刀装シリーズ | ナノ






代わる審神者と四番目の審神者4



ーーーまた幾つかの時が過ぎる

三番目に来た審神者が死んでからそれ以来ぱったりと次の審神者が来ず、政府との連絡つかなくなったと、薬研が吐き捨てるように言う。そして、門の方も外との行き来ができなくなっていると鶴丸さんが言っていた。

どうやら見捨てられたらしい。

資材もあまりなく、傷を癒すことも出来ず、 何もかも疲れはてて、審神者の部屋に放置された亡骸の怨念らしきものが本丸に蔓延し、徐々に残った刀剣達は折れたり人の姿が保てず消えていったり、僕ら残った六振の刀は人の姿をとれず転がるままになる。


妖精達も霊力が供給されないので、僕等のそれに最期まで一緒にいた。刀に戻る僕等を寂しそうに見つめていた。

『もう、これで人間が此処に来ることはないだろうな』
御手杵さんが最初に槍の姿に戻った。

『次が来ても、また俺達は殺す≠アととなります。もう、此処には・・・』
続いて、鯰尾さんが。

『・・・人は来ない方がいい。さて、眠りにつこう』
薬研が。

『これできえるのもまたぼくらのまつろ、ああ、ようやく』
今剣が。

気付けば、鶴丸さんと僕の二振になっていた。
そして、僕も。

『・・・ごめんね、鶴丸さん。僕も・・・駄目だね・・・』

周りいる妖精や大倶利伽羅さんから託された刀装兵が最期の別れというように僕に引っ付いている。最期にその小さな頭を撫でる。

『・・・それでいい。もう、眠りについてもいい。あとはもし人間が来ても俺が驚かせる≠ウ。だからーーーおやすみ、小夜坊』



鶴丸さんの言葉とともに意識は途絶えた。最期としても鶴丸さんは僕等を守ってくれるのだろう。

最期まで僕は本当に守れてばかりだなーーーーー



刀のまま眠る僕は意識がうっすら浮上する。彼らと言葉を交わしていないのはどれくらいになるだろうか。彼らの気を探ってみると僕と同じ状態のようだ。
鶴丸さんの気だけこの部屋にいない。一体、何処へーーー。

そもそもなんで、可笑しい、消えてないや。それに何故か騒がしい。遠くから声≠ェ聞こえる。


“な・・・・で・・・しょう・・・”

時が少しずつ過ぎながら、徐々に声ががはっきりしてくる。

“うぎゃああああああ、オエエエエホガアアア・・・オボボッ・・・”


それと、何か吐く音。とがんっと激しく何かぶつかる音。・・・しんっと、静まる。それから、時が過ぎ、突如大声が聞こえた。


『びっくりするほどゆうとぴあああああああ!!ゆううううううとぴああああああ』

『え?効かない!?うおおお、うおおおお、やべーーーー!まじやべべえええ!?死ぬううううう刺されるううういやああああ、お助けええええ、ぎゃあああああ床すべっ』


何か盛大に滑り転ける音と、がんっと再び激しくぶつかる音。それから、しんっ、と静まる・・・叫び声がでかすぎてなに言ってるのかわからないし騒がしい。




しかし、その音が聞こえた時その場に居た全員が人の姿へと戻る。突然のことに困惑する。

『どいうことだ?!なんで戻ってんだ?!』『なんか、霊力を感じる!』『いや、まさか・・・!』
『こんどこそさいごだと・・・』『審神者が』

『その、まさかだ。どうやら新たな審神者・・・が来たらしいな』

動揺して口々言いあう僕らに、部屋に居なかった鶴丸さんが襖を閉めながら、微妙な困惑した表情で、告げた言葉に全員静まり変える。鶴丸さんの周りには相変わらず黒い靄が漂っていた。

『ころさない、と』

『いや、今はその判断を下さなくていい』

『なぜですか!?つるまるっ!』

いち早く今剣が動こうとした。しかし、鶴丸さんがその行動を止める。まさか鶴丸さんは審神者に何か・・・!全員が青褪めた瞬間。


『・・・俺が姿を現したら、叫ばれてなぁ・・・反射的に斬りかかったら間一髪で避けられて、叫びながら廊下でつまづいて・・・頭部を強打し、気絶中だ』

『はっ?』

『・・・ありゃ、暫く起きないぜ』


真顔で喋りながら、頭をぽりぽり掻く鶴丸さん。
ただ、微妙な空気だけがその場に満ちていた。



ーーーあの人は最初から、まぬけで可笑しな人間だった


胸の痛みと、傷と困惑を背負いながらーーー四番目の審神者が来訪する。



15/6/28

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