合わないと!」

神隠し?状態は、カレらーーー彼等しか、いまのとこ関わっているのはいないので、これはわかった。勝手に人間じゃなくなっているのは、駄目だと思う。前に怖いもの見たさで見た、審神者専用の掲示板、神隠しスレのような事態は避けたい。

ーーそんな思考に行くのか。話し合いできると思うとるところが

「でも、いいこと教えてもらいました。ありがとうございます!」

ーーなんかお主と喋ってると、もろもろどうでもよくなる

なんでそのことを私に、教えてくれたのかわからないけど、私と彼等の重要問題だ。知ったからには、知らないフリとか出来ない。確実に、様子がおかしいのを察知されるだろう。 一人でうんうん頷いていると、じじいさんがため息をついていた。刀装ちゃんは、心配して損したという表情で肩を落としていた。





ーーそちらの鶴丸よ。この娘はある意味、大物か?いや、ただの阿呆か?

ーーこいつは驚いた。いきなりなんだ? うちのお嬢さんを阿呆呼ばわりとは・・・この阿呆が迷惑かけてすまなかった

ーーそれは気にせんでいい

「ちょっと待って!?そこの失礼な刀達!」




迎えに来た鶴さんが否定せず、お辞儀するような動作をしたので私は待ったをかける。
しばらくじじいさんと談笑していたら、鶴丸が姿を現した。私とじじいさんを見くらべてから低空に刀が下がる。四つん這いになってるんですね。わかります。そしてさっきの会話に繋がる。初対面なのに!



ーーいやいや、礼はちゃあんとしなけりゃならねぇ。で、一応聞いとくがドロップという名目でうちに来る気は?

ーーすまんが、今は誰のもとに下るつもりはないのでな

ーーそうか、礼をしたいがあんたとはそうそうお目にかかれないだろうな



無視して喋りはじめる刀達。刀には刀同士話すことがあるようだ。
私は、迎えにきた母親が別の母親と井戸端会議をはじめて、やることなくうろちょろしながら待つ子供の気持ちで時間をつぶすことにした。




そんな時だった。

両肩に乗っていた刀装ちゃん三つが、私の頬ぺちぺち叩く。何か伝えようとしている。その中にあの銃兵もいる。

既視感、再び。

「どうしたの?」

もじもじしながら、刀装兵達があの人についていきたいという。うん、やっぱりか。
刀装兵達は基本、刀達と居たがる。それは、装備本能なのかなと思ってる。刀装兵達もあの人に思うことがあったのだろう。私は関わらないスタンスでいることにしたが、この子達はどうかな?

「寂しいな。今回のメンバーは比較的新しい面子だけど。うん、でも、親として君達の意思を優先するよ」

私では、あの人の錘を外すことはできないだろう。今の刀剣との関係を築くまで時間がかかった。そして彼は拒んでいる、でも何かしてあげたい気持ちもあったりする。

「なんか全部丸投げな感じがするけど」


幸せにしてあげてね

刀装ちゃん達は、もちろん任せて、というように笑うのだった。

作戦としては、こそっと押しかけ女房風に行くつもりだそうだ大丈夫?



鶴丸とじじいさんの会話が終わったので、帰ることになった。会話中小難しいことばかり話してるから、最後のお別れと称し二つと三つの刀装ちゃん達と遊んでいた。なぜが鶴丸に拳骨を落とされた。痛かった。


ーーもう会うことはないだろう。でも、お主と話すのは嫌ではなかった。いろいろとありがとう

「こちらこそ、ありがとうございました」

ーーうむ

「はい、さようならーーーーーまたね」


あんなことがあっても、あっさりとした別れだった。でも、これでいいのだ。



縁≠ヘ結んでしまったのさ。







帰り道、私と鶴丸はあれから言葉をかわしていなかった。気まずい空気を感じている。
今回の件ももちろんあるだろうけど、鶴丸はじじいさんに思うものがあるような気がする。

(あなたもあの記憶≠フような苦しみがあったのかな?)

私が、鶴丸のその部分を知っているところは少ない。小夜が教えてくれたこと以外知らない。他のみんなも。

(いつか帰る存在に、そこまで話す必要はないよね)

掴まれたままの、私より大きな手≠握りかえした。手の平から温かい体温が伝わる。

「鶴さん・・・あのね、心配かけてごめんなさい 」

鶴丸は何も言わない。その代わり、繋がれた手が強く握る。

「それとね・・・迎えにきてくれて、ありがとう」

あなたの刀が見えたとき、すごく安心したんだよ




ーーおかえり

そうつぶやかれて、私は彼を抱きしめた。少し震えていたような気がしたけれど、何も気づかないふりをする。

ーー君、触れるのは、

「ただいま」


じじいさんのこととか、神隠しとか、別れとか考えることはいっぱいある。
でも、今はただ、帰れる場所があることをかみしめよう。





その後、般若のオーラ放つ刀剣達によって一晩、説教を受けました。
小夜、今剣には号泣されるし(薬研談)、鯰尾にはラリアットくらわされるし!
私のせいもあるけど、私が全部悪いわけじゃないのにと思うけど、そんなこと言ったら確実に火に油を注ぐようなものだ。反省はしてるよ!

ちなみに山菜採りは保留となった。事件は解決しても問題事は山積みです。


15/5/23

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