刀装シリーズ | ナノ






閑話 せめて普通に持てるように


燭台切光忠が大広間の天井に突き刺さっていたーーー刀剣の姿で。

流し目で周りを確認する。
頭抱え込む審神者。感慨深く光忠を見る御手杵。神妙な表情をした鶴丸。なんとか助けようと奮闘する幾つかの刀装兵。


周りにいる面子を見て、俺は襖を閉めた。今度は何をやらかしたのか、あの審神者は。
光忠には悪いが、天井に埋まっているこの状況から嫌な予感がする。そう思って、適当な場所へ避難しようとしたら、襖が勢いよく開け放たれ引きずり込まれる。相手が鶴丸だった。聞いてほしそうな顔をしているが、関わりたくない。一人にさせてくれ。

「大倶利伽羅が来る以前だ…実はな、お嬢さんも少しは自衛の手段として刀くらい扱えたらな、とみんなで稽古をつける出来事あったんだ。その時の惨状を忠実に、今再現されてしまった」

「…俺に構わず、その突き刺さったやつ救助しろ」

「今回は、まだ室内だから比較的ましな部類だぞ」

何も言わずとも、勝手に喋り出した。右から左に流そうとすれば無理だった。
宙を浮いてブッ飛ぶ体験した時のことを、思いだすぜ。と鶴丸が悟った表情で話しだし、御手杵が俺の時は木に深く突き刺さって、みんなが一生懸命引き抜いてくれたよなと感慨深く会話している。アレに何故、自身の本体を持たせる気になった。何がどうしたら、天井に突き刺さる。

「持てるだけでも充分だろ」
「だよなー!俺(槍)を持てたのが奇跡的だったからな!」
「お嬢さんは、振りかざした瞬間あらゆる方向に両手からすっぱ抜ける。君に聞きたい。改善点の余地はないかい?」
「短刀か脇差からにしろよ」

なぜ、よりにもよって難易度の高い武器を持たせるんだ。

「あー、それは今話した以上の阿呆なことしようとしたんだあの子」
「…おおっと、無言で立ち去ろうとしても無駄だぜ!君も犠牲に…この本丸の洗礼に付き合ってもらおうか!」

初っ端の予感通り全力で巻き込むつもりだ。鶴丸は今思いついたかのように、詰め寄ってきてたので避けた。冗談めかした口調と態度だからか、本気ではない。何がしたいんだろう。

「私が辞退したいんですが!」

項垂れたままだった審神者が復活したのか、大きな声で主張した。意外に、適材適所の問題だと自覚しているのか。

「お嬢さん、何事も諦めちゃいけないぜ?」
「鶴さんは、私がやらかすのを楽しんでるだけだろー!これ以上、刀様たちの犠牲にしたくないよっ!小さな積み重ねが刀解につながるかもしれないんだよ!?」
「これは、そういうくくりに入るのか?」
「いや、折れてねーからな?」

また斜め方向に考えが暴走しつつある。どうも今の声が届いていないようだ。

「燭台切さんごめんね!今、たすけるからねえええ」

だめだ。話を全然聞いていない。
審神者は悲壮の表情で、突き刺さったままの光忠を勢いよく引き抜く。だが勢いがありすぎたようだ。

「………ぎゃー!」

今度は、畳に突き刺さる。光忠は先程から無反応だ。
数秒遅れで叫んだ審神者が、畳に突き刺した反動で後方へすっ転ぶ。頭部を強打し動かなくなった。

「この光景、どこかで」
「才能以前の問題だな、こりゃ」

『なにごとですかっーー!?』『またいつものか』
悲鳴を聞きつけたであろう他の刀達が、どたどたと走ってくる音が聞こえてくる。この空間に、また増えてしまう。ため息をついた視界の端に、お手上げ状態の格好をした刀装兵たちが顔見合わせていた。




(誰か僕のこと気にかけてくれないんだろうか…)

とばっちりを受け続ける燭台切は、後で手入部屋へと連れていかれるのだった。


18/4/12

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