刀装シリーズ | ナノ






葛藤は消えない2



音声で会話できるようになった後、他のみんなも知って騒動になった。審神者は相変わらず混乱していた。文字じゃわからなかった僕らの感じに、神様てこんな感じなの?とういうのがありありとわかった。だけど、これまでの審神者の行動を鶴丸さんと鯰尾さんになんやかんや言われて、追いかけまわしていた。

『これで、会話しやすくなったな』
『声が聞こえるだけで、こうも違うんだな』
『あ、サニワ。ころびましたよ』

感想をもらす槍と短刀組。目の前の光景は審神者が転んで事態が収束する。


『後は互いが触れることと、姿を見えることか。それまでにここにいるかどうかだが、先のことを考えるならこのままでもいいな』

何か薬研が考えていた。そして、その場に居た僕と今剣と御手杵さんに話した。

『あの審神者、極端に視える力が欠けているが力は人並みにある。時間はかかるが周囲を鎮める力と、ゆっくりと俺っちたちを受け入れるくらいの精神力は備わっている。
一月の頃と比べ物にならない差があるんだ 。急がず時間かければその時、その時にあの審神者の中で必要な能力の開花して対応するのか、何か呪いがかけられてるな。鶴丸の旦那知ってたな・・・このこと。まあ、言わない方がいいこともある・・・知っちまったけどな。俺たちがあの審神者を受け入れていくのにも影響しているみたいだぜ』


『ふくざつなきぶんです』
『喜んでいいのか、悪いのか』

『受け入れていくのが形≠ニしてその都度認識されていくんだね』


『ーーーああ、その度に厄介な認識にしちまうなぁ。

駄目なの、にな』




筆談?から音声での会話が出来るようになって、それまでにより一層親交を深めることになった審神者と僕ら刀剣。

審神者は相変わらず見えないままだけど、声が聞こえるようになった効果は大きいらしく僕らに話しかけることが多くなった、内容は特に質問が多い。前々から僕ら刀剣の存在が謎すぎて気になっていたのが理由みたい。

・・・そういえば、質問の中になんでそんなにいけぼなんですかと聞かれたけど、いけぼて何?て質問されたのに聞きかえしてしまったら、人間の戯言です、忘れて下さいと土下座された。
結局いけぼて何だっただろう・・・他の人なら知ってるのかな?




朝早くから、ドタンバタンと大きな音が鳴り響く。


うぎゃああああ、と叫び声が聞こえた。


『つるまるがまたなにか、サニワにやってますね』
『飽きずによくやる』


呆れたように今剣と薬研が呟くが、少し笑っているようなのも含んでいて。特に気にせず布団に転がったまま。

御手杵さんと鯰尾さんにいたってはこの騒動に慣れたのか爆睡している。
声が聞こえるようになってから、鶴丸さんが審神者の寝起きを襲撃するようになった。もはや恒例の日常になった早朝からの騒動。審神者の反応が鶴丸さん的に楽しいのか、毎朝いそいそと仕込みをして起こしに行っていた。そんなに過激じゃないとも主張してたがそういう問題じゃない。

鶴丸さん曰くこれは俺なりの帰るまでの審神者との交流だとのたまっていたが、あえてつっこまなかった。巻き添えをくらうのはお断りしたい。





『なあ、まるで普通の本丸の日常とやらを・・・過ごしてるみたいだな?』


『やげん、きゅうにどうしたのですか?』

目を瞑りひっそり笑みを浮かべる薬研に、今剣が不思議そうに尋ねた。

『審神者には悪いけどな・・・鶴丸の旦那があんな風に驚ろかせて驚いて毎日が始まって、飯を食って畑を耕して馬の世話をして手合わせして風呂入って寝る、出陣はしないが遠征して、最近は見送りと出迎えされて、日々こうやって談笑したりする・・・それまで・・・あの審神者が来るまで、刀解を望んでいたはずなのにな。いつの間にかそんなことを望まなくなったよ・・・・・・こんな毎日が心地よく感じるようになってんだ』

『薬研・・・』

『それは最初の頃に一兄とあいつらと過ごしていた日々に戻ったような、そこに足りなかったものが代わりに補われたような気持ちに囚われるが・・・あの審神者を大将′トぶわけにはいかないのにな』

初めて聞く審神者や今の日常に対する薬研の心情。今剣や僕は何も言えない。

『でも、あの審神者が、もし、もしも今後審神者≠することになっても恐怖も感じるんだ。前任者達の変貌が所業が忘れらない。奴らは元々かもしれないが・・・色んなことを知っていくうちにあの人間があいつらみたいにならないとは断言できない。だからこの世界のことを教えるのが、怖いんだ。でも、帰って欲しくないとも望む』

静かに語る不安と矛盾の望み。

『遠征の件の前に俺≠ェ審神者に対する最初の頃の行いを謝ったことがあった。審神者はそれに対して、素直に謝罪を受け取って今は大丈夫だからとすんなり許してくれたが・・・なんとも言えなかった。わかりやすいのに・・・本当にそうなのか、て。それから、この前の件の後。あの審神者にすべてのことを教える際、言ったことがある。俺っち達の言うことを間にうけないでくれ、ちゃんと自分で考えてくれ。例え、ここが閉ざされた世界だとしても 実際は閉じられてはないが政府があの審神者に何も話さないのなら、同じだ。そして、教えるのは俺っち達のみ。ーーー自分でも勝手な言い分だと思ったけどな』



そう言い終えて、すまん、長く語って悪かったと薬研が眠りなおす姿勢に戻った。



思っていることは、それぞれある。

『ぼくも、ここにいわとおしやかせんがいたらさらにたのしいだろうなとおもってしまうことがあります』

『・・・そうだね』


日々、審神者の悲鳴から一日が始まるのが最近のこと。遠征の話をした日の取り決めを思い出した。








事情を知り、彼女に対する認識と今後の関係を改めなければならないと話あうが、なかなか進まずにいた。



少し前までは人間の事情なんて知ったことではないと憤りだっていた。
だけどこの三月で冷静に考えれるまでにはなっている・・・四番目の審神者の此処に来るまでの経緯が、理不尽でおかしいことに僕ら刀剣でもわかる。

『完璧に人身供養てはっきりした・・人攫いて、一応・・・国が承認してるもの?僕、何も知らないで斬りかかった・・・』

『しょうにんしてるなら、みらいのひのもとやらはかなりえぐいですね。きがどうてんしていたからもありますよ・・・とはいいわけにすぎないですよね』

『俺ら刀剣にも神隠しとかで攫っちゃう場合ありますけど・・・ここまで人間たちが腐っていたことにもうなにも・・・三月前に斬りかかったのを棚にあげてますけどね』

『あの子ただたんに巻き込まれただけて、ことか?』


御上には呆れかえるしかない。これまでの人間の行いをまったく関係もない人間におわせて、その上連れ攫って処理させていたという事実・・・そしてそう思うと同時に知れば知るほどどんどん精神的に負傷をおう。刀は人に使われていたモノ、そんな影響で人好きが多い刀剣男士。そして、そんな彼女に(自滅が大半な気もする)、不安定だったとはいえ酷いことをしていたと再度認識して少なからず僕らは落ち込んでいる。同情のような気持ちもあるかもしれない。
互いが共通の者に振りまわされているということに、こちらが勝手に思ってるだけど。



『だろうなぁ』
『鶴丸の旦那は、何か知っていたのか?あんたの態度は最初から何かあるのは察していたが』

鶴丸さんが僕らの会話に頷くように呟いたのを、すかさず薬研が問う。その薬研の問いに、鶴丸さんが暫し考えて口を開いた。

『これまでの審神者の印象と違ってるとはいえ、同じ人間と一括りにしていた方が大きい。でもな、この三月・・・あの子の様子≠見ていたが害がある様に見えない、あまりにも知らなすぎる、まぬけな行動等、呟きを聞いた言動からもしや、という考えはあった』

一番最初に審神者と接触したのは鶴丸さんだった。それから、鶴丸さんがあの審神者に関わるたびにこの人が纏っていた靄やおかしかった部分がなりを潜めていくこと。一見したら正常には見える程度に・・・もしかしたら、僕らの知らない間に審神者と鶴丸さんの間で何かあったのかもしれない。そう思うくらいには、鶴丸さんに穏やかな変化が訪れていたーーーそれは、僕らにも。

『・・・本音はーーーわかってはいたんだ。あの子があの人間達と同じではないと。
でも、それを自身の中で認めてしまえば、手放したくなる。あちらの連中は生贄≠ニして放り込んだんだろうが、俺はあの子が主≠ノなってくれるならと、思うようになった。
でも、それをあの子に直接望みはしない』

言おうか言うまいか逡巡した後で淡々と語る鶴丸さん。どうしようか、感情とやらはままならん、と呟いた。

僕らは無言で鶴丸さんの言葉を聞いていた。周りの表情からするに少なからずみんな、心の何処かでそう望んでいる。

『まあ、帰さないつもりではない、迷子を預かってる気持ちにしとけばいい』

その場の空気を入れ替えるように言った。

『今の状況で帰してやれないが、そうだな・・・あちらから接触を図ってくるまで面倒はみるつもりでいる。俺達はなんだかんだあの子に絆されているだろう?そして、あちらに現在の改善している状況を事情があるとはいえ正直に報告している。人身供養として此処に放り込んだが、思った以上の成果を出した。今後この本丸をどうするつもりか、政府の輩が何を考えてるかは知らんが予想しても俺達にとっては碌でもないことだろうな。また刀剣を虐げる輩が来るのは適わない、あの子を利用するようで悪いがもうしばらくここに居てもらう』

『・・・今更、放りだすのもですね。政府の連中がまた来るかもしれない可能性もありますし』

『一応、被害者にこれ以上追い打ちは、ないしな。来たしても真偽を答えてくれるのかねー?』

芽生えはじめた望みを誤魔化すようにして方針は、彼女の保護という名目で御上を誘き寄せることと。僕らは四番目の審神者を利用するということ。となった。


彼女は審神者≠セけど審神者≠カゃない。刀解を、これ以上のことを望まない

主≠ノはなりえないのだ。あの人間は帰るべきところにちゃんと帰す。



・・・帰してあげる。それが、せめてもの貴方へのーーーーー。









後日、審神者が朝早く起こされて、その影響と時間を潰せる娯楽も限られていて夜早くに眠るから、健康的な生活が送れるけどもうそろそろ穏やかに朝起きたい≠ニぼやいていたの目の当たりにして、それでも適応している様に複雑な気持ちになった。あの人は本当に僕ら人の姿に見えてないんだろうか?空中に刀が浮いてると言っていたけれど。

『そもそも・・・なんで、普通に生活しているんだろうな、あの審神者』

それが、一番の疑問だったりする。吹っ切れ具合が異常である。





彼女の本音を知るのはもう少し先。



15/7/28

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