刀装シリーズ | ナノ






ストライキ本丸の事情2

「ご覧の通り、半分神隠しするはめになったんだ。そして、お嬢さんには話していない」
「だから、神域寄りだったのかーーちょっと、待て!対策て、それ!?」
「しょうがなさそうなそうな顔をしてるがなぁ、楽しんでるだろう。この状況を」

「神妙に話していたが、お前らさほど気にしてないのか」
「神妙な空気の中、一人輪の中から外れているのに刀装達にまた群がられてるあんたに言われても」
「…こいつらが勝手に。俺は馴れ合うつもりはない」
「ちょっと撫でたそうにしていますよね?」

「サニワがいってましたよーーそういうのつんでれというやつだと。そして、もうぶちゃっけまいにちたのしくて、せいふとかれきししゅうせいしゅぎしゃとかどうでもいいですよ!もうくらいことはかんがえません!」
「大将が帰りたいのは知ってるし、帰してやりたい気持ちもある。その全てに繋がる政府が信用できない。今の状態の方が安全というのが、な」
「審神者姉様を踏み台にして、更に他の本丸に送りこもうとした連中だよ。神隠しした方が安全て皮肉だよね。姉様はどう思ってるか、理解してなそう」


苦渋の決断をしたという表情だが声音がどこか楽しそうな鶴丸君、あっさり話した神隠しに僕は度肝を抜かれる。同田貫君も僕と同じ表情をしてるが、楽しそうな彼等に呆れている。 輪になってる僕等から一人離れている倶利ちゃんが、刀装に群がれつつそれをぺりぺり剥がしながらつぶやきを洩らす。刀装達はそれが楽しいのか、剥がして下ろしてもらったらまたひっついて遊んでいた。逆効果。そして、それを見た御手杵君と鯰尾君にからかわれている。

本音であろう言葉を素直に言う今剣君はいい笑顔だ。薬研君は複雑そうにしている。 小夜君もこの状況に複雑そうだ。最後の方何気に酷い。

「そもそも俺っち達は全てを遮断してるわけじゃないぜ?現世からは来ようと思えば来れるんだここに。消滅するのを阻止ていう形で神域寄りにしてるが、むこうさんはどう捉えているか。ま、放置本丸の扱いだろう。逆にこちらもゲートを使えば出陣・遠征・演練・万屋・他所の本丸に行けるといちゃっ行ける」

「そんなことできるんだな」

薬研君が説明するこの本丸の仕組み。簡単に言ってるが神隠しの微調整に苦労しただろう。 同田貫君が呆れを通り越して、感心している。

「こちらから、動きはしない。あちらも、なんらかの術式を練ってくると思っていたが、まったく干渉なんぞしてこなかった。拍子抜けだよまったく、俺を驚かせるくらい出来ないのか」
「でも、あの子大丈夫なの?完璧じゃなくても神域。なんらかの影響は受けているはず」
「つるまるはだまっててください。そうですね、なぜサニワがしょうきをもっているのか?かんぺきにかみかくしをしてしまうとにんげんであるサニワはあふれるしんきにたえられません」
「だから、半分神隠ししても審神者姉様を少しづつ¢マ性つけれるようにしたんだ」
「君達、淡々と恐ろしいこと言ってるんだけど」
「旦那も付喪神なんだから、そこらへん気にすんな」

至極真面目に話す短刀達が別の意味で怖い。見た目が子供だからより不気味さが滲み出ている。小夜君に至っては無表情だし。あの子隠すつもりに聞こえるよ。 それと、薬研君てこんな子だったけ?個体差にしちゃ僕の知ってるカレと離れすぎに思う。

「なんか、納得できないよ!?これ気にしなくていいのかい?」
「こちら側からしたら別にどうってことねぇが、人間からしたらだいぶ物騒なこと話しあってるように思うだろうな」

要は、人間であるあの子が神域に行っても可笑しくならないように、少しずつ人間≠ゥらこちら側≠ノ作り変えてっているてっ、ことだろう?

「ああ、そうですね。さに子は少しずつですけど人の道を外れつつあります」
「じょじょにだが、身体能力も上がってきてるしな」

鯰尾君が言う。それからふっと思った。

「あれ?でもおかしいね?なんで、そんなにあっさりでき、一応、主従契約はあるように思うけど、主としてはみないしていない、からか?ねえ、もしかして」
「あははは、いや、なぁ?」

神隠しするにも僕らだって簡単にはできない。ただあること≠知れば、しやすくなってしまう。まさか、と思っていたら僕の疑問に答えるように御手杵君が遠い目のまま、肯定するように。

「真名喋ったんかい」

彼女が真名を喋っていたことに、僕はガックリと両手で顔を覆った。少々あたまが・・・となるべく思わないようにしていたけれどこれは。

「あーーー聞きだしたの俺なんだがなんのためらいもなく教えてくれてな。正直、この娘の危機感はどうなっているんだと思ったぜ」
「俺っちも、それを鶴丸の旦那に聞いて、トンデモナイのが来たと思った」
「あ、俺もです。自分で言うのもなんですか、見た目は動く刀。明らかに得体の知れないものに名乗るなんてさー」
「なまえをほいほいおしえてはいけません、とちゅういしたあとに、なまえでよんでもいいよ!ですよ!うん、まあ、ちょっと」
「魂握られているよとはっきり言っても、え?危ないの?刀様達なら大丈夫!≠トどこからそんな自信が」

「それもあってか俺等も、いざという時にあの子がもし本性を現してもどうにかできると、警戒を緩めたんだけどな。今思ったらあの考えは間違いだった」

次々と心境を語る彼等は、呆れを通り越して悲壮感が漂っている。とてもさきほど神隠しどうのこうと言っていた連中の面影などない。驚きを常に求める鶴丸君でさえらしくない反応にこちらも困惑する。いや、昨日の様子を思いかえしたら、どんどん彼女に対する印象が上書きされていった。

「あの餓鬼、別の意味でヤバい奴だったのか。よく生きてるな」

同田貫君がぼそっと呟いていた。彼は認めてはいないだろうが、彼女は仮とはいえ一応主人という形になる、もはや不安しかないだろう。

「真名を知っているということは、眷属寄りにでもしたのか?」

倶利ちゃんが刀装兵に遊ばれながら尋ねる。その様子に結局、今回も彼の敗北であった。




「眷属にするつもりはないさ」

空気を切り換えるように、鶴丸君がはっきりした声で断言した。

「迷子の子供を預かってる状態だと理解してもらえるといい。人間として道を外しつつあるというが、現世に戻れば数年で戻るように調整はできる限りしているんだ。まあ、この状態のまま何十年もいなければの話だがなぁ」



「戻れないと言ってるように聞こえるよ?」


隠すつもりも眷属にするつもりないといいながら、逃げ道を無くしてっているのを彼等は自覚しているのかな?

彼等はお互い目を見合わせた。

「これは、ばっかりはなぁ実のところ、お嬢さんをどうしたいのか分からないんだ」
「このまま、大将には主になってもらえないかとも思う」
「きらいではないです。どちらかといえばすきです」
「考えなしの行動の心配はするし、苛つくこともあります。でも、ほっとけないんだよなぁ」
「人間を、審神者など信じられるかと思っていたんだ。この一年で変わることもあるんだな」
「最初は殺そうとしたんだ・・・でも、今ずっと一緒にいたいて思ってしまう」

人の身の厄介なこと

戸惑いながら話す彼等に、僕等はただ黙って聞いてた。しんみりした空気の中、彼等が口を開くのを待つ。






ただそれも少しの間だったけれどね。


「あのな、実は真名を知ったことによりお嬢さんの意識に潜りこんだんだ」

ついでに、言っとくぜというノリでいう鶴丸君。

「今のしんみりとした流れでなに喋りやがる、じじい」

鶴丸君の爆弾発言に、同田貫君が半目になっていた。どの口で言うんだ、多いに干渉してるじゃねえかとつけたす。

「はつみみです。つるまるのむっつり」
「爺さん、孫のように大将に接しているが、それって」
「とうぶん近づくの禁止だよ」

短刀組の辛辣な返しに、抉られたんだろうか即座に言い繕った。

「違うぜ!あまり、こちらにお嬢さんが態度をださないようにしてるが、血縁の者を気にしているようでな、血筋を辿ってどうしているのか探ったのさ!うまく探れたようでな・・・どうやら早くから、まともな部類の政府の役人に保護されていたのを確認した。それから、数ヶ月前にその爺さんと婆さんがトンデモナイ行動力の持ち主だったらしく、歴史修正主義者対策本部みたいなところか?襲撃しにいや乗り込んでいったのを視た。途中で途切れちまったから、最後まで視たかったぜ!」

「鶴丸君、今ので何度かあの子の意識に潜り込んだと自白してるんだけど」

なんだかさらっと喋ってるが何しているんだ、このじじい。

「なんで、早くから分かっていたのに教えてくれなかったんだ?」

と御手杵君が言う。





「近い内に、この関係にも片がつくかもしれない」

それから、ゆっくりと言った。

「・・・」
「大将には?」
「まだ話していない」

君らにも言おうかと思ってたんだが、なかなか言えなくてねえ・・・そう苦笑しながら言う彼は寂しそうだった。

それを閉めに、話し合いは一旦終わる。

その後、それも何がどうなってかわからないけど、席を外されていた彼女が池に落ちたらしくお風呂に入って、下着を忘れたからといい布を被り廊下を歩いていたのを目撃した、同田貫君の叫び声によりぶっ飛んでしまったのだった。

この本丸は、次から次へと何かが起こるなあーと思うしかなかった。



15/5/10

[ 23/106 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -