刀装シリーズ | ナノ






調味料を作りたい3


ーー審神者姉様、遠征部隊が戻ってきたよ。

「うおっ!?」


小夜左文字ことさよさよの声に我にかえる。
部屋の出入り口に目を向けるれば小さな刀がいる。あれから、ボッーーーとしてたらいつの間にか時間が経っていたらしい。いつも、かかさず出迎えていたのになんたる不覚!

ーー?審神者姉様どうしたの?気分が悪いの?

「へ?あれ、いない?わっ、ちかっ」

あーと頭を抱えていたら、近くに小夜の声が聞こえてきたのでぱっと見ると、至近距離で刀がいた。刀様達は、音をワザとださないかぎり私には聞こえないので、無音でよく近寄ってくるから心臓に悪い。なんせ、私の視界には至近距離で小さな刀が空中に浮いている。

それから、小さな手らしき感触がおデコに触れた。

見えないから、カレらから触れた感触でどういう状況なのか、想像で補うしかない。あと、私から触れた場合刀に触ってる感じしかない、原因はいまだ分からず。でも、透明人間がいるみたいな不思議な感じ。
だけど最初声とか感触とかもぜんぜんわからなかったのが、ある時に分かるようになったからその内なんとかなるだろうと楽観的に思ってる。

ーー熱はない

「体調は悪くないよ、えっと、昼にごはん食べすぎたからかなあ〜」

ーーそう?

「うん。心配してくれて、ありがとう。さよさよ」

ーー!!べ、別にこれくらい

私の挙動に怪しむ小夜に、これ以上聞きだされないように話の終わりとしてお礼を言った。
嘘つくのとか誤魔化すとか苦手だすぐにバレるし、バレるし!それに、純粋に心配してくれたのは嬉しい。

それと、刀姿にしか見えないけれど小さな刀がもじもじとした動きをしてるので、可愛らしく見えてくる。ここ一年で、私は無機物萌えを極めたかもしれない。
ヒトの姿も、いつか見えるようになったらいいなあと考えながら、たぶん頭かなという部分を撫でておいた。

ーー頭、撫でられるの・・・嬉し・・・い

ああ、頭であってた。このあと、めちゃくちゃなでた。



しばらく、そうしてたら鯰尾ことずっちゃんが現れた。
私達が遅かったからか、じっーーーとこちらを見ているような気がする。え?じっーーーと?
いつもおちゃらけている、鯰尾がずっと黙っている。それから、辺りを見回すように刀がぐるりと動く。

「ど、どうしたん?」

鯰尾含め刀達は異変に気づくのが早い。特に侵入者関係のものは、察知が遅れたら命取りになるのでなおさらだったりする。
私も結構、気配とか異変にも気づくようになったけれどそれは人間として≠ナはだから、比べようにならない。

ーーいや、うーん、なんか感じない?

「何も感じないけど」
(バレたああああ?!)

ーーそういえば、なにか違和感・・・審神者姉様なにかした?

側にいた小夜が私にぴったりくっついた。
鯰尾も私に近ずいてきて、ぴったりくっついた。ねえ、なんでお前くっついたの?

「(ヤバいどうしよう)私は何もしてないけど、あ!そういえば、倉庫の近くの場所に綻びがあった!」

ーーえ?またあったの?

ーーさに子、見つけたのか?鶴丸さんが、定期的に本丸内を巡回してるけど・・・やっぱ不安定だからか

「ん?ずっちゃんどうしたの?」

ーーなんでも〜

あの大きな刀達のことは伏せて、空間の綻びを報告した。 半分真実を話して、残りを誤魔化す作戦だ!資材の確認・記入は、頻繁に刀装を作るから私の役目にしてもらっていたので申し訳ないけど改竄しておく。薬研辺りにバレないか心配。 鯰尾が最後なにか言ってたけど、聞き取れなかったしまあいいか。

後でみんなで合流して見にいくことに、話はまとまった。今日はもう日が暮れてきたから、すぐに直さず原因を探るため明日になるかもねと鯰尾が言っていた。

あの大きな刀達が、立ち去ってくれていることを祈ってる。


「あ、それとねみんなに重要な報告が」

ーーやっぱり、なにかあったの復讐?

「さよさよ、仇討ちの報告じゃないから!」

ほのぼのがいっきに殺伐とする言葉、ふくしゅう。彼の闇はまだ深い。


「ごはんに大切な、調味料がなくなりそうなんだ」

だから、私あえて空気読まず発言する!


ーーそんなことだろうと思った

ーーそっちのほうが重要な報告なんだ・・・


二振の呆れたような、気の抜けた声が聞こえてくる。がっくりと肩を落としているような気がした。

さっきまでの神妙な雰囲気が離散したのはいうまでもなかった。


15/5/4

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