刀装シリーズ | ナノ






ストライキ本丸の事情4



「はあ」

現在進行形で、鶴丸君にからかわれていること思いだしてため息が出た。

「ため息だして、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと鶴丸君のことを」
「あっ」

僕がいきなりため息ついたことに、ギョッとする審神者ちゃん。
鶴丸君の一言で察せられるとはいかがなものか。彼女は、常に構われてるからかな?

「まあ、でも。あのヒトの行動でだいぶ、助かってい・・・るような、ないような?」
「疑問形?」
「あ、でも、大倶利さんがコソッと燭台切さんの作ったおかしを持って、どこか行くのを鶴さんが気づいたらしく。つけたんですが、手入ちゃんと鍛刀ちゃんにわけてたのを、陰から見守ったりしました」
「君らそんなことしてたのかい」
「刀装ちゃんだけでなく、妖精さんもちゃんと可愛がってくれるとは大倶利さんて優しいヒトですよね!まあ、案の定ばれて追いかけられましたが」
「彼、少々繊細なところあるから・・・お手柔らかに」

濁った返答をしつつ、最近あった出来事を話してくれる。だからこの前、妖精ひっつけた倶利ちゃんが駆けずりまわっていたんだね。元々隠しているけど、小さいの好きだからここで弾けちゃたのかな。もう、開き直ってるように思う。

「同田貫君もあるの・・・そんなの?」
「この前、道場で手合わせしてましたよ」
「誰と?御手杵君?」
「刀装ちゃんと」
「刀装兵と!?」
「うちの刀装兵は強いですからね!小さい上に素早っしこいので、中々苦戦してたようです。最後には、たぶん拳をつきあわせているような動作をしていました。一戦をまじえてこそ漢の友情は生まれるんですね!」
「・・・そういえば周りにいても同田貫くんも何も言わなくなっていた、ね」
「案の定ばれて御手兄と一緒に追いかけられましたが」
「御手杵君と!?彼も、恥ずかしやがりな部分があるから・・・お手柔らかに」

野郎組は何をしているんだろうか、と思ったけれどもう何も言うまい。




そんな話をしている時だった。

「お、何話してるんだ?俺の話か?」

鶴丸君が縁の下から這い出てきて話に加わる。僕等は二人は、お前そんなとこで何してたというような顔をしたが、彼は驚いたか!と気にしてないようだ。鶴丸君は今日も我が道を進んでいる。


「鶴さんは話にちょっとでてきた」
「冗談だったんだがそう返されると何も言えないわな。鼻は大丈夫か?さっきはすまんかった」
「もういいよ。大量に血がでてきただけだしそれにいまのんに、こってりしぼられたと聞いたし。これからは気をつけて。気をつけない場合、その白がずっちゃん協力のもとあるもので汚れるから」
「それ、確実に馬糞だよな?すっかり鯰尾の影響に慣れちまって」
「昔投げあったせいかなー臭いけどあまり気にならなくなってきた」


鶴丸君も謝罪しに来たのだろう、審神者ちゃんの言葉にホッとしたが後に続いた内容に、若干引き攣っていた。僕もね。 刀装兵もうわーとした表情になっている。審神者ちゃんは女の子として何かを欠けている感じがする。そこらへん、教育できるだろうか。


仲良く喋りはじめる二人に、僕は穏やかな気持ちで見ていた。 ここは驚くほど平和だ。いや歴史修正修正者が進入してくるが、それ以外緩やかに暮らしている。 審神者ちゃんと対面している鶴丸君の表情をちらりと見る。

彼女には見えてないが、いつも彼女を見る顔は優しい表情で笑っているんだよ。


あの日の夜も、仁王立ちで腕組み少女を見下ろしているさまは、一見冷えたように見えるが、月明かりに照らされた彼の表情はどこまで暖かく優しい瞳と、諭すような言葉を紡いだ口元は穏やかに笑っていた。審神者ちゃんも怖がっているより、親に怒られた子供の様に落ち込んでいるので彼等の周りを包む雰囲気は柔らかかった。それから、得体のしれないという言葉になにを想像したのか、鶴丸君を前にして腰にしがみつく姿に、上半身捻って審神者ちゃんを見ながら離れるように言うが無理に剥がそうとしてなかった。 孫に懐かれて、嬉しそうな爺の表情をしていた。

今も、そんな顔をしている。




近づいてきた、刀装兵達を膝に乗せる。ぼっーとしている僕に退屈じゃないかと思ったのだろうか、膝の上で遊びはじめた。その様が可愛らしい。

前の本丸や気になることはたくさんあるけれど、今はここで暮らしていく日々を考えるのが楽しみだったりする。僕はここに来たばかりで、この先どうなるかわからないけれど・・・ーーー

どうかこの日々が穏やかでありますように、と願っている。



15/5/10

[ 25/106 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
×
- ナノ -