刀装シリーズ | ナノ






奇襲された本丸2





先に資材を回収した。いつもより多く回収できたことに少なからず気持ちが高揚する。

『まあ、集めてもなかなか使うこともないが』
『備蓄は大切だよ。資材不足は避けたいよね』

残すは食料調達のみ。

前々から思っていたけど、出陣とそれに関係すること以外に時代に残ってその食材をどうやって獲っているのだろう。短刀は基本本丸の警備にまわっていたので、あの人達がどういう状態でしているのかは詳しく知らなかった。今回それを目にしたのだが。

『遠征日和っ!ていう天気ですね〜』
『どんな天気だ』

はしゃぐ鯰尾さんと、苦笑混じりにいう御手杵さんもどこか楽しそうな会話。
その姿は見たこともない、装束ともいえないものを身につけていた。

『なまずおたちがみにつけているものはなんですか?あとかおにかかってるものじゃまそうにみえますね』
『ああ、これねー』

審神者が倉庫整理していたら発見したものだった。その使用用途は水の抵抗を柔らげる?とかで、素肌の身を守るなどいろいろ効果があるらしい。聞いただけじゃいまいちわからない。顔につけているものも、水の中がよく見えるようになり海や川にいる生き物が判別しやすくなるのだとか。

本丸にある未来のものも勿論だけれど僕らの時代じゃ無いものばかりで、人間の発想とは本当に凄いものだと感嘆した。・・・鶴丸さんが随分気にいったみたいで、これはどうやって使うんだと審神者に質問責めにしていたそうだ。

審神者は僕らが人の形をとっていることは知っているけれど見えない。だから体の大きさがあうかどうかわからない。でも、食材調達には役立つからとこんなものもあると渡された。幸い鯰尾さんや鶴丸さんは着れた。御手杵さんは規格外だったみたいで着れないのは仕方がないからそのままだったが、鍛刀の妖精達が御手杵さん用に改良したとのこと。渡されたものは御手杵さんにぴったりで、お礼に食べ物を渡したそうだ。それを聞いた僕らの反応はいつも通り。

『・・・妖精達、どんどんできることが増えっていっているね』
『ようせいたちのおかげでせいかつしやすくなっていますよね。かくじつに』

『ぴったりしててきもちわるくないですか?』
『んー?慣れた。最初は違和感あったし、その効果やらとも半信半疑だったんだけど、いざ着用してみると水中にいてもすごく動きやすくなった。この装備のおかげで魚も判別しやすなったしね』

彼らの本業は本来だけれどその環境にそって適応していくのは喜ばしいことだ。唯一、鶴丸さんはきらきらした目で刀装の行動を観察していて刀装達がちょっとやりにくそうだ。

『俺たちもあまり言えないがな!鍛刀の妖精は刀を打つのに携わっているからこれもありなんじゃないか?ちなみに俺はこんなものも渡された。うきわというものらしい、これに乗っかっていると浮かぶぞ!』

『あんたが海流に流されそうになるからだろ!』

『この前沖に流された時は、御手杵さんの泳ぎぷりっ凄かったですよね!結局鶴丸さん自力で浜辺に戻ってましたけど。まあ、審神者と妖精が本丸から見ていたからそれを渡されることになったんですけどね』

『刀が流されてる光景か・・・妖精達の判断かな』
『絵面が』

また見たことのないものを片手に持つ鶴丸さんの姿。確かに中身を知らなかったら、流されそうな見た目してるしね。

『何か失礼なこと思ってなかったか?』
『・・・思ってないよ』

半目で顔を覗いてくるけど目を逸らした。先日、感じた雰囲気は気のせいだったのか。




『人気が無いかつ食料の穴場を見つけるのも大変だ。遡った場所にいる人間達には俺らが見えないとはいえ、中には鋭い感覚持った奴とかいるからな』

浜辺で一休みする御手杵さんは竹筒に口をつける。美味しそうに水を飲む傍らにせっせっと収穫した食料を器用に槍兵達が運んで縛っていく。

今剣と鯰尾さんは磯場の方へ、鶴丸さんは豪快に飛沫がかかり顔面に受けとめていた、刀装達が湿らせた手拭いで拭いている。潜るから意味ないと思う。

海からほどよく離れた場所に僕と薬研は、資材とみんなの本体を預かっている。分霊の状態だけなら塩の影響はあまり受けないようだ。物理とか細かいこと気にしない。刀剣とは一体。これも必要なことだと無理矢理納得させているが、みんなだんだん気にしなくなってる。これでいいのだろうか。

それにしても、一回りも大きいものを運び持ち帰りやすくする刀装達を見て、だいぶ力をつけたなと思う。毎日手合わもしているらしくめきめきと成長してると審神者から聞いたので剥がれにくくなっているのかと思っていたら違う方向に行っている。普通のことだと思ってけれど通常はそんなことしない。刀装の変化に驚くことなく普通に受け止めているのでだいぶ毒されているな。審神者曰く今の状態がそもそも普通じゃないことだらけだとため息をはいていた。

それに適応してる審神者に、こちらがため息をはきたい。いや、問題なく共存できていることに不満抱いてるわけではないけど。

『時代のこともあるが、よくわからない部分もたくさんある。政府が開示してない情報・・・むしろ俺たちに知られたくないこともあるだろう』


御手杵さんの言葉にかえしながら、今日の予定表を確認にしている薬研。
薬研は本丸に残っている資料を読みあさり、様々なこと出来事を紙に書きつけなにか書を制作していた。今回の遠征のことも記録をしているのだろう。

『薬研はまめだよなー。俺は突くことしかできないからな』
『先ほどのあんたの様子を見てたが、その言い分で片付けるつもりか?俺っちも得意じゃないさ。やる機会が多かっただけだ』

先ほどの獲物がついたモリを片手に水面から突き出し御手杵さんの様子を思い浮かべる。野性的だった。


『・・・ところで、なんで薬研は頭に笠をかぶってるの?』

さっきから気になっていたことを聞いた。

『似合うか?麦わら帽子というんだと』
『・・・微妙?』

『今日の朝にあの審神者に渡されたがどんな風に見えてるんだ?何を考えているのかいまいちわからん』
『何を思ってそれを渡したんだろう』

審神者は今朝に様々なものを持たせてくれたが気をつかってる?逆に僕らに慣れすぎて、謎の行動をとるのか。



『それはいいとして、今日は短時間のものを中心に何回かこなし、現在は海辺で食料調達。予定通りに進んでいるな』

『あ、御手杵さんいない。え?また獲りにいった?・・・そう』

予定を確認している途中、側で休んでいた御手杵さんがいつの間にか消えていた。御手杵さんのいた場所に、くつろいでいた槍兵達が海の方向に指差す。やれやれとした仕草にくすりとする。

『がっつり食うからな。あんまり外のもんばかり食べささない方がいいが、屋敷内も作れんのは畑関連系、よくて水田。それも半分神隠しして、神気が充満している。思ったより影響が早く出てきているんだ、あの審神者があんなに影響を受けやすいとは』

そうも言ってられない、と頭を掻きながら喋る薬研。

審神者の体質がすこしずつ変化している。政府とまだつながりがあったころはさほど変化は見られなかった。あちらからの手出し対策のためとはいえ神域よりに近づけた今の本丸は確実に審神者を。



『そういった影響を受けないよう身も守る方法知らないか』

『・・・だろうね。そもそも本人には気づいてい、』


その時、鼓動が鳴った。朝に感じた時と一緒の感覚がぶわっと駈けぬける。

反射的に薬研と顔を見合わせた。お互い険しい表情している。


『薬研、小夜。すぐに帰城するぞ』

似たように緊迫した様子で帰城の準備を素早くし始める鶴丸さん。

『こちらの準備できてるよ』

『旦那達・・・気のせいではないよな』



『強制送還の指示が届いた。本丸が奇襲されてるかもしれない』







『ちっ!やはりか!』

苛立だしげに舌打ちが聞こえた。


本丸内に足を踏み入ればすぐさま違和感に気づく、肌にひしひしと複数の殺気が蠢いているのを感じた。そして、敷地内は荒らされ壊れた本丸が門からでも見える。その周辺には数体の敵刀達が絶命していた。その惨状だけで何が起こっているのかわかる。最悪の予想は的中し、汗がたらりとながれる。

ところどころに弓や投石の欠片が落ちていた。

『刀装兵達が攻撃した痕跡があるな、仕留めたのか・・・?』

『あの子は戦えない』
『でも、サニワのきはいはまだあります』
『それを辿ろう。みんな気を抜くなよ』

『いくらなんでも、おかしい。俺たち全員居ない時にこれかよ』
『慢心は駄目ですね・・・もしかして、ずっと見張られていたりしたんですかね』

『その可能性がないといいきれないな。くそっ!』


各自、戦闘態勢に入り審神者の気配を辿りその先に進む。今朝に見た本丸の面影はなく、戦場のような様相化としていた。冷静と心を制しても焦りが募り自然と小走りになったーーーしかし簡単には進めない。立ちふさがるように、割れた空間から敵が出現する。周りを囲まれ、じりじりと詰められた。

それぞれ、自身の本体を構える。

『随分と・・・手荒い歓迎だな、こりゃ』
『これは歓迎じゃないだろ・・・くそっ!うじゃうじゃでてきやがって・・・』

襲いかかってくる敵の猛攻をひたすら防ぐが、防戦ばかりで一向に進めない。焦りが募るばかりだ。

『このままじゃ埒があかない!』

目の前の敵を突き刺し仕留めながら御手杵さんが吠えるように言う。

『侵入してくる場所を抑えなけりゃ無理だ・・・何処かにあるはずだ』

その時。奥の方から爆音が聞こえた。攻撃してくる敵兵かそちらの方に向かう。周りを囲むものが減ったが僕らを阻んでいることには変わりない。奴らが向かった先に審神者がいる。それはわかっている。しかし、この周りに囲んでいるもの倒さなければどの道邪魔してくるだろう。

『強行突破するぞ!奴らが向かった先に・・・!』
『御手杵!待て!』

陣形が崩れ隙をつかれた。三つに僕らは分断され、御手杵さんの背後に敵兵が刃を振りかざしている。



防げない。



15/11/1

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