刀装シリーズ | ナノ






審神者と刀剣の攻防戦?2



鶴丸さんの言葉もあり殺すことはしないという形でしぶしぶと納得する。

その間、審神者は自身で判断したのか屋敷内を掃除してまわっていた。本丸を覆う空気も、少しずつ少しずつ清らかなものに変わっていっているような気がする。四番目の審神者は無害そうな少女だったが今までの審神者や三番目の審神者の仕打ちを引きずってるせいで、酷く当たってしまっている。でも、僕らはやってくれと頼んでもないので、早く出て行ってほしくてちょこまかと動く審神者が鬱陶しくて、連日審神者を追い出すことに僕らは精をだしていた。




しかし。

『ほんまるないのへやそうじをしてるさいちゅうに、こうげきをしかけてみましたがあたりません。でも、さけたはずですがたんすにこゆびをぶつけてもだえくるしんでいました』
顔を手で覆う今剣。

『本丸内の庭の敷地を何故か玉鋼を運んでる最中狙ったんです。攻撃が当たらないです。避けたにも関わらず自分の足に引っかかって庭の池に落ちました。攻撃したのは俺からですけど・・・あんな重いもの持ってるから・・・』
遠い目で審神者を見る鯰尾さん。

『一応、俺っちも攻撃を仕掛けてみたが、当たらないな。避けたはずだが、台所にあった鼠取りに引っかかり動かなくなっていた』
目を反らし、片手で顔を覆う薬研。

『避けたみたいだが風呂掃除の最中に滑って頭部を強打して死にかけていたな・・・』
もう見てられないという素振りで顔を反らす御手杵さん。

僕らは物陰からその審神者の様子監視するが、どこもかしこも包帯だらけで痛々しくなっている。しかし、それは刀傷ではなく全て審神者の自滅した傷である。いや、僕らが攻撃したせいできっかけを作っているからのもあるけれど・・・なんだろう、何て言えばいいんだろう。

『『なんで、こっちの攻撃は当たらないのに瀕死の重傷になってるんだ!!』』

僕と鶴丸さん以外の全員の声が重なる。

だけど審神者は気づいていないのか、放置されていた弱っている馬達を看病しようと苦戦しながら頑張っている。でも、馬達に警戒され前足で土をかけられていた。顔面に土がかかり、目が!目があああああ!と叫び転がっていたが馬小屋の柱にぶっつかって静かになる。

心無しか土をかけた馬の望月が静かになった審神者に、おろおろしながら困惑して近づいている。どうしようと、困ってる。鯰尾さんが、もう見てらんない!と言って馬達に近づいて、今剣とともに落ち着かせてあげてる。御手杵さんが、審神者に意識がないのいいことに井戸の水を豪快に顔面にかけ土を洗い流していた。薬研が布で拭いて、俵担ぎで運び縁側に寝かせた。女の子だけど、雑な扱い。

他の面々ここ最近、攻撃はしなくなってきていた。だって、ほっといてもこの通りの惨状だ。



近くにいる鶴丸さんが話しかけてきた。目線は、審神者に向いている。

『小夜坊はあの子に最初の一撃以外、ここ連日何もしていなかったが・・・意外だねえ』

楽しそうに嗤う鶴丸さんは、いつものように明るいけれどどことなく雰囲気が変わっていた。僕らが目覚めた最初こそは、以前の様子からさして変わらないように思っていたんだけど会話してみると異様さが浮き彫りになっていく。

鬱蒼と嗤うようになっていた。

きっと、もう昔の鶴丸さんには戻れないのだろうか。あとは、堕ちていくだけのかな。
一人≠ナこの場所に残してしまっていたのを、僕らは悔やんでいる。それでも、また顕現してしまったのだ。最後までこの人の側にいるのが僕らの総意。

『・・・攻撃する前に改修してない廊下で、板を踏み抜き転倒して気絶した姿・・・見たら、放置しておいても勝手に死ぬんじゃないか・・・と思った』

『また、あの子踏み抜いたのか・・・学習能力が低いというかなんというか・・・』


連日の攻撃に僕は参加していなかった。みんなが攻撃しはじめる前に、胸の内に燻る衝動に僕はもう一度だけ仕掛けようとした。目の前に審神者の後ろ姿を捉えた瞬間、動き出そうしたが鶴丸さん答えた通りのことが起こった。出鼻を挫かれた僕は手に持った刀を下ろして、そのまま放置した。この審神者のことが、どうでもよくなってくる。関われば、残るのは脱力するだけだった。

嗤っていた鶴丸さんが、表情が抜け落ち遠い目をして寝転がされた審神者を見た。また、ということは鶴丸さんの前でもあの審神者、床を踏み抜いたのだろうか。まさかワザと?もしワザとでも瀕死になっていってる。あの審神者の行動を考えだしたらキリがない。どうして、そうなるんだということしかならない。


思考を放棄して馬小屋の方へと向かった。



当たらない攻撃、何故が自滅して負傷していく審神者。少しずつ澄んでいく空気。少しずつ綺麗になっていく本丸。ぎりぎりの残っていた良心みたいなものが刺激されて、団体で一人に寄ってたかっていることに僕らはじょじょに罪悪感が芽生えはじめていた。

極めつけは、本丸内にいる妖精と刀装兵を引き連れて再度部屋に殴り込み(手入)に来たときだ。


この子あほだけど大丈夫だよと物語る打粉を持った妖精達。ぴいぴいと鳴き出陣体勢で取り囲むいつの間にか増殖した刀装兵達。それを引き連れた審神者は、膝を振動させ桶を被り打粉を持ったまま。

『静まりたまえええ!荒神よおおお!』
『ぴいっ!』
『あだっ、えっ!?刀装ちゃん!お前はちょっと黙ってろ?∴モ外としんらつ・・・』

刀装兵に小指を足蹴にされてる様子に、もう何も言うことはない。

妖精達にまで舐められている様に、全員すっかり生暖かい目で頷き大人しく手入を受けることにした。手伝い札も使われ、あっさり終わったのだけど・・・鯰尾さんだけが抵抗していて、暴れた際にたまたま拳が審神者の顔面に当たり、勢いよく鼻血が出て返り血を浴びてから大人しくなった(薬研談)。鯰尾さんは手入で綺麗になったけど、審神者は両鼻から鼻血を垂らして出てきたので何事かと思って二人を見たのは仕方ないがない。

妖精達がわたわたしていた。鼻に詰めるものがなかったのか予備に持っていた小さな打粉を代わりにして突っ込まれていた。審神者は少々息苦しそうだったけれど、そのまま手入を続けることにしたらしい。僕らは審神者の顔を見ないようにして、そっと目を閉じ顔を伏せて手入を受けた。なんともいえない光景だった

その様子に鶴丸さんと元凶の張本人は床に崩れ落ちしばらく息をしていなかった。鯰尾さんは薬研に引きづられ邪魔にならないとこに移動させられていた。鶴丸さんは妖精達や刀装兵に手入部屋に引きづられ場は収集したかに思えたが、審神者が鶴丸さんの姿を捉えた瞬間、外していた桶を身につけ対峙するような格好をとったので鶴丸さんは動かなくなった。

それを、不思議そうにして恐る恐る手伝い札を使う審神者に。


((こいつ、大丈夫かもしれない))
と、全員、確信した。



・・・あと、鶴丸さんは審神者に何をしたのだろうか。僕らも結構色々したのに反応の違いに、疑問を持った。



手入されたあとのことは、少しずつ本丸内の清掃の手伝いをしているけれど。鯰尾さんは審神者の反応を楽しんでいるのか、ちょっかいをかけ続けた。


薬研に諌められても、鯰尾さんの態度は変わらない。

そんな中この前、鯰尾さんが馬小屋近くで審神者に馬糞を投げてぶつけた事件が起こった。
でも審神者は馬がやったと勘違いして、看病下手くそでごめんねと馬達に謝っていたらしい。堂々と姿を現した鯰尾さんは、視覚に捉えられなかったことに疑問を抱きつつ再度(もはや)嫌がらせをした。今度は認識されけれど、泣きもせず笑いもせず真顔でこんなものそこらに投げたら汚いよと注意されたみたいだ。



『あの審神者、可笑しい!』

『鯰尾兄、今回の審神者が可笑しいのは周知の事実だ。いい加減、やめてやれ』

『・・・女の子だよな?』

『なまずおがちょっかいかけまくりましたから、なれたんじゃないですか?』

『そいつは驚きだねえ・・・!』

『・・・(一応、僕らあの審神者に手入してもらったんだけどね)』




『でも、何故気づかなかったんだ?隠れてなかったんだろう?』

『もろ見えのはずだったんですけどねー』

『・・・こりゃ、姿を認識してないか』

『つるまるなにかいいました?』

『なんでもないさ』


本丸内がいい方向にいってはいるが、まだまだ溝のある僕らとあの審神者。必要最低限しか関わらず、あの審神者は常に妖精や刀装兵達と一緒にいるらしい。それが、あの審神者が僕らに対する態度を違和感があっても理解できなかったのを遅らせる結果になったのだけど。





そして、冒頭の様子に戻る。


とりあえず、介抱する薬研に僕は事情を聞いてみる。

『・・・鯰尾さん、今度は何やらかしたの?』

『顔面が馬糞塗れだな・・・おーい、鯰尾。生きてるかー?』

『はあ・・・つるまる、こんなによごして!もう、せんたくしてもおちないじゃないですか!!』

動かない鯰尾さんを心配する御手杵さんと、鶴丸さんを叱る今剣を尻目に薬研は話しはじめた。

『鯰尾兄がいつもの如くちょっかいをかけたらしく、あの審神者がブチ切れて頭についたそれを投げ返し鯰尾兄としばらく投げ合っていたらしい。その現場を通りかかった俺っちと鶴丸の旦那の目の前で、審神者の投げた一撃が鯰尾兄の顔面に食らったのを目撃ーーー後は見ての通りだ』

疲れたように話す薬研が、審神者を見た。
言葉を続けて、鶴丸の旦那はいつも通り。そして、あの審神者に話しかけているんだが・・・と呟くと。


『どうやら、あの審神者・・・俺っち達のことを人の姿に視えてないみたいだぜ。

あと、声も聞こえてないようだーーー妖精や刀装兵達は、視認しているんだけどな』



笑っていた鶴丸さんが、

『あれは、審神者じゃないーーー生贄だな』

でも、この様子じゃ本人は気づいてないなーーーーーと。


その言葉だけが、耳に残っていた。


15/7/5

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