刀装シリーズ | ナノ






思い出しては歩みゆく3



小・・・!
・・・・・・小夜!!

『さよ!』

『・・・うっ・・・あ?・・・いま・・・の・・・どうしたの?・・・夜明け前だよね?』

『うなされていましたよ』

『あ、うん、ごめん』

『さよがあやまることじゃないです。しょーがないので、てをつないでねましょう!』

『うん』



夢を見るようになった。内容は最初の審神者の時のこと、宗三兄様のこと、それからの審神者達。そして、三番目の審神者のことーーー。

ちゃんと布団で睡眠をとるようになってからのことだ。 今までのことが嘘のように穏やかに暮らしてるのと、相反して過去の記憶が蘇る。たびたび魘されるようになっていた。だいたいは今剣やみんなが起こしてくれてこうやって側に寄り添ってくれる。

感謝とともに己の弱さに悔しさが募っていく。

強くなったて刃が冴えたって、大切ななにかが守れないのなら。







(なんで思い出したんだろう。やっぱり、四番目の審神者を信用するなってこと。深層部分のものなのかな)

生活を整え住む場所を綺麗にして馬も徐々に回復している状況になり二月半が経っていた。
それから、畑を耕すことになって内番に加えられる。審神者の力が働いたのか、あれだけ苦労していた作物の成長は数日で終え、実を摘むくらいになっていた。その畑の姿に審神者はうおおすげええと何やら感動していたが、審神者の力によるのも大きいことを血文字で伝えれば、へー?と理解しているのかわからない返事をされた。

現世ではこうもいかないらしくそれなりの年月が必要らしい。それは知っているけれど、よくこんな得体の知れないところの物を口にできるねといえば、お腹空いてたらそれどころじゃないと答えられ、なんだか心配になった。今剣が道端に落ちてるものや知らない人に貰ったもの食べてないかと問い詰めていた。完璧に小さい子供に対する態度だ・・・見た目はそこまで小さくはないが、言動や行動が幼く見えたのもある。着実に保護者化していた。


そして、今日は朝起きたら、窪みで足をとられ真正面から顔面ごと畑に埋もれている審神者を発見した。

信用以前の問題に直撃する。

しかし手を貸すにもどうやら僕達とこの審神者は触れ会うことか出来ないようだった。物を通じてなら接触出来るみたいで、自身の鞘にしまったままの本体で意識があるのかつついてみた。鯰尾さんが手入れ部屋した時の抵抗が当たったのは、なんでなのかそれだけが疑問だ。

『ぶあああああ、口の中に土入った!ぺっおえ、ぺっ!』

ガバッと起き上がる姿にビクッとして体制を崩した。畑に唾吐き出さないでほしいといいたいけれど、彼女には声が聞こえない。目が見えて板のようなものに浮かび上がる(らしい)、血文字を見せなければ、疎通が取れないのは不便に思う。意思の疎通がちゃんとれるようになっても心配だけど。

井戸から水を汲んできて顔をかけてやり布を渡した。

『はー、ありがとう。小さい刀様』

さっぱりした表情で笑う審神者に、不穏な影は見当たらない。


関わることを決めてから、今剣や薬研に手を引っ張れながらも少しずつ関わってこうやってくだけた会話?ができるようになった。
呼び方は彼女に名を名乗ってなかったり刀の姿しか見えないみたいなので、そう呼んでるらしい。正式な契約はするつもりはないので、このままにしている。板に文字を浮かび上がらせてみる。

『何していたの?収穫はもう終えてるみたいだけど』

『収穫終えて畑から出ようとしたら、見たまんまの通り』

『ただたんに倒けた、と』

『そうそうこれ持っていたら。小さい刀様が料理してくれるって!朝早くからの労働にごはんは堪らんですよー!』

『実を採って、倒けただけなんじゃ』

『事実をつきつけないでくれたまえ』

否定せず、肯定する返事にため息をこぼした。

薬研が成り行きで食材を調理するのを教わったのか、食事に関わっている。手先が器用がここでも発揮され、審神者曰く彼女自身より美味いらしい。薬研の料理は美味しいけれど、審神者の作る料理も優しい気持ちが感じられていたのでみんな回数が減って残念がっていたりする。
本人は知らずか、ご飯を頬張る姿は幸せそうだった。薬研は少し照れていて、ぽそり懐かしそうに、もし燭台切の旦那も作ってたら、ああやって美味そうに食べるのか、と言っていた。

元気に台所へと向かう姿を見ながら畑の方を振り返る。そこは江雪兄様と燭台切さんが耕そうとした場所だった。

今はーーー様々な実をつけた食物が広がっている。

『普通の生活をしているだけなんだよね、今は』
最初こそ斬りかかって怖い目に合わせたことを、機会を失い謝れずにいる。

『不器用だな』
今度こそ謝ろうと何度も思う。

『うまくいかないな』
謝ってやったことは消せないけれど、ここまでしてくれた彼女には本当に感謝している。

審神者がこの現状を、適応して受け入れていく姿にはなんとも言えないけれど。
いずれは、帰るのだろう。彼女は常々、ふと思い出しては帰りたいと望んでいた。

『最初から、審神者だったら』


もしものことばかり想像する。





『出陣しろ、と言われました』



『どうすればいいですか?あのおっさん、最初はそんなことを言ってなかったんですけど、なんかやれて言われました。出陣てあれなんでしょうか、私戦えないんですけど、爺ちゃんにお前は剣の才能がないて太鼓判押されてるんですけど!?一発で死ぬ自信しかない!』

この審神者と過ごすようになって三月経つ頃だ、食事中に出陣のことを話された。周りにいる刀装兵から、この馬鹿にちゃんと教えてあげてという目でこちらを見ていた。出陣という言葉に、反応して警戒しかけたがその後に続く言葉に全員脱力する。

その後、鶴丸さんが真っ先につっこんだ。

『いや、なんできみが行くこと前提になっているんだ、驚きだな』
『刀剣を使えて言ってましたよ。そういうことじゃないんですか?』

『あんたが、じゃないからな!俺らだぞ!』
『マジですか!?ど、どうやって・・・刀!?そうだ!ポルターガイスト!』

襖を見ながら喋る審神者。

『なにかべつのほうこうにかんちがいされていますね』
『俺っちを見るな。一応、刀剣の存在をさらっと教えた』
『それが、勘違いされてる可能性があるな』
『だよね、ぽるたーがいすと、てっ何?』

鶴丸さんと御手杵さんの言葉に驚きながらまったく違う方向に勘違いしていく審神者に、想像した最悪な事態が杞憂に終わるけれど、別に心配ごとが出てきた。薬研が頭を抱えている。



『サニワはそもそも、なんでここにいるんですか?』

今剣がふっとそんな疑問を口にした。生贄として疑惑(ほぼ確信)が出ているが、それまでのここに来た経緯は知ることはなかった。話す機会もなかっただろうけど。

『え?いや、私もわけがわからない状況というか、誘拐されてほぼここにぶち込まれたような感じなので』

『え?』

さらっと言い放たれたことに、場が静まりかえる。

『その話は後で詳しく聞く、とりあえず手始めに遠征から、て言っておけ。それで通らなかったら俺っち達にまた言ってくれ』

『えーと了解?』


遠征の話は通り、日取りや人員はどうするかの話はこちらで決める審神者に言えば了承された。
おっさんしつこかったと、疲れたように言う審神者に僕らは労わることにする。




学び舎から帰る途中に誘拐され家族がどうなってもいいのかと脅され、いつ帰れるかどうかもわからないまま本丸の清掃等を行えというもろもろの経緯を知り。審神者の話を聞いてから僕らはまた頭を抱える羽目になるのだ。

『あいつらは人間≠ニしてどうなんだ』
『そんな輩ばかり・・・うんざりします』

これも、彼らは必要な犠牲というのか。


15/7/20

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