刀装シリーズ | ナノ






調味料を作りたい5


ーーそういった事情で、お宅らはここに侵入した、と?
ーーここの前任者よりかはマシだけどその審神者も目糞鼻糞ですね
ーーみかづきはなにもわるくないですけど、うつくしいすぎるというのもつみなんですね
ーーここも似たような理由だからね
ーー男も女も関係ないのか




真夜中の騒ぎを聞きつけた、本丸にいる全員が(妖精さん含、本丸の事情なのでここにいる)集まり囲んでしまったので、物腰の柔らかい大きな刀が、殺気をだしている大きな刀を諌めて居間で話し合うことにした。お昼に別れた刀装兵達が手を振ってる、こちらも振り返しておいた。三つの刀装兵にひっつかれている一振は無言だ。

事情を聞くと、私はびっくりした。他の刀達も上の反応である。 鶴丸だけが反応してないのが、些か不思議だ。 ちなみに頭は小夜が冷やしてくれてる、至り尽せりなので今度美味しいと言ってくれた干し柿を作ろう。


ここの前任者もそうだけど、元々ロクな性質ではなかったらしいが、ある刀に魅入ってしまいさらに酷くなってよくないことをしていた。それと違うのに、ごく普通の優しい女性がそこまで劇変してしまうなんてどんだけ魅惑的なの。 現状、刀しか見えない私には関係ないけどヒトの姿に見えるようになってしまったら、私も変わってしまううんだろうか。

そんな思考を読みとったのか、近くにいる刀装兵と二号ちゃんがひっついてきた。小夜は、私の背中を片方の手でぽんぽんしてくれる。 天使に囲まれて、死にそうです。

ーーここもそうなのかい?話の聞きように、かなり酷かったみたいだね。神域にちかっ・・・
ーーあー、最初は三十振はいたんだ。一年前には六振になってた。後任の審神者が来ても、政府の人間が厄介な者しか回してこなかった
ーーなんだよそれ。御手杵。じゃあ、おいその餓鬼もか?

不憫そうに言う物腰の柔らかい刀をさえぎって、御手杵が喋りはじめた。普段は人の話に割り込まないのにな?そう思ってたら、ワイルドな刀がこちらに視線を向けて、不穏な空気をかもしだす。え!違うぜ!私、どちらかという被害者だぜ!

ーーこちらにもじじょうがあるのです。サニワがきてからようやくましになったのです
ーー害をなすというのならこちらも刀を交えようか?
ーー同田貫の旦那、悪いが大将には手を出してくれるな

小さな刀三振が私を庇うような感じになる。手前に、薬研と今剣。真横には小夜の配置だ。
え、なにこれかっこいい。うおお私の目よヒトの姿に見えろおおお。いくら思っても彼らの勇姿は刀姿だった。 あと、その周りにいる刀装兵達、銃兵と投石兵がスタンバイしてるけど屋敷の中でやちゃいけないやつやで。

ーー害があるやつではないと理解している

無言を貫いていた寡黙な刀が、一言呟く。その言葉に、はあ、と不穏な空気をかもしだしていたワイルドな刀がため息をついた。

ーーそれは、わかっているさ。じゃなきゃ、こんな得体の知れない刀を手入なんかしねーだろ。だがよ、この餓鬼のひととなり?てのが、わからないからな、なにか企んでるとしかとれない。見返りになにかよこせとかじゃねえのか?



ーーそれは、聞き捨てならないですね?

ワイルドな刀の言葉に、更に周り空気が殺伐してきた。鯰尾の言葉に怒りがこめられてる。

ーーごめんね、同田貫君こうはいってるけど決して喧嘩売ってるわけじゃないんだ。その子には感謝してるよ。お礼いいんたいんだけど、素直じゃないから余計なことしか言わないんだ
ーーオイ!燭台切、余計なこと言うな!ば、馬鹿野郎!

物腰の柔らかい刀がすかさずフォローして、ワイルドな刀がめちゃ焦っている。焦りようで、誰もが図星と分かった。それにしても、物腰の柔らかい刀の母親ぽいっ発言に吹きそうになる。

ーーここにいたしょくだいきりもそうでしたよね
ーー同田貫さんも基本どこもあんな感じなんだね
ーー懐かしいな

小さな刀組が、ここにいたらしい二振のことを話していた。どこかしんみりしてるのは、もうそのかれらいない≠ゥらだ。今度、お墓参りに行こうとコソッと言えばみんな少しだけ明るくなった。



ーーで、君らはどうする?その話じゃあ、行き場所はないんだろう?戻ったとしても、碌なことにはならんだろう。

和やかに戻りつつある雰囲気の中、居間に集まってからなにも喋っていなかった鶴丸が口を開いた。物腰の柔らかい刀が、答えた。

ーーこっちも、話しあったんだ。昼にその子が去った後、これからどうしようかと思ったときに、ここは少し不思議な場所だからここにいる君らを少し見てみようと。よくないことするような子じゃないと判断したんだけれど、同田貫君が疑り深いから
ーーうるせえよ!俺達のこと話しているのかと思えば、真剣な顔して調味料作りの話し合いしてるのを聞いたときは、ここはどんな本丸だよと思っただろーが!
ーー馴れ合うつもりはないが、助けられたままというのも

ーー見られてたの、か
ーーしょうもないところとか全部?あほな会話とか全部?
ーーげんきょうはサニワですよね

「い、行く当てないならここにいたらいいんじゃない?」

大きな刀三振が口々に喋るだすが、会話から夜ごはん後の出来事を聞いていたらしい。これは、恥ずかしい! 何か言いたそうなので、助け舟を出してみた。けっして、話を変えたいからじゃない。

ーーはあ!?さに子、それ本気!?

「え?まあ、みんなと話し合ってからだけど、最終的な決定権は鶴さんだし。そちらの刀様達も嫌かもしれないから、まあ、お互い妥協点みたいなものを見つけましょう」

ーーと、いうわけだ。ここの決定権は基本、俺にあるらしんだが、別にここにいたらいいんじゃないか?血気盛んだが敵意はなさそうだからな

鯰尾がびっくりしたようにいうので、付け加えておいた。 ヒトが増えても広さ的に余裕があるし食料も調味料問題以外大丈夫、あとは仲良くできるかかな?ワイルドな刀がもうちょっと柔らかくなってくれたらなー。 鶴丸がそう言ってくれたので、他のみんなは渋々とあっさりで別れて頷いてくれた。狭い世界なので、この六振は結束が固いからちょっといろいろあるのかな。ここにいた亡き刀達のこともあるし。

あれ?そういえば物腰の柔らかい刀て燭台切ていってたけど、そのヒトは確か凝った料理は作れなかったけど刀剣の中でも手先が器用だからたまにこっそり作っていたって、薬研から聞いたような。あちらも手先器用なのかな。

ーーまさか出陣しろとでもいうのかよ
ーーまた、そんなこといって!厚意で言ってくれてるんだから、素直に受け取らないとかっこ良くないよ!その前に、刀の意思を優先してるほうが驚くな。普通は審神者の判断が絶対なんだよね?

またワイルドな刀がどうのこうのいってる。 物腰の柔らかい刀が、母親のように叱りつけていた。もう、お母さんでいいか! 心の中ならバレない!

お母さんの疑問にこちらの刀達が答えていた。

ーーここは少し特殊というか
ーー大将が審神者業務を放棄してるというか・・・な
ーーうーん一応元凶に馬糞投げつけて追い返しちゃいましたからね〜
ーーまあいろいろあるんです

ーーえ?何してるの?君らなにしてるの!?

疑問がなくなるどころ、さらに疑問を増やしてどうするんだ!でも、言ってることがすべて事実だった。とういうか、この際出陣なんざどうでもいいんだよ!

「馬鹿野郎ーーー!いいか!今、この本丸に必要なのは出陣なんかじゃない調味料を作れる刀なんだ!ようこそ我が本丸へ!!出陣とか遠征しなくてもいいから!そもそも出陣してないし!あ、でも調味料作れなくても内番とか食事当番に加わってくれればいいから!カモーン!」

ーーおい、てめえは調味料から離れろよ!
ーー味噌なら作れるよ
ーー作れるのかよ!?
ーー塩も作ろうとしてたな
ーー・・・



ーー君は少し黙ろうな。余計な混乱を招く。

「驚きな混乱を常に招いてる奴にいわれたくないわ!」

ーー驚きは俺の、たしか、アイデンティティー?だ!これがなくなったら鶴丸国永がじゃなくなるだろう!

ーーこれがかおすというやつなんですね

話に収集つかなくなってきた様相に、今剣がしみじみと呟いていた。 他の面々を好き勝手にしている。薬研が、妖精さん達にもう帰ってもいいぞと住処に返してあげていた。

ーーじゃあ!遠征に行ってるのはなんでだよ?!
ーー審神者姉様が、刀装作るのと・・・備えように
ーーもういっぱいあるよな?はっ?備え?
ーー歴史修正主義者がちょいちょい侵入してくるんだ、同田貫。
ーー本丸に奇襲なんざ重大問題じゃねえか!!なんでそんな軽いんだよ!御手杵!

ワイルドな刀に小夜が返答していたら、次から疑問が湧いてくるのか質問大会になっていた。御手杵が返答すれば、盛大にツッコミを入れられている。一応、元通常の本丸にいたカレらからしたらここの本丸が可笑しいようだ。ストライキしてるから仕方ないんだよね。






ーー刀装兵作りすぎだ、こいつらどうにかしろ

しかし、意外なことに終わりは突然告げる。 離れた場所にいた寡黙な刀から謎の台詞が聞こえたので、なんとなく全員が視線を向けるような雰囲気の中。 私達の周りにいた刀装兵含め全刀装兵が、カレに群がり弄っているのを見えたらしいみんなが大爆笑におちいってしまうまでーーーあと少し。


15/5/4

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