刀装シリーズ | ナノ






調味料を作りたい2



「ヤバイ・・・ヤバイでえ、ご飯に必要な調味料がつきかけてるううう!」


ごきげんよう皆様、審神者です。
現在、倉庫(備蓄兼備品)で一緒に在庫整理していた刀装二号ちゃんーー投石兵につつかれながら、
四つん這いで項垂れ中です。ストライキなサバイバル()生活を始めて、二度目の危機的状況を迎えています。

訳あって、現在進行系で胡散臭い政府に、審神者業をボイコットしている私と刀剣さん達。刀剣男士もとい刀の付喪神達(ヒトの姿をしてるらしいが私は刀姿にしか見えない)の対策で本丸消滅は阻止している、資材と物資と電気等を遮断され音信不通という状況である。相手方は様子見だと、薬研ことやっちゃんが言っていたから、気になることはたくさんあるが緩く待機中だ。


ここにいた前任者は、とにかくとんでもない下衆野郎で刀様達を虐げていた。その後はいうまでもない、妖よりとはいえ付喪神、神様を怒らせたーーー人間がどうなるかは古今東西幾つもの話として語り継がれているのだから。初日に訪れた際その末路の残骸をみてしまった私は、殺されるほど怒らせんとこうと決意した。今では仲良くさせてもらっているけれど、それとなくみんなに、死ぬのは布団の中で老衰がいいんだと主張しといたら、全員に揉みくちゃにされる刑にされた。一回殺されかけられただけでも未だにトラウマが残っているのさ。予防線くらい張らせくれ。

話は戻り、この本丸の備蓄兼備品庫はやたらとでかい。あらかじめある程度の物が多く揃っていた。今は亡き前任者の家が裕福だったらしく、金の力なんだと思うが本丸に関する備品・内番に関する備品・その他、米俵・長期保存食・あらゆる調味料・ちょっとした嗜好品などが手をつけられずにしまわれていた。しかも本丸自体、特殊な空間のせいか傷みもせず、腐らず綺麗な状態で現存していた。政府が気を利かせたのかわからないけれど、少なくとも優遇されていたようにそれを見て感じた。

その代わり、資材などほとんどなくみんなの手入と少しの刀装しか作れなかった。手伝い札だけはたんまりあった。これ、前任者のせいね。 刀様には人間のような生活を与えずにしていたらしいから、この倉庫が手付かずのままだったのが、現在の生活に役立っていると思うとやるせない気持ちになる。

では?前任者は自分の生活をどうしていたの。審神者の部屋なる場所に引きこもり、本来自分がやるはずの仕事を全てカレらにやらせ、惰眠と道楽と怠惰という堕落しきった生活を送っていたんだと。ここで、やっちゃんがその補佐を務めていたおかげで何も知らない私はとても助けられた。

自動転送装置(任務の達成で与えられる資材と報酬?を送られる)を使って個人用のノートパソコン、暇潰しに取り寄せたであろう趣向品、規制がかかる玩具(処分済)、出前(ごみ箱にて領収書)で快適に暮らしていた。そしてこの部屋、ムカつくことにバス・トイレ・ミニキッチン無駄に完備が整っていた。ここも一応掃除して清めたあと、予備用のノートパソコンだけ拝借して板を打ちつけて封鎖した。勿体無いけど堕落部屋など使わないにこしたことはないのです。亡骸がいらっしゃった部屋だし。あと別に政府に報告所を提出とかノルマを送ってくる専用のデスクトップパソコンがあるが、滅多切り壊されていたのが怖かった。スリラー。


そして、この一年ちょっと。

倉庫の備蓄と外から刀達が獲ってきた魚・獣、山に生える四季折々の山菜と、畑で育てる数々の食物で食いつないできた。だが、調理などしない前任者が補給してるはずもなく調味料は無くなりかけていた。とにもかくにも、美味しいご飯をさらに美味しくさせるのがスパイス!なまものの臭みを和らげる効能とか、促進は欠かせないシロモノ。美味しさを追求しすぎて、薬研と共に色々と試していたのがいけなかった。まさか、こんな事態になるなんて、みんなに相談しなければ。

ちなみに御手杵こと御手兄は、魚介類に関して食材調達隊長を務めている。前に槍で突くしかないと常々いうので、じゃあモリみたいに魚仕留めることが出来るんじゃね?と発言したら槍とモリは訳が違うだろう、いや、同列にされてるなんて、魚なんか突いたことねえよ、人か歴史修正主義者だけだよ≠ニたぶん視えていたら、顔を片手で覆い項垂れていたかもしれない。哀愁が漂っていた、さいごのひとこといらない。聞いていた他の面々はそれは無い、という雰囲気で非難された。鶴さんだけが、携帯のマナーモード状態だった、刀がずっとブルブルしていた。結構このヒト笑うな、と思った。

その後、御手兄はコソッと試してみたらしく、なんか覚醒。素潜りの才能が開花し、海へ川へ獲れるだけの魚介類を回収してくる。神様だけに身体能力の高さが補佐し、某ゴールデンレジェンド番組が脳裏に浮かんだのはしょうがない。全員、正にこいつは驚いた状態だった。 カレの帰還時、空中に浮かぶ魚介類を見て何時もあのBGMが流れてる。




倉庫内から出ると、ガッシャンと音が鳴った。
ビクッとして周囲を見回せば、何も見えない。肩に乗っている刀装二号ちゃんーー投石兵とアイコンタクトをとるとそっと地面へと降ろす。いつでも、攻撃できるように準備を整えたあと音の方へできるだけ忍び足で近づいた。

(歴主さんだろうかーーいやもうちょっと派手な登場するしな。もしや政府!?)

歴史修正主義者、略して歴主さん。たびたび、この本丸に侵入してくる仕事熱心な敵さん達である。初対面の時は攻撃で怪我してしまったけれど、今では避けるのが上達した。毎回、刀様達と刀装ちゃん達にボコボコにされ戦略的撤退をしている懲りない奴等である。

木々生い茂るところを探ると何かがおかしい。

「あ、綻びある。ん?」

茂みを見ると今にも壊れそうな刀が三振。これヤバくないか?
微動だにしないが、視線のようなものを感じた。敵意があるような、ないような?

「うーん、二号ちゃんちょっと装備しまってこっち来てー」

二号ちゃんがてててっ、と走って来て数歩離れたところから壊れかけの刀をじっと見た。数分立たぬ内に、二号ちゃんがこちらの方に顔を向けた。

「ぴっ」
「やばいの?え?もう破壊寸前!?それって、刀様が死んじゃうてことだよね!?」
「ぴっーーぴっ!」

「鶴さん達に報告したほうがいい、か。でもなあ、ここに侵入してきた者に容赦ないからなあ、あたりまえだけど勝手にしたら怒られる?」

ニ号ちゃん曰く、この刀様達は他所の刀剣さん達なのだとか。どういった訳か、破壊寸前でもうほとんど動けないらしい。動けないてことは攻撃はしてこない。でも、直したら危ないかもしれない。それを察したのだろう。勝手に手入できるんじゃねと、考えていた私に二号ちゃんの制止がかかる。何かあったら報告・連絡・相談はしなさいとみんなにいわれている。しかし、今回の場合は一刻を争うかもしれない。


それに。ボロボロだった頃の刀様達と重なって見える。

「二号ちゃん、守りは頼むよ」

私の言葉に、二号ちゃんは呆れたような顔をしてしかたねーなと他の兵達を呼びにいった。

「さて、勝手ながら貴方方の事情はわからないですが手入させていただきます」

微妙に拒否している雰囲気を感じたが動かないことをいいことに広い集め、手入部屋へ向かった。大きな刀三振、両手に抱えるが結構重かった。ウチの中で、壊れてもちょっと困りますし。




「みんな、手伝ってくれてありがとう。えっーと、手入ちゃん達ごめんよ。あなたはいつも軽率すぎる!て、うん自覚あるよ。鍛刀ちゃん達すみません、ごめんなさい。頬をパシパシしないでー。どうするんですか!こんなこと彼等にバレたら怒られますよ!か・・・あーやっぱ怒られるか」

結果的に手入は何の支障もなく完了した。

手入部屋にどこぞの刀三振抱える私を見た、手入部屋にいるお手伝いの妖精さん達こと手入ちゃん達が最初ギョッとした様子で固まっていたが、我にかえるとものすごい速さで駆け寄って来てくれて手伝ってくれた。大きな刀を慎重に渡し小さな体で束になりえっさほいさと運ぶ姿にほっこりする。ついでに援軍を呼んできた二号ちゃんが、刀装第一部隊と鍛刀部屋にいる妖精さん達こと鍛刀ちゃん達と共に手入に必要な資材を持ってきてくれたおかげでスムーズにことが運んだのだ。 手入の間、抵抗がなかったのが幸いだった。鍛刀ちゃんが教えてくれたが、この三振は太刀らしい。どおりで重いわけだ。

で、定番の説教中され中。
妖精さん達は刀がヒトの姿でみえるので即座に対応してくれたが、いろいろやらかす私がまた騒動を持ちこんだことにぷんすかと怒ってらっしゃる。しかしいくら怒っても、ちんまいのがわちゃわちゃしてるようにしかみえないので私の顔がダラシないことになってる。これが刀達なら恐ろしくてしゃーないが、もうやっちまったのは仕方がない。

「正直にあやまればいいんだけどね、この刀様達がお帰りしたあとかなー。でも、怒られるのやだな。妖精さん達と刀装ちゃん達や、見なかったことにしてくれない?いだっ、デコピンやめて!」

私が今回の件を隠そうとしてることに、こいつ懲りてねえと妖精さん達が物理的に説教してくる。刀装ちゃん達はあーあもう知らなーいと他人事で、治した刀達に群がっていた。一際、一振だけ異常に群がらられていたがナニカあるのだろうか?刀装兵しか分からない魅力とかあるの?

「たっーでもさ、歴主さん達みたいなことにはならなかったんだし、刀様達も怪我してて本丸間違えたんじゃない?」

んなわけあるか!と鍛刀ちゃん達がいうが、しつこく食いさがっていたためか、もういいから黙っといてあげるから元の場所に戻してきなさいと諦めた手入ちゃん達に促されいったん綻びがある所に戻ることにした。妖精さん達は私の行動に怒っていたが、他所の刀達を手入したことは何もいわなかった。カレらも思うところがあるのだろう。

「うちの刀達に見つかると面倒になるのでこそっと帰った方がいいですよ、今朝から遠征に行ってますけど、近いところなのでもうそろそろ帰ってきます」

念のため、刀装第一部隊とともに発見した場所に来た。地面に直に置くのは申し訳ないがそっと3振寝転がす。綻びはまだあるのでなんとかでれそうだ。

「門から本丸ID?とやらを入力して行ったほうが楽ですけど、ID知らないし弄ったら確実にバレるのですみませんが、私ができることはここまでです」

無責任かもしれないが、あとは自力で帰ってもらおう。うちの刀達に鉢合わせしたほうが恐ろしい。

「うん?刀装ちゃん達どうした?」

足元にいる第一部隊とは、別の刀装の子がそわそわしたように一つずつ三振のところにいた。
さっき群がっていた子らだ。

「刀装剥がれてて、外が危ないからついていってもいいですか・・・え?突然の別れ?」

ちょっと衝撃。この子達も随分と感情を持ったものだ。私が作る刀装は刀達に変わってると指摘されたけど、刀装が自分の意思で考えついていくヒトを選ぶのは初めてみたかもしれない。成長をみたように感じて、鼻の奥がつーんとなる。親心としては、もう少し旅立たせたくないけれど、これはあの子達の意思だ。

「刀様方、この子達もこういっていますのでこの子達を装備して頂けませんか?」

さっきから、うんともすんとも言わなかった刀達がカタッと動いた。まだ初対面だから何がいいたいのか察せれないので、良いように解釈した。

「不束者ですが、この子達をよろしくお願いしします」

敵意らしいものがなくなってはいたが、動作とか声が聞こえないのでこれ以上接触しても無理かなと判断して立ち去ることにした。

「刀装ちゃん達・・・達者でね」
「ぴっ!」

3匹の刀装ちゃん達はびっと敬礼するようにして別れたーーー別れとは突然くるのね。



第一部隊の子が慰めるようにぽんぽんしてくれた。調味料と結界の綻びを報告だけはしとこうと思うが、ちょっと黄昏たい気分だった。





「いや、一体、今のなんだったんだ」

一振、意識が辛うじてあった褐色肌の男は刀装兵によじ登られながら困惑していたのだった。



15/5/2

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